2021年4月1日より、70歳までの継続雇用努力義務化が施行されています。
ただし、これは努力義務であることから、70歳までの雇用が義務付けられているわけではありません。
また、原則として、65歳から基礎年金の受給が始まることから、60歳定年後、65歳までは再雇用で働くという働き方も一般的です。
そこで、65歳を境に子供の扶養に入るというケースも少なくありません。
今回は、65歳を境に扶養に入る場合の注意点にフォーカスをあて、解説します。
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扶養に入るための年収要件
まずは、扶養に入れようとする方が被保険者と同一世帯の場合です。
扶養に入れようとしている方の年収が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する場合は180万円未満)であり、被保険者の年収の2分の1未満であることが要件です。
また、上記の要件に該当しない場合であっても年間収入が130万円未満であり、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合は、その世帯の生計状況によっては認められる場合があります。
次に扶養に入れようとする方が被保険者と同一世帯にない場合です。
扶養に入れようとしている方の年収が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する場合は180万円未満)であり、被保険者からの(仕送り等による)援助による収入額よりも少ないことが要件です。
雇用保険からの給付
次に、一定の要件を満たすことで雇用保険から一定の給付が行われます。
65歳前の退職であれば失業手当(正式には基本手当、以下失業手当)であり、65歳以降の退職は高年齢求職者給付金と呼ばれます。
双方の相違点として、失業手当は一定額を定期的にもらえるのに対して、高年齢求職者給付金は一時金です。
給付額も、失業手当の方が多くなります。
ポイントとして、雇用保険からの給付は非課税ではありますが、扶養に入れる際の収入に含まれるのかということです。
失業手当の場合、言うまでもなく、定期的に一定額の給付がされるという性質上、収入に含まれますし、金額に換算して、日額3,612円以上となると、年収130万円以上となりますので、被扶養者として認められません。
次に、高年齢求職者給付金については、健康保険組合の場合、あらかじめ確認しておきましょう。
これは健康保険組合によって高年齢求職者給付金は一時金であることから、退職金扱いとして、扶養に入れようとする方の収入に含めないとする場合があるからです。
万が一、扶養に入れないとなった場合は居住する市区町村の国民健康保険や退職前の職場にて任意継続被保険者になることが選択肢となります。
もちろん、失業手当について、離職理由におる給付制限期間中や、受給期間終了後の場合は扶養に入ることができます。
扶養に入るメリットとして、健康保険料の負担がなくなることですが、高額療養費については、被保険者の収入が基準となるため、高額療養費の自己負担限度額が高くなる(負担しなければならない医療費が多くなる)という盲点もあります。
例えば親を扶養に入れないと判断した場合には親自身の所得で高額療養費の自己負担限度額が設定されます。
子供の扶養に入る場合は子供の加入する健康保険で設定される標準報酬月額を基に自己負担限度額が設定されます。
最後に
65歳を過ぎると何らかの病気に罹患するケースは決して珍しいことではありません。
よって、高額療養費の自己負担限度額と自身で国民健康保険等に加入して保険料を納めた場合でどの程度の開きがあるのかは把握しておいた方がよいでしょう。
また、高額療養費はその月の1日から末日までの医療費を集計します。
例えば入院するとなった場合でも月の半ばから翌月の上旬までといった場合は、かかった医療費は高額であっても、(月が変わっているため)自己負担限度額には達しないというケースもあり得ます。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)