中古の分譲マンションを買いたい。
分譲マンションは、専有部分である居室部と、共用部分の持ち分を購入します。
共用部分は日常管理を「管理費」、大がかりな修理や設備の交換などは「修繕積立金」によって賄います。
今回は修繕積立金を取り上げます。
多くの管理組合は、建物修繕を計画的に行う為に長期修繕計画を作成します。
適切な長期修繕計画に沿って、修繕積立金が積み立てられているマンションを、「安心マンション」としました。
長期修繕計画通りに修繕積立金が積み立てられていないマンションを「心配マンション」とします。
分譲マンション購入後に修繕積立金の値上げや一時金の徴収があると、住宅ローン返済計画の修正や老後資金が減るなど、影響は計り知れません。
今回は「安心マンション」と「心配マンション」見分け方について、ご説明します。
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長期修繕計画とは
長期修繕計画とは将来予想される修繕工事等を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を設定するために作成するものです。
将来予想される修繕工事等を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を設定するために作成するものです。
参照:国土交通省 (pdf)
長期修繕計画実施のための予算が、修繕積立金となります。
平成30年度マンション総合調査結果(平成31年4月26日公表)では、約9割の管理組合が長期修繕計画を作成しています。
参照:国土交通省(pdf)
長期修繕計画の中で最も出費を伴うのは、大規模修繕工事です。
大規模修繕工事とは、建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事 (全面的な外壁塗装等を伴う工事)をいいます。
参照:国土交通省(pdf)
上記ガイドラインによると、大規模修繕工事は12~15年周期を想定しています。
長期修繕計画は、30年以上で大規模修繕工事を2度含めることになります。
長期修繕計画が承認された分譲マンションを、住宅ローンにて購入する場合、優遇が受けられる場合があります。
「心配マンション」の将来
下記の理由により、長期修繕計画より修繕積立金が足りないマンションです。
・ 段階増額積立方式等により徴収額が少ない。
・ 台風や地震等の天災、想定対応年数以前に故障した設備の補修などに修繕積立金を使用した。
・ 区分所有者の滞納など。
大規模修繕工事時に資金が足りない場合は、管理組合で資金を借り入れるか、 組合員に一時金として徴収することになります。
あるいは大規模修繕工事自体を順延が考えらえます。
管理組合で借り入れたとしても、返済のために修繕積立金の値上げが想定されます。
時期の差はあれ、組合員の負担は増えます。
また資金不足から、設備の更新が対応年数通りに行われない可能性があります。
「安心マンション」
設備が適切に更新されるマンションです。
まれに、「お宝マンション」があります。
長期修繕計画より、大幅に修繕積立金が余っているマンションです。
特に大規模修繕工事後、修繕積立金が余っているは安心感があります。
理由としては、
● 修繕積立金の設定が高額かった。
● 大規模修繕工事を、想定より安価におこなえた。
これらが考えられます。
修繕積立金の貯蓄額多いのであれば、組合員が払わなければならない月毎の修繕積立金が安くなる可能性があります。
修繕予算に余裕があるマンションは資産価値が高いと見なされ、売却時も有利です。
マンションの見分け方
長期修繕計画と、直近の貸借対照表を比較し修繕積立金の積立具合を確認
長期修繕計画は購入目的の利害関係者であれば、管理組合(管理会社)に申し出て、見ることができます(手数料がかかります)。
貸借対照表は直近に行われた通常総会議案や議事録で確認します。
値上げ計画があるか確認
修繕積立金の値上げ計画や、総会での決定があるか確認してください。
特に段階的増額積立方式を採用している管理組合では、数年ごとに数回に分けての値上げが決定されている場合があります。
例えば、現在月毎6,000円の修繕積立金が、2年後に8,000円、4年後に1万円になるなどです。
長期修繕計画自体の確認
長期修繕計画はあくまで計画です。
実情と誤差がある場合は、それを見越して判断してください。
長期修繕計画の作成が古い場合
最近の工賃、材料高が反映されていない可能性があります。
また計画通り行われた修繕が反映されていない場合や、計画にある修繕が実際には行われていない可能性があります。
管理会社等にマンションの修繕履歴を請求すると、確認できます。
長期修繕計画自体が恣意的に高価や安価に設定されている場合
月毎に組合員が管理組合に収める修繕積立金額は、管理組合の総意である総会で決議されます。
マンションの修繕の大切さはわかっているけども、毎月の払いは押さえたいもの。
また自身が管理組合役員時は、極端な値上げはしたくないものです。
月毎の修繕積立金額を押さえるため、長期修繕計画自体を安価に設定している場合があります。
長期修繕計画で計画される大規模修繕工事について、一戸当たりの平均単価は平均100万円とされています。100万円から大きく外れる場合は要注意です。
修繕積立金積立状態の重要性
今回は分譲マンションを購入する際に、修繕積立金積立状態の重要性をご説明しました。
・ 潤沢な修繕積立金があり、計画通りの修繕がなされ、天災等にも費用支出が可能なマンション。
修繕積立金の値下げもあるかもしれない、資産価値の高いマンションはぜひ購入したい「安心マンション」です。
・ 修繕積立金が足りない、修繕の遅延があり、天災等非常時に対応する予算がないマンション。
修繕積立金の値上げや一時金の負担の可能性が高い、資産価値の低いマンションは購入してはいけません。
管理費と修繕積立金は、売却か続放棄でもしない限り支払いの義務があります。
資産価値が低いマンションは売却できないだけでなく、支払いを免れることもできないのです。
マンション購入時は立地やお部屋の中だけでなく、今回説明した長期修繕計画と修繕積立金の具合、マンションの管理状態も考慮した、「安全マンション」を購入ください。
「お宝マンション」なら、なお良いでしょう。(執筆者:金 弘碩)