日本では、子供が産まれることがわかった際には様々な社会保険制度が整備されています。
しかし、制度が複雑ゆえに、女性だけが活用できるもの、性別を問わず活用できるものの区分が不明瞭であることが指摘されています。
今回は、育児に特化した3つの給付金を性別ごとに対象者を明確化し、解説します。
健康保険の「任意継続被保険者制度」の改正 退職時等の健康保険選択を計算例と共に解説
出産手当金(女性のみ)
出産手当金とは健康保険法に設けられた制度で、産前産後休業中に給与の支給がなくなった(※または出産手当金の額よく少なくなった)場合に支給されます。
具体的には出産日以前42日から出産日の翌日以後56日までの間が支給対象期間です。
育児休業は性別を問わず取得可能ですが、産前産後休業は女性だけが対象ですので、必然的に出産手当金は女性だけが対象となります(男性は受給できません)。
出産手当金の額は「支給開始日の直近12か月間の平均標準報酬月額÷30×2/3」となりますので、概ね給与の6割相当額が受給できます。
尚、支給開始前の期間が12か月に満たない場合は、支給開始月以前の継続した各月の平均標準報酬月額と30万円を比較し、いずれか低い方を使用して計算します。
※出産手当金の額より低額の給与が支払われている場合は差額が支給されます。
また、次の2つの要件を満たしていることで、退職後も出産手当金を受給できますので、忘れずに申請しましょう。
・ 資格喪失時に出産手当金を受けていることまたは受ける条件を満たしていること
注意点としては、退職日に働いていると2つめの要件を満たしていないことから、退職後、出産手当金は支給されません。
出産育児一時金(性別不問)
出産育児一時金とは健康保険法に設けられた制度で、被保険者またはその被扶養者が出産した際に出産にかかる経済的負担を軽減するために、一時金として給付をする制度です。
出産は「正常分娩」の場合、病気や怪我ではないことから、公的医療保険は使えず、出産費用全額が自己負担となりますので、経済的な負担は決して小さくありません。
給付される額は、一児につき42万円となり、産科医療補償制度の対象外となる場合は40.8万円となります。
また、出産手当金と同様に退職した場合はどうなるのでしょうか。次の2つの要件を満たすことで、退職後であっても受給可能です。
・ 退職日までに継続して1年以上被保険者期間があること
・ 退職日の翌日から6か月以内の出産であること
「資格喪失後の給付」は被保険者であった人の出産が対象となるため、「被扶養者であった家族」の出産は支給対象外です。
退職した妻が、夫が被保険者として加入している健康保険組合の扶養に入った場合はどのような給付となるのでしょうか。
結論としては両方から受給することはできません。どちらか一方の選択となります。
育児休業給付金(性別不問)
育児休業給付金とは雇用保険法に設けられた制度で、育児休業中に給与の支給がなくなった場合等に支給されますが、男性と女性では受給開始が異なりますので注意しましょう。
会社員の女性の場合、出産すると、その翌日から強制的に産後休業となります。
しかし、男性の場合は配偶者の出産日当日から対象となります。
受給額は育児休業取得後180日目までは概ね給与の68%で、181日目以降は50%となります。
ポイントとしては、出産手当金以外は、男性でも対象となり得るものですので、忘れずに申請手続きを進めましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
【社会保険料】「月末や1月に退職すると損」への2つの反論 本当にお得になるケースとは