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シンバイオ製薬 Research Memo(3):BCVは幅広いDNAウイルスに抗ウイルス活性、治療空白領域に期待(1)


*12:03JST シンバイオ製薬 Research Memo(3):BCVは幅広いDNAウイルスに抗ウイルス活性、治療空白領域に期待(1)
■シンバイオ製薬<4582>のBCVの開発戦略

1. BCVの特徴とライセンス契約について
(1) BCVの特徴
BCVは、広範なDNAウイルスに対して高い抗ウイルス活性を持つほか、アカデミアの研究により抗腫瘍活性を持つことも明らかとなってきており、移植後のウイルス感染症だけでなく、ウイルス感染によって引き起こされる様々な合併症(血液腫瘍や膠芽腫、多発性硬化症など)のように未だ有効な治療法が確立されていない「空白の治療領域」を充足する治療薬として注目度が高まっている。

抗ウイルス活性の強さを示す指標の1つである「抗ウイルス活性IC50」の値を見ると、AdVやCMV(サイトメガロウイルス)をはじめ多くのウイルスに対して、BCVは他の薬剤と比較して高い抗ウイルス活性を持つことが明らかとなっており、これは多くのウイルス性疾患や合併症において治療効果が期待できることを示唆している。1つの化合物で幅広い疾患をカバーする治療薬候補品は稀有であり、BCVの潜在的なポテンシャルの大きさを示している。

BCVが高い抗ウイルス活性を持つ理由の1つとして、分子構造が挙げられる。BCVはCMV感染による網膜炎治療薬等で知られるCDV(シドフォビル)に脂肪鎖を結合した構造となっている。脂肪鎖を結合することで、CDVよりも細胞内に侵入しやすくなり、また侵入後は脂肪鎖が切り離されCDVと二リン酸が結合することで、DNAウイルスの複製を阻害する働きをする(=高い抗ウイルス活性)。さらに、安全性という点においても経口剤BCVでは開発元のキメリックスが、2021年にFDA(米国食品医薬品局)から天然痘治療薬として承認を取得しており、重篤な副作用が発生するリスクは極めて低いことが確認されている。

2019年に同社がキメリックスとBCVのライセンス契約を締結するに至った経緯については、当時キメリックスが他の適応症で経口剤BCVの開発を目指していたが、第3相臨床試験で下痢等の副作用が発生したほか、統計的有意差が得られなかったことで開発を中断し、ライセンスアウト先を探しており、開発成功の可能性があると判断した同社が契約交渉を申し込んだことにある。同社は、BCVが優れた安全性と機能性(広域かつ高い抗ウイルス活性)を持ち、対象疾患が「希少疾患」で「空白の治療領域」を充足するという同社の事業方針と合致するだけでなく、「トレアキシン」と同じ血液腫瘍も対象領域として含まれていたことから、営業面でのシナジー効果も得やすいと判断し導入を決断した。

キメリックスが経口剤の開発に失敗した原因は、消化器官からの薬剤の吸収率が低いため、多量の薬剤を服用せざるを得なかったことにあると同社では見ている。注射剤であれば経口剤の1割の投与量で同じ効果が期待できるため、副作用リスクも低くなり成功確率は高まると同社では考えた。同契約では注射剤だけでなく経口剤についても契約内容に含まれており、将来的に経口剤の開発も進めていく可能性もある。なお、天然痘を契約の対象外としているのは、バイオテロ対策として米国政府が自国内で天然痘治療薬を製造・備蓄しておく必要があるためだ。

(2) ライセンス契約について
BCVのライセンス契約はグローバルライセンスであること、また、製造権も含めた契約となっている点が注目される。製造も含めて自社でコントロールし、事業リスクを極力抑える体制を構築していくことが、患者も含めたすべてのステークホルダーのためとなり、かつグローバル・スペシャリティファーマとして成長するために重要であるとの認識だ。

なお、2022年9月にキメリックスがBCVのライセンスをエマージェント・バイオソリューションズ(以下、EBS)に譲渡したことを発表したが、同社が持つ全世界での独占的開発・製造・販売権についての影響はなく、契約先がEBSに引き継ぎされた格好となっている。ロイヤリティの契約期間は適応症例ごと、国ごとに販売開始から10年間、特許期間または市場独占期間のいずれか長い方となり、その最終期限が到来する時点が契約期限となる。同社は開発を進めているパイプラインの進捗に伴って発生する開発及び販売マイルストーン(最大180百万米ドル)のほか、製品売上高に応じて2ケタ台%のロイヤリティを支払う契約となっている。


移植後ウイルス感染症、がん、脳神経変性疾患の3つの治療領域に集中、2030年までに2本の上市を目指す

2. 開発パイプライン
BCVは現在、移植後ウイルス感染症領域、がん領域、脳神経変性疾患領域と3つの治療領域において複数のパイプラインの開発を進めている。なかでも造血幹細胞移植後のAdV感染症とPMLを適応症とした開発は臨床開発ステージに入っており、順調に進めばそれぞれ2028年に販売承認申請を行い2030年までに上市を目指す。

また、がん領域では前臨床試験の結果が良好であった膠芽腫、頭頚部がん、EBV関連胃がんを適応症としたパイプラインの開発を進めていく方針で、現在は医師主導臨床第2相試験の準備を進めている段階となっている。第3相臨床試験に進む場合は、資金面から大手製薬企業とライセンス契約を締結したうえで開発を進めていくことになる。いずれも既存の標準療法にBCVを加える格好で開発を進めるため、パートナー候補としては既存の抗がん剤メーカーが想定される。2026年より日米欧の製薬企業とライセンス交渉を開始している。

脳神経変性疾患領域ではEBV陽性の多発性硬化症を適応症としたパイプラインの開発を進めていく。マーモセットによる前臨床試験を完了した段階で、臨床試験入りはもう少し先となるが、有効な治療薬が未だ開発されていないことから開発意義は大きいと見ている。そのほかにも複数のパイプラインがあるが、資金面の余裕ができるまで一旦、開発を中断する方針を決定している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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