新しい生活様式も定着してきた2021年の年末、そろそろ受験本番が近づき、学費のことや奨学金のことを調べている人も多いと思います。
「奨学金が返せないときはどうすればいい?」「奨学金を利用するデメリット」こうした見出しを見ると、心配も増えてきます。
「奨学金を利用して、返していけるのかな?」
「返せなくなったときはどうすればいいの?」
「そもそも奨学金ってよくわからない」
奨学金に関する情報や記事も多いので、かえってわかりにくいかもしれません。
そこで今回は、奨学金に関する素朴な疑問を銀行員が解説します。
私自身、大学進学のため奨学金を利用し、返済を終えた経験がありますので、生の声としてぜひ参考にしてください。
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奨学金の基本を解説
奨学金とは、経済的な理由で進学が困難な人に対し、進学するための資金を貸与(たいよ)する制度の総称です。
なお奨学金には返還不要なタイプもありますが、多くの人が利用するのは貸与型、つまり「奨学金を借りて、卒業し就職してから返していく」形式です。
そこでこの記事では貸与型奨学金について解説していきます。
奨学金とは? 日本学生支援機構の貸与型奨学金の場合
奨学金として代表的なのは、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)です。
以前は「日本育英会」という名称で、こちらのほうがなじみのある人もいると思います。
国の制度である日本学生支援機構の奨学金は、国内の大学、短大や専修学校への進学を目指す人を対象とした奨学金です。
まずポイントを並べてみました。
<日本学生支援機構の奨学金とは?>
● 日本学生支援機構の奨学金は、国の制度
● 奨学金には返付済不要の「支給型」と、返済が必要な「貸与型」がある
● 貸与型には無利息の「第一種奨学金」と、利息が付く「第二種奨学金」がある
● 進学先が「国公立と私立」「自宅通学と自宅外(下宿)」で金額が異なる
● 在学中の4年(または6年間)のあいだ、毎月指定口座に振り込まれる形式
● 4年生大学と短大、専修学校などで、それぞれ貸与月額が違う
● 利息は低利(参考・平成19年4月以降の例0.268%/年)
● 利用額により決まる返済期間は10年~20年程度
参照:日本学生支援機構
日本学生支援機構以外で進学費用を準備する方法
次に、日本学生支援機構以外で進学費用を準備する方法を2つ紹介します。
国の教育ローン
国が行う教育ローンが日本政策金融公庫の「教育一般貸付(国の教育ローン」です。
特徴は以下のとおりです。
● 借りる人は親・保護者(学生本人の両親以外に、扶養している保護者が利用できる場合もあります)
● 利用限度額は子供一人につき最高450万円まで(自宅外通学まで、など条件あり)
● 金利は年1.65%(固定金利・保証料別・令和3年11月1日現在 家族構成や個別事情で最大▲0.4%の金利優遇あり)
● 融資期間は15年まで(在学中は利息払のみで、卒業後残額を期限までに分割返済)
参照:JFC日本政策金融公庫
教育ローン(民間銀行)
こちらは銀行、信用金庫、JAやろうきんなどの民間金融機関が取り扱う教育ローンです。
在学中は「借りて返して」反復利用できるカードローンとして使い、卒業時に残った金額を分割返済(証書貸付に自動変更)していく形式が主流になっています。
また民間の教育ローンでは、団体信用生命保険(※)が付帯される商品があるところが、大きな特徴です。
(※ ローンを借りる人が生命保険に加入し、死亡や高度障害になると保険金で借入残高を完済する仕組み。保険料は金利に含まれる)
参照:りそな銀行
その他の特徴は以下のとおりです。
民間の教育ローン
● 借りる人は親・保護者(注1)
● 利用限度額は500万円までが主流
● 金利は低く、カードローンと比較しても低利(注2)
<例>教育ローン:年4.475
カードローン:年10.600%~年13.600%
● 融資期間は10年以内(在学中は利息払のみで、卒業後残額を期限までに分割返済)
【注1】こちらも借りるのは親・保護者です。
進学する子供本人が借りることも可能(三菱UFJ銀行の場合)ですが、本人年収が200万円以上・勤続1年以上などの条件があり、かなり限定的なケースになっています。
そのため一般的には、教育ローンは親(保護者)が借りるものと言えます。
参照:三菱UFJ銀行
【注2】金利は三菱UFJ銀行のケースです。
教育ローンは特別金キャンペーンなど、銀行により金利が異なります。
参照:三菱UFJ銀行(2021年12月1日現在)
*教育ローンは「教育ローン(窓口受付専用商品)」、カードローンは「バンクイック」(利用限度額200万円以下100万円超の場合)
奨学金の返済を解説
「奨学金が返せなかったら?」と心配する前に、
平易際はいくらくらいになるのか? といった点から見てみましょう。
【モデルケース】
大学4年間だといくら利用し、いくら返済しなければいけないのか?
では、一つモデルケースで見ていくことにしましょう。
私立大学・4年生・文系・第二種奨学金(貸与型)で毎月4万円を4年間利用した場合です。
返済のモデルケース
● 大学4年間の利用総額は? → 貸与額毎月4万円×12か月×4年=総額192万円
● 返済は? → 総額192万円・金利は0.268%/年・返済期間は13年間
毎月返済1万2,533円(ボーナス返済なし)・返済回数156回・返済総額195万5,214円
*返済額はあくまで一例です。
利用額(貸与額)と返済額は申し込む人の家計、その他個別事情で変わっていきますので、かならずご自身で確認してください。
参照:日本学生支援機構
毎回の返済額と他の支払いを比べるなら
この毎月返済額は、どのくらいの重さがあるでしょう。
いくつか比較してみます。
<毎月の支払、奨学金と比較>
● 奨学金の返済例:毎月約1万2,000円
● 携帯電話料金の平均:毎月約1万円(参照:総務省)
● マイカーローン返済例:毎月約2万円(参照:三井住友銀行借入額200万円、10年返済、年利4.475%として)
● インターネット料金:毎月約5,000円(筆者調べ)
もちろんここで並べた料金が無駄とは言いません。
生活に必要な、誰でも払っているお金だと思います。
そして奨学金返済は特別に高額ではなく、負担感も大きくないと私は感じています。
私の返済経験~それなりに苦労はしました
ここで私が奨学金を返済した経験談を時系列でお話しします。
50代のおじさんが30年前に奨学金を返し終えた足跡
● 毎月返済12,000円も入社した頃は重かったけれど、頑張って返していった
● マイカーローンを組んだ時も、奨学金返済とダブルで少し苦労した
● 結婚資金を貯めていたときは、奨学金がイヤだなあと感じていた
● でも35歳で完済できたとき、自分で自分を褒めてあげた
恥ずかしながら、何度か返済が遅れたときもあります。
しかし、その後住宅ローンを借りることもできましたので、奨学金の遅れが影響しなくてよかったと、胸をなでおろした記憶があります。
誰の奨学金か? 誰が返すのか?
奨学金は「本人が返す、いや親が返す」と決めつけるのではなく「わが家で返す」ものだと私は思います。
そして大事なのは、奨学金を利用している事実をしっかり受け止めることです。
もし、お子さんと奨学金について話し合う機会があったら、こう伝えていただきたいです。
「目の前の現実からは目を背けないでください。」
奨学金を借金とは言いたくないですが、進学費用を借りることは間違いない事実です。
でも奨学金は悪いこと、恥ずかしいことではありません。それなりに大変でしたけど、なんとか返せましたよ。
と、経験者のおじさんがそう言っています。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)
奨学金を12年間返済した私から 学生の皆さまに最低限知っておいてほしいこと5つ