株式を売却して得た利益は所得税の課税対象となり、原則確定申告が必要です。
ただ株式の売却益が発生しても申告が不要なケースもありますので、今回は株式譲渡益の申告方法について解説します。
確定申告をしていなくても税務署から電話がかかってくる可能性あり 3つのケースを紹介
源泉徴収されていれば申告不要
確定申告が必要になるかは、口座の種類と源泉徴収の有無がポイントです。
株式を取引している口座には、「一般口座」と「特定口座」の2種類あります。
一般口座は自分で売却損益を計算しなければいけない口座で、売却益が発生している場合には確定申告で譲渡所得税を納めます。
特定口座は証券会社が株式の損益を計算してくれる口座で、「源泉徴収あり」を選択していると、証券会社が利益に対する税金を代理で支払ってくれるため、確定申告をしなくても問題ありません。
ただ特定口座でも「源泉徴収なし」を選択している場合、証券会社は損益の計算は行ってくれますが税金の支払いはしてくれませんので、利益が出た際は確定申告が必要になります。
証券会社同士の損益通算は確定申告で行うことになる
複数の証券会社で株式の売買を行っている方でも、特定口座の「源泉徴収あり」を選択していれば売却益を申告する必要はないです。
ただ特定口座の損益計算は証券会社ごとに行われるため、証券会社ごとの損益を合計したい場合には確定申告をしなければなりません。
利益が発生した証券会社の口座が「源泉徴収あり」を選択している場合、申告しなくても税務署から指摘を受けることはありませんが、譲渡所得税を支払いすぎている状態になっています。
たとえばA証券会社(特定口座・源泉徴収あり)は利益、B証券会社(特定口座・源泉徴収あり)は損失が発生しているケースでは、A証券会社の売却益に対して源泉徴収が行われており、B証券会社の損失は加味されません。
ABの証券会社の損益通算を行えば、実際に支払う譲渡所得税は少なくなりますので、確定申告することで、源泉徴収により納め過ぎた税金の還付を受けることができます。
赤字を繰り越したい場合は要申告
株式の譲渡所得税は利益に対して課される税金なので、株式売買で損失が発生している場合には確定申告をしなくても問題ありません。
ただ上場株式の損失については、確定申告をすることで最大3年間繰り越すことができ、繰り越した損失金額は翌年以後に利益と相殺することが可能です。
損失金額100万円を繰り越し、翌年に30万円の利益が発生した場合、利益と繰越損失を相殺することで30万円の利益はゼロとなり、30万円に対する譲渡所得税を源泉徴収で支払っていれば確定申告で還付されます。
控除しきれなかった損失金額70万円は翌々年に繰り越すことができ、利益が出れば再び利益と相殺することが可能です。
損失の繰越制度を利用する際の注意点としては、株式の赤字の繰り越しは任意であり、制度を利用する際は、必ず確定申告により損失金額を繰り越す意思表示をしなければなりません。
確定申告をしても赤字を繰り越す意思表示をしていなければ、損失の繰り越しは認められませんし、繰り越し意思表示は毎年必要です。
確定申告手続きを行った際の影響
特定口座で源泉徴収することを選択していれば、確定申告手続きが不要になるので便利ですが、損益通算等を行うために申告した方がいいケースもあります。
ただ確定申告をすることで配偶者控除や扶養控除の基準となる所得金額を超えてしまい、控除対象外となってしまうことも想定されますので、扶養家族になっている方が手続きする際はご注意ください。
また確定申告することで国民健康保険料が上がるケースもありますので、ご自身の状況を踏まえて上で申告するか判断してください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)