大石哲之:モナコインへの攻撃や匿名性コインなど、先週のニュース振り返り【フィスコ・仮想通貨コラム】
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※2018年5月21日に執筆
先週は、いくつかビッグニュースがあった。振り返りつつ、ニュースの意味を探りたい。
最初は、ウィンクルボス兄弟が運営するアメリカの仮想通貨取引所ジェミニにおいて、ジーキャッシュ(ZEC)の取扱が認められたことである。ジェミニはNY州でビットライセンス(仮想通貨事業者に対するライセンス)を取得しており、NY州当局とも話し合った上でジーキャッシュの取扱が許可されたと述べている。
アメリカではジーキャッシュなどのような匿名性の強いコインはだめではないかという憶測もある中、正式に扱いが認められた意義は大きい。とりわけ声明の中で、プライバシーは基本的な人権であるということを当局とも理念共有した、という一節があり、基本的な価値観のブレがないことに頼もしさを感じた次第である。
その一方、国内の仮想通貨取引所コインチェックでは、ジーキャッシュを含む、ダッシュ(DASH)、モネロ(XMR)の匿名性の高い3コインの取扱廃止を発表した。いずれもAML(アンチマネーロンダリング)を徹底できないという観点からである。以前からコインチェックが金融庁に事業者登録されないのは、これらの匿名性コインを扱っていることがハードルになっているからではないかという憶測があったが、それを裏付ける形である。
マネーロンダリングというが、腑に落ちない点がある。すでに、取引所は本人確認を徹底しているはずで、匿名性のあるコインといえども、売買したり、入出金をすれば本人情報と紐付けが可能であるはずだ。本来そこで日本円との換金の出入り口を補足するというのが取引所への規制の主眼であるはずである。
しかしながら匿名性コインがAMLを満たなさいというなら、入金前のコインの履歴や、もしくは出金したあとにどこに送られるかといいったことまで、追跡できなければならないということなのだろうか?つまり、お金の流れを追うことができないコインは使うことすら禁止という発想ではないかと危惧する。
かつて政府の解読できない暗号は禁止という時代があったが、匿名性コインの禁止は、国民のプライバシーの権利という基本的な領域に踏み込んでしまっているように思える。議論が尽くされたとは思えず、拙速である感じが拭えない。
3つめのニュースは、モナコイン(MONA)への攻撃である。Block Withholding Attackという手法により、最大で26ブロックものチェーンが巻き戻しにあった。一般のユーザーには被害はなかったものの、ある取引所ではモナコインの入金履歴が巻き戻されて被害が出た模様だ。
ブロックチェーンの巻き戻しは、かねてからその攻撃手法について可能性が指摘されており既知のものであったが、このようにあからさまに攻撃が実行されることは珍しかった。今回は26ブロックという長いものであり、しかも複数回の攻撃が確認されており、非常に計画的なものであると考えられる。
またモナコインの短時間で難易度調整を行う仕組みも、攻撃を容易にした要因であるとの指摘がされている。
PoWを採用するコインにおいては、そのセキュリティはハッシュレートの大きさと十分な分散性にある。ハッシュレートが少なく、採掘社が偏りがちなコインは次々とターゲットになることが今後予想される。
4つ目は、その予測通りに、ビットコインゴールド(BCG)が攻撃の対象になったことである。被害の状況はまだ精査されていないが、公式ツイッターでは取引所の中に被害を被ったところがあると述べている。こちらも大きなハッシュレートによる攻撃だとされており、識者の指摘では「Nicehash」というハッシュレートを売買できるサイトを通じて、攻撃に必要なハッシュレートを一時的に確保しているのではないかという見方がある。
モナコインやビットコインゴールドはGPUによる採掘方式をとっている。その他、膨大な数のコインがGPUによる採掘である。GPUによるハッシュレートは自由にこれらのコインを移動することができ、攻撃にも利用できる。つまり、GPUの採掘コインは、常に大きなハッシュレートの脅威に晒されているということが言えよう。
つい先日、モネロがASICの登場を嫌って、アルゴリズムを変更するハードフォークを行ったことがあった。しかしGPU採掘にはこのような脆弱性もあり、一概にASICにくらべて安全かというと、そうとも言い切れないという面が今回露呈した。GPUかASICかというセキュリティ論争に、おおきな一石を投じる動きとなるだろう。
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執筆者名:大石哲之
ブログ名:ビットコイン研究所
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