会社の年末調整で配偶者控除や扶養控除、そして生命保険料控除などの手続きを済ませば、確定申告は不要です。
ただ年末調整で計算ミスや控除漏れがあれば、確定申告でやり直しをしなければなりませんし、ミスをそのまま放置すれば還付金の取り漏れにつながります。
本記事では年末調整の際に計算する所得控除で、間違いやすいポイントに焦点を当てて解説しますので、年末調整手続きする際のご参考にしてください。
住宅ローン控除を確実に受けたい人が「注意すべきポイント」4つ
1. 同居以外の親族も扶養控除の対象になる
扶養控除は、次の条件に該当する親族がいる場合に適用できる控除です。
扶養控除の要件
・ 配偶者以外の親族 ※6親等内の血族および3親等内の姻族
・ 納税者と生計を一にしている
・ 合計所得金額が48万円以下
・ 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて1度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
※都道府県知事から養育を委託された児童や、市町村長から養護を委託された老人も対象
配偶者控除は6親等内の血族および3親等内の姻族が対象なので、子や親だけでなく甥姪などを扶養にしている場合も対象です。
また「生計を一にしている」は、「一緒に生活している」の意味ではありませんので、別居している親族であっても扶養控除の対象となるケースもあります。
たとえば子が大学生で1人暮らしをしている場合、子の生活費を仕送りするなど、1つの財布(原資)から生活費を工面しているのであれば、生計を一にする親族に該当します。
2. 生命保険料は年末までの払込金額で計算する
生命保険料控除は、1月1日から12月31日の間に支払った保険料に基づき控除額を計算します。
年末調整や確定申告で使用する生命保険料の控除証明書は、その年の10月くらいに生命保険会社から送付されます。
控除証明書には、
(1) 証明書が送付された時点と、
(2) 年末までに払い込んだ場合の金額
の2種類記載があり、年の途中で解約をしていない場合は年末までの払込金額が生命保険料控除の対象となる金額です。
証明額は控除証明書が送付する時点で確定している金額であり、証明額で計算すると生命保険料控除の額が少なくなってしまいます。
そのため生命保険料控除を算出する際は、ベースとなる金額の見間違いにご注意ください。
3. 住宅ローン控除は適用2年目から年末調整が可能になる
住宅ローン控除は、10年間(13年間)適用できる所得税の税額控除です。
適用するためには初年度に確定申告で申請手続きを行う必要があり、年末調整で住宅ローン控除の手続きを行えるのは適用2年目からです。
また年末調整で住宅ローン控除の計算をする場合、税務署から送付される「(特定増改築等))住宅借入金等特別控除申告書」が必要です。
控除申告書は、住宅ローン控除を適用した初年度の申告書を提出した年の10月ごろに、税務署から2年目以降(10年控除であれば9年分)の書類が一括送付されます。
送付された控除申告書を紛失した場合は、税務署に対して「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」を提出し、再交付を受けてください。
再交付には時間を要することもありますので、控除申告書は捨てずに大切に保管しておきましょう。
年末調整時点から変更があった場合は確定申告が必要になる
所得控除は、その年の12月31日時点の状況で判断するため、年末調整後に扶養の人数が増減するなど所得控除の内容が変わった場合は確定申告手続きが必要です。
年末調整の有無にかかわらず、確定申告書を期限内に提出すればペナルティはありません。
ただ年末調整は確定申告ではないので、年末調整をしていても申告期限後に確定申告書を提出した場合、「期限後申告」となります。
還付申告であれば期限後申告でも影響はほとんどないですが、納税申告であれば修正申告と期限後申告で加算税の税率や延滞税の計算が変わってきますので、確定申告期間に手続きした方がいいでしょう。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
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