引退後の老後の生活を支える代表格として、老齢年金があげられます。
老齢年金とは国民年金から支払われる老齢基礎年金と会社員や会社役員が加入する厚生年金から支払われる老齢厚生年金に分けられます。
現在は、公的年金とは別の「私的年金」として企業型DCやiDeCoも注目されていますが、本記事ではそれらの私的年金を除く公的年金にスポットライトを当て、もし、その公的年金制度がなかった場合のデメリットについて考えてみます。
世代間扶養とは
公的年金制度を知るうえで避けて通れない論点として、「世代間扶養」というキーワードがあります。
端的には現役世代が納めた保険料を基に年金受給者の年金が支払われているという仕組みです。
別の言い方をすると政府を介して、現役世代のお財布から保険料を徴収し、高齢者へ所得の世代間移転をしていると言え、「賦課方式」とも言いますが、詳細は割愛します。
重要な点として、健康保険の扶養であれば、扶養している親族のみを支えているところ(厳密には程度の差はあるものの年金と同様の性質はあり)、年金制度は、現役世代が一体となった集団として、集団としての高齢者を支える仕組みが確立されていることを意味します。
もちろん、コツコツと保険料を納付した実績は実際に自身が老後を迎えた際の老後の年金額にも反映します。
老後の不安が大きくなる
人生100年時代とはいえ、生を全うするギリギリまで働けることは稀です。
仮に公的年金制度がない場合、現役を引退後は退職金制度がある会社に勤めていた場合は退職金を用いて、また、退職金制度がない会社に勤めていた場合は貯蓄を少しずつ切り崩し生活していくこととなります。
株や不動産投資など、昨今、様々な収入の確保方法も注目を集めていますが、一定以上の知識が必要で誰もが取り組めるもとではありません。
子供に負担が集中する
仮に公的年金制度がなかった場合、集団としての世代間扶養がないことから、多くの場合、原則として自分の親は子供が全て面倒を見なければならないこととなります。
もちろん、年金以外の介護問題などは、公的年金制度の有無に関わらず、ゼロになることはあり得ませんが、そのような介護問題にプラスして月々の生活補助が必要となるということです。
本来、子供の学費として、備えておいたお金も親の生活費のために使う頻度も多くなるでしょうし、親が長生きすればするほど、子供の生活水準が上がらないことにも繋がってしまいます。
親が長生きすればするほど格差が生まれる
誤解を恐れずに言うと、親が健康に長生きできることは、大変喜ばしいことですが、仮に公的年金制度がないとなるとどのようなデメリットが生じるのでしょうか。
親が一定の備えがあれば問題は大きくならないのでしょうが、長生きすればするほど、一般的に働ける体力はなくなり、固定的な収入源はなくなります。
そうなると、定期的な収入が亡くなった親の面倒を子供が見なければならず、親が長生きすればするほど、経済的に苦しくなることが予想されます。
親もそのような子供の苦悩する姿を見ながら生きることとなりますので、精神衛生上も決して良い状態とは言えません。
医療保険の制度とは
社会保険(厚生年金・健康保険)上、年金も医療保険も保険料の決定は会社から支払われる給与や役員報酬額によって、決定します。
一度決定された保険料も必ず毎年1回は、実態と合っているかの精査も行われます。
年金であれば、高い報酬で長く働くことで、年金額を増やすことができますが、医療保険の場合は、報酬が高いからと言って、良質な医療を受けられる権利があるわけではありません。
場合によっては、高報酬世帯ほど良い食べ物を食べているなどの理由によりむしろ病院に行っていない可能性すらあり得ます。
仮に公的年金制度がない場合というテーマでしたが、一番の不安要素は子供の負担が大きくなる点と考えます。
また、子供がいない家庭の場合はより深刻な状況ともなり得ることから、可能な限り保険料をおさめて、安心した老後の生活を送れるきっかけになります。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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