日本の公的年金には1人1年金の原則があり、支給事由の異なる2つの年金の受給要件を満たしたとしても、支給事由の異なる2つの年金を両方受給することは原則できないことになっています。
例えば、
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金
- 障害基礎年金と障害厚生年金
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金
は、年金の種類は2つですが同じ支給事由のため、1つの公的年金とみなされ両方を受給することが可能です。
一方、老齢年金と遺族年金を両方受給できるようになった場合、例外はありますが基本的にどちらかを選ばなければなりません。
今回は、老齢年金と遺族年金、選択しなければならない場合はどちらを選択した方がよいかについて分かりやすく解説していきます。
老齢年金と遺族年金を両方受給できる例外
日本の公的年金は、支給事由の異なる2つの年金を両方受給することは原則できませんが、以下の例外もあります。
(1) 老齢基礎年金と遺族厚生年金
65歳以上で老齢基礎年金を受給している方が、遺族厚生年金を受給できるようになった場合は両方とも受給できます。
(2) 老齢厚生年金と遺族厚生年金
65歳以上で老齢基礎年金を受給している方が、老齢厚生年金と遺族厚生年金を受ける権利がある場合は、自身の老齢厚生年金を受給することになります。
但し、遺族厚生年金の受給額が、老齢厚生年金の受給額よりも年金額が高い場合は、その差額を受給できます。
一方、老齢厚生年金の受給額が、遺族厚生年金の受給額よりも年金額が高い場合は、遺族厚生年金は全額支給停止になるのです。
老齢年金と遺族年金どちらかを選択しなければならない場合
老齢年金と遺族年金のどちらかを選択しなければならないケースとして、以下が考えられます。
・老齢年金と遺族基礎年金の両方の受給資格を保有している場合
この場合は、どちらを選択しなければなりませんが、2つの観点から選択するとよいでしょう。
(1) 受給額から考える
まずは、どちらを選択したら受給額が大きくなるかによって選択します。
受給できる老齢年金が老齢基礎年金だけの場合は、通常遺族基礎年金の方が受給額が大きくなるため、遺族基礎年金を選択するとよいでしょう。
また、受給できる老齢年金が老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方受給できる場合は、老齢厚生年金の受給額がどれくらいかによってどちらを選択するかが変わってきます。
(2) 税金から考える
老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給額は、雑所得として課税対象になります。
一方、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給額は、非課税です。
但し、老齢年金に対する税金は、税率が小さく、受給額によっては税金がかからないこともあります。
税金についても考慮して、選択することが必要です。
日本の公的年金は1人1年金の原則があり、支給事由の異なる2つの年金を受給することは原則できません。
老齢年金と遺族年金のどちらか一方を選択しなければならない場合は、受給額と税金の観点から有利になる方を選択するとよいでしょう。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)