所得税の節税策を講じることで、還付金を受け取る方法は数多く存在します。
しかし単純に節税策を実施するだけでは意味がなく、節税を行うこと自体が目的になってしまうと、手元に残るお金が減ってしまうケースもありますので要注意です。
所得控除の適用目的で支出するのは本末転倒
所得控除には生命保険料控除や医療費控除など、実際に支出した金額に応じて控除額が増える制度があります。
生命保険料控除は、「生命保険料控除」・「個人年金保険料控除」・「介護保険料控除」の3種類あり、合計最大で12万円の控除が適用可能です。
ただ年間で支払った保険料が多ければ控除額は増える一方で、一定金額を超えると保険料がそのまま控除額にはならなくなります。
また合計控除額が最高12万円と上限が設定されていますので、単純に家計の支出を抑えたい場合は保険料が少ないプランを選ぶ方が支出を抑えられます。
<生命保険料控除額の計算式>
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,001円~40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,001円~80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,001円~ | 一律40,000円 |
※新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく控除額の計算です。
※新契約の生命保険料控除・個人年金保険料控除・介護保険料控除の控除額はそれぞれ最大4万円です。
医療費控除については、所得金額が200万円以上の場合、医療費から10万円を差しい引いた金額が控除額なので、そもそも10万円を超える医療費がないと控除を利用することもできません。
そして最も注意しなければいけないのが、還付される金額は控除額に所得税の税率を乗じた金額である点です。
所得税の最高税率でも45%なので、支出した額以上に還付金を受けることはできません。
支払った所得税が少ないと還付される所得税も少ない
確定申告で所得税が還付されるのは、先に納税した金額が実際に納めるべき税金よりも多かった場合に限られます。
源泉徴収税額が10万円で、確定申告で納税額が8万円と算出された場合、差額2万円は還付金として戻ってきます。
しかし還付される金額は先に納税した所得税額が上限なので、20万円分の住宅ローン控除を適用できたケースでも、源泉徴収税額が15万円の人が受けられる所得税の還付金額は15万円です。
家庭ごとに活用すべき節税方法は異なる
所得税の節税を行う際は、現状で受けられる所得控除・税額控除があるかの確認してください。
配偶者控除は配偶者の所得金額が48万円以下、扶養控除も扶養親族の所得金額が48万円以下であれば原則適用可能です。
たとえば家族の収入が所得要件ギリギリの場合、配偶者控除(扶養控除)を受けるために収入を抑えた方が、働いて得る収入以上に所得税の還付が受けられることもあります。
また生命保険料控除については、現在保険に加入している方は、生命保険料控除を適用しない選択肢はありません。
しかし、保険料を増やしたとしても保険料以上に所得税は還付されませんので、生命保険料控除は節税のための手段ではなく、生命保険に加入した際の特典として利用できるくらいの制度だとお考えください。
確定申告手続きもコストとして考えるべき
確定申告は税務署で提出することもできますし、自宅でe-Taxにより申告書を提出することも可能です。
税務署に行く場合、交通費や待ち時間などお金・時間・労力を消費します。
還付金が10万円・20万円であれば還付申告するメリットは大きいですが、還付金額が1,000円なら確定申告の準備をしたり、税務署に行くためのコストの方が高くなることもあります。
納税申告は義務ですが還付申告は権利なので、還付金額が少ない場合はあえて申告しないことも選択肢に入れてください。
またe-Taxを利用したり、複数年分まとめて申告するなどの工夫で、手続きコストを抑えることも可能です。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
確定申告会場へ行く前に確認しておくべき4つのポイント 元税務署員が解説