同一労働同一賃金の影響や業種によっては非正規雇用者にもボーナスを支給するといったケースもあります。
それ自体は大変喜ばしいことではありますが、扶養の範囲内で働いている場合は注意が必要です。
「税金の扶養」と「健康保険の扶養」は対象が違う 特に「年金や給付金の扱い」に注意
被扶養者の要件とは
扶養には税法上の扶養と社会保険上の扶養がありますが、今回は社会保険上の扶養にフォーカスをあてていきます。
社会保険上の扶養は生計維持要件があり、被扶養者の年収が130万円未満であることが要件です。
年収には給与収入だけでなく、ハローワークから支給される失業保険や遺族年金も含まれます(失業保険や遺族年金は税法上非課税)。
例えば会社員である夫の扶養の範囲内で非正規雇用勤務する妻を例に取ります。
非正規雇用であっても、週および月の所定労働時間が正社員の4分の3以上の場合、社会保険に加入しなければなりません。
また、2022年10月以降、社会保険の適用拡大が順次施行されます。
社会保険の適用拡大
週および月の所定労働時間が正社員の4分の3未満であっても、以下の条件に当てはまる場合、短時間労働者として社会保険の対象とされます。
- 501人以上の事業所であること
- 報酬の月額が8万8,000円以上
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 継続して1年以上雇用見込み
- 学生でないこと
上記の5つの要件にあてはまる場合、社会保険に加入しなければなりません。
本人に選択の余地はなく、加入対象となります。
労働契約締結の段階で判断され、契約形態変更時に加入対象になる場合もあります。
2022年10月からは以下の要件に改正されます
- 101人以上の事業所であること
- 報酬の月額が8万8,000円以上
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 継続して2か月を超えて雇用見込み
- 学生でないこと
変更箇所は501人以上の事業所であることが、「101人以上の事業所であること」、継続して1年以上雇用見込みの部分が「継続して2か月を超えて雇用見込み」に変ります。
今回着目すべき部分は、「報酬の月額が8万8,000円以上」の部分です。この部分の「報酬」は最低賃金法で除くこととされているものは含まれません。
例えば通勤手当やボーナス(ボーナスは1月を超える期間ごとに支払われる賃金にあたる)は含まれません。
ボーナス支給以外の労働契約の変更が全くない場合、短時間労働者として、社会保険加入対象とはなりません。
しかし、社会保険上の被扶養者の要件である年収130万円未満という要件を満たさなくなってしまう可能性もあることからその点は注意が必要です。
その点を危惧し、時給額を減らしてほしいという要望もありますが、会社として最低賃金法は無視することができず、2021年10月から東京都では1,041円を下回ることが許されません。
そうなると勤務シフトを減らして年収要件をクリアしようとすると、今後は職場の他の従業員へ業務が集中することが予想されますので、慎重な判断をしなければ、思わぬ形でトラブルとなってしまいます。
尚、2024年10月からは101人以上の事業所であることが、「51人以上の事業所であること」に変ります。
労働力人口の減少が如実に表れており、社会保険加入対象者拡大の必要性は更に高まっています。
適用対象前後で要見直し
扶養から外れ、自身で社会保険に加入することで老後の年金の増額などがメリットとして挙げられます。
しかし、子の養育期間中であり、短期的な面にも目を向けざるを得ない家庭もあるでしょう。
社会保険の適用拡大は51人以上の企業まで段階的に拡大されます。
週に20時間以上や月額8万8,000円以上の要件はそれほど高い要件とも言えず、多くの方が対象となる可能性があり、適用対象前後で再度、家計の見直しをするなどの対応が必要と考えます。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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