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年金受給者にとっての「悪いインフレ」は、あと30年くらい継続する


総務省の発表によると、2022年4月の全国消費者物価指数(天候による変動が大きい生鮮食品を除く)は、前年同月比で+2.1%になりました。

ここまで物価が上昇するのは、消費税率の引き上げによる影響を除くと、13年7か月ぶりになるそうです。

当面は物価の上昇が続きそうなので、日本経済は長引いたデフレ(物価が継続的に下降する状態)から、インフレ(物価が継続的に上昇する状態)に転じたのかもしれません。

このように物価が上昇している要因について総務省は、原油や穀物などの商品価格の上昇と、円安を挙げておりました。

最近に商品価格が上昇しているのは、ロシアがウクライナに対して、軍事侵攻した影響が大きいと推測されます。

また円安が進んでいるのは世界各国の中央銀行が、新型コロナ対策の低金利政策を終了しているのに対して、日本の中央銀行である日銀は、金利を引き上げしないからだと推測されます。

つまり金利の低い円を売って、金利の高い米ドルなどの外貨を買う方が増えているため、円安が進んでいるというわけです。

商品価格の上昇や円安によってインフレが起きても、その分だけ賃金が上昇すれば良いのですが、今のところは賃金の伸びが物価上昇に、追いついていないようです。

このような現在の日本の状態を、「悪いインフレ」が起きていると、表現する方がいるのです。

年金受給者にとっての 「悪いインフレ」

【年金制度改正】2022年4月~「加給年金」見直し 内容と経過措置の適用条件を確認

2022年度の老齢年金は前年度より0.4%減額される

公的年金の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の納付を免除された期間などの合計が、原則として10年以上ある方は、国民年金から支給される老齢基礎年金の受給資格を満たすため、65歳から受給できます。

また老齢基礎年金の受給資格を満たしたうえで、厚生年金保険の加入期間が1か月以上ある方は、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を、65歳から受給できます。

この2種類の老齢年金は、新年度が始まる4月(実際に金額が変わるのは6月)になると、次のようなルールによって金額が改定されるため、年度ごとに金額が変わる場合が多いのです。

【新規裁定者(67歳以下の年金受給者)】

過去3年度における現役世代の賃金の変動率によって、前年度より老齢年金の金額を増額したり、減額したりする。

【既裁定者(68歳以上の年金受給者)】

毎年1月頃になると総務省から発表される、前年の全国消費者物価指数の変動率によって、前年度より老齢年金の金額を増額したり、減額したりする。

このように新規裁定者は賃金の変動率、既裁定者は物価の変動率を元にして、金額を改定するというのが、原則的なルールになります。

ただ2022年度のように、賃金の変動率(-0.4%)と物価の変動率(-0.2%)の両者がマイナスで、賃金の方が物価より下げ幅が大きい場合は例外的に、新規裁定者と既裁定者のいずれについても、賃金の変動率で改定します。

そのため2022年度の老齢年金は、新規裁定者と既裁定者のいずれについても、前年度より0.4%減額されます。

年金の給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」

2022年度の賃金の変動率が「+0.5%」、物価の変動率が「+0.4%」だったと仮定した場合、原則通りに新規裁定者は賃金の変動率、既裁定者は物価の変動率が適用されるため、両者とも前年度より老齢年金が増額します。

ただマクロ経済スライドが発動し、2022年度のスライド調整率である0.3%が控除されるため、新規裁定者は0.2%(0.5%-0.3%)、既裁定者は0.1%(0.4%-0.3%)の増額にとどまるのです。

このマクロ経済スライドとは、現役人口の減少や平均余命の伸びに合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

具体的には賃金や物価の変動率から、上記のようにスライド調整率を控除し、年金の給付水準を調整します。

また各年度のスライド調整率は、現役人口の減少や平均余命の伸びによって決定されます。

マクロ経済スライドが創設されたのは2004年になりますが、2022年度のように賃金や物価の変動率がマイナスの時には、発動しないルールになっているのです。

デフレなどの影響によって、このような状態が続いていたため、賃金や物価の変動率から、実際にスライド調整率が控除されたのは、次のように3回しかありません。

 

・2015年度:スライド調整率は0.9%

・2019年度:スライド調整率は0.5%

・2020年度:スライド調整率は0.1%

 

これでは年金の給付水準の調整が進まないため、2016年に法改正が実施され、控除できなかったスライド調整率を、翌年度以降に繰り越しできるようにしたのです。

そのため2022年度のスライド調整率である0.3%は、翌年度以降の賃金や物価の上昇が大きかった年度に、その年度のスライド調整率と一緒に控除されます。

年金受給者にとっての「悪いインフレ」が継続する

日本経済は上記のように長引いたデフレから脱し、インフレに転じた可能性があります。

またインフレになれば、賃金や物価の変動率がプラスになりやすいため、スライド調整率が控除される機会が増えます。

これによって年金額の伸びが、物価上昇に追いつかない場合が多くなるので、年金受給者にとっての「悪いインフレ」が起きるのです。

ただスライド調整率による年金の給付水準の調整は、永遠に続くわけではなく、年金財政が安定したら終了します。

この年金財政が安定する時期の目安は、5年に1度のペースで実施されている年金財政検証の、最新版(2019年に実施)によると、2046年度~2058年度くらいになるそうです。

そのため年金受給者にとっての「悪いインフレ」は、あと30年くらい継続するのです。

あと30年は続く

 

物価上昇で資産価値が高くなるものを保有しておく

マクロ経済スライドによって年金額の伸びが、物価上昇に追いつかなくなると、生活が苦しくなります。

この対策としては物価が上昇する局面で、資産価値が高くなるものを保有しておくのです。

候補としては金(ゴールド)や、米ドルなどの外貨になりますが、どちらも現在は高値圏にあるため、一括購入した後に資産価値の下落が始まった場合には、長期に渡って含み損を抱えることになります。

そのため一括購入するよりも、購入するタイミングを分散した方が良いと思います。

また金については純金積立、米ドルについてはFX積立(外貨預金より手数料が低い場合が多い)などを活用すると、購入するタイミングを自動的に分散できるのです。

このような積立投資で購入した金や米ドルを、物価上昇によって資産価値が高くなったタイミングで売却すれば、マクロ経済スライドによる年金の給付水準の目減りを、ある程度はカバーできると思います。

なお投資に興味がない方は、固定費(水道光熱費や通信費の基本料金部分、生命保険の保険料など)の節約、または高齢になっても働ける資格や技術の習得などに、取り組めば良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

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