夫が亡くなり入院費を引き出しに行った佐藤さん
長期入院されていた夫の入院費用の支払いのため、夫の通帳を持って、某銀行に行った時のことです。
窓口の方からから「ご退院されたのですか?」と聞かれ「いえ亡くなりました」と答えたところ、担当の方が
といいます。
贈与した認識はなくても、贈与税の課税対象となってしまう3つのケース
「仮払い制度による引き出し」も実は大変
佐藤さん 「なんか、仮払い制度とかできて一部なら引き出せると聞いたけれど・・・」
窓口担当者 「えぇ、その制度を使えば、法定割合の三分の一まで引き出しが可能です。ただ、その場合でも、法定相続割合の確認をしないといけないわけでして」
佐藤さん 「それなら、私たちには子供がなく相続人は私一人だから」
窓口担当者 「お子様がいない場合は、両親や祖父母等直系尊属がいれば奥様の法定割合は2/3ですし、その方たちが既に亡くなっていて、きょうだい、甥姪の方が一人でもいれば、奥様の法定割合は、3/4となります。確かに、すべていないか亡くなられていれば、奥様一人が法定相続人となります。仮払いの基準となる法定相続分も戸籍にての確認となるので、まずは戸籍の入手からお願いすることになります」
お子さんがいない方の相続人を確定するための戸籍の入手は大変です
相続人の確認には、故人の出生から亡くなられるまでの戸籍が必要になります。
そこで子供の確認をするわけですが、子供も、その子の代襲相続人もいなければ直系尊属となり、父方、母方の生死の確認が必要です。
いなければ、故人のきょうだい、きょうだいが亡くなっていれば、「おい・めい」の確認が必要となります。
また、故人のきょうだいの確認作業には、父方、母方の出生からの戸籍が必要です。
再婚され半血きょうだいも相続人となるからです。
筆者も会計事務所にいた時、司法書士さんに依頼しましたが、50以上の戸籍が必要となった事案もありました。
夫のきょうだいに相続権があることに納得がいかない佐藤さん
佐藤さん夫婦は、夫の両親の反対を押し切って結婚したこともあり、両親からの援助はありませんでした。
夫の両親の相続では、放棄をしたといいます。
夫の遺産はすべて夫婦二人で築いたものといいます。
もちろん、きょうだいの方にそれらの事情を理解してもらい、妻にすべての遺産がいくことに署名をしてもらえば、妻がすべて取得することはできるのですが、相続人一人でも、反対されればそうはいきません。
また、未成年の方、判断能力のない方がいると手続きは、さらに複雑化します。
遺言書さえあれば、問題は解決できた
子供がいない夫婦は、生前お互い有効な遺言書を書いておけば、前記の問題は解決できたのです。
相続の時点で直系尊属もいなければ、「きょうだい・おいめい」には遺留分もありませんので、後日のトラブルもありません。
名義変更や預金の払い出しに、相続人確定の戸籍も原則不要です。
相続人となる、「きょうだい」とは、故人の側の「きょうだい」であり、佐藤さんにしてみれば、会ったこともない夫の「きょうだい」の子の住所を探し、遺産分割に参加してもらうよう連絡をし、返信を待つ事態も避けられるわけです。
その上、夫のきょうだいと関係がうまくいっていないケースならなおさらです。
遺言書は「配偶者にすべて」に限定しなくてもよく、きょうだいや甥姪の方、お世話になった方にも遺産がいくような内容でもいいのです。
ポイントは、遺言書がなければ、きょうだい等に法定相続分がありますが、遺言書があれば、遺留分権利者でない、きょうだい・甥姪の側からは遺産を分けてくれと言われなくて済むのです。(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)
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