「三千円の使いかた」(著者:原田ひ香・中央公論新社)というユニークなタイトルの書籍をみつけました。
三千円の効率的な使い方が書いてあるわけではなく、世代が異なる登場人物のお金事情と考え方について書かれています。
今回は「三千円の使いかた」から、世代別のお金の考え方についてお話しします。
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20代30代は「お金を増やすことを楽しめるとき」
書籍「三千円の使いかた」には、20代・30代・50代・70代の4人の女性が登場します。
それぞれ独身だったり、子育て中だったりと事情が違います。
登場する20代女性は独身で安定した収入があります。
しかし、ぜいたくな生活をしているわけでもないのに、貯金が30万円ほどしかありません。
一方、30代女性は専業主婦で小さな子どもが1人います。
夫は公務員ですが月収23万円と多くはありません。
しかし、資産運用と節約を心がけ600万円も貯金しています。
ふたりの貯金額の違いは、お金に対する姿勢の違いです。
30代女性は目的をもって貯蓄に励み、お金を増やすことを楽しんでいます。
普通預金に預けるだけでなく、多少のリスクがある投資信託もしています。
一方、20代女性はお金を増やすことに興味はなく、支払える金額の賃貸に住み、コーヒーショップで毎朝カフェラテを飲みます。
「お金を増やす」という考えが全くないため、文字通りのラテマネー(なにげなく使う少額の出費)を使います。
20代や30代は、お金を増やすことを楽しむパワーがあります。
例え資産運用で失敗したとしても、立ち直る時間が残っています。
「お金を増やす」という気持ちがあるかないかだけで、大きく貯金額が変わる世代です。
30代女性は、子どものためにお金を増やしたいと思っています。
お金を増やす目的と夢を重ねることで、よりお金を増やすことは楽しくなるのではないでしょうか。
マネ達世代必見の40代50代は「外的要因が大きく影響」
「三千円の使いかた」に登場する50代後半の女性は、子どもが巣立ち夫と2人で暮らしています。
ふと貯金通帳をみると、わずか100万円程度しかありません。
原因は、子どもの結婚費用や家のリフォームなどの大きな出費でした。
さらに大きな病気をしたことで、老後に不安を感じます。
40代50代は、子育てがひと段落して自分の人生のお金について考える世代です。
とはいっても、すでにもらえる年金額はだいたい決まり、これから先大きな収入は期待できません。
むしろ、大きな出費や想定外のことがおこる可能性の方が心配です。
「三千円の使いかた」は熟年離婚にもふれています。
離婚は想定外の代表的な出来事です。
熟年離婚は「離婚するくらいなら多少我慢したほうが経済的にはプラス」と言われます。
しかし実際は、離婚したいくらい嫌になったらお金の後先なんて考える余裕はないのではないでしょうか。
筆者は、お金の損得勘定よりも、離婚した後の「稼ぐ計画」をひそかに練っておく方がお金にも心にもプラスになる気がします。
40代50代は、自分の気持ちとは関係のない外的要因がお金に大きく影響を与えます。
貯めたいけれど貯められないときには、少し先を考えて先の計画を立てておくことも、人生の総合的なお金には大切なことではないでしょうか。
70代以降は「今までの生き方で稼げる力が決まる」
登場する70代女性は、夫に先立たれて年金でひとり暮らしをしています。
貯金は1,000万円ありますが、これから先を考えると少ない年金を心もとなく感じています。
そこで、72歳にして職探しを始めます。
若いときの販売経験をいかして、再び販売職に就くのです。
40代50代は、外的要因でお金を増やすことが難しい時期です。
70代になれば自由に時間を使うことができますが、稼ぐ方法は限られてきます。
登場する70代女性は「販売経験」を持っていたため、再び稼ぐことができました。
によって70代以降の稼ぐ力は変わってくるのかもしれません。
すべての世代に共通していることは「お金の使い方は人を表す」ということ
「三千円の使いかた」には、男性も登場します。
彼は日雇いの仕事をしながら、その日その日を楽しく暮らす独身男性です。
お付き合いしている彼女はいますが「子どもは費用対効果が最悪」という考えから、結婚に二の足を踏んでいます。
という考えが、人生に大きな影響を与えています。
紹介した登場人物以外にもさまざまな事情をもった人たちが登場します。
それぞれの事情をみていくと、根底には「お金に対する考え方」「お金の使い方」が原因になっています。
あるカップルは、お金の価値観の違いにより婚約破棄になります。
20代女性は、お金に対する考えが変わったことで新しい道を見つけます。
この本のタイトルは「三千円の使いかた」のため、賢い三千円の使いかたが書かれたハウツー本かと思って手に取る人が多いようです。
しかし、このタイトルには「多くも少なくもない三千円の使いかたで人柄がわかる」という意味が込められているのでしょう。
「三千円を投資して増やそうとする人」と「たかが三千円と思って浪費する人」とでは、お金の価値観だけでなく内面に大きな違いがあります。
本を読み終えてから「登場人物ひとり一人を思い出し、この人なら三千円をどう使うのか」を考えてみると、人と世代によって三千円の価値が変わることに気がつきます。
収入が増えずに物価が上がり続けていると、「とりあえず節約をしてお金を貯めなければ」と思います。
しかし、節約は目的ではなく手段です。
自分の人生をどう生きるのかを考えてみると、必要なお金と必要なタイミングがみえてきます。
筆者は40代です。
外的要因が大きくお金が貯めづらい世代ですが、こんなときだからこそ「この先の人生」を見据えて「お金の計画」をたてようと思わされた1冊でした。(執筆者:クリエイティブな節約家 式部 順子)
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