インフキュリオン Research Memo(5):決済全域を一気通貫でカバーするプラットフォームを提供(2)
2. 収益構造
インフキュリオン<438a>の売上高は、サービス導入時などに発生する「フロー収入」、月額基本料や決済処理金額に応じて継続的に得られる「ストック収入」、そして専門的な支援の対価として受領する「コンサルティング収入」の3つに区分されている。これらの収入を組み合わせることで、成長性と安定性が両立した収益モデルを構築している。
ペイメントプラットフォーム事業では、決済システムの初期導入に加え、追加開発や機能強化などに伴う開発売上がフロー収入として計上される。サービス提供開始後は、基本機能の利用に対する月額利用料、決済処理金額・件数に応じた課金がストック収入として継続的に発生する。決済領域では、取引が積み上がるほど処理金額が増加するため、サービスの普及とともにストック収入の比重が高まる構造となっている。
マーチャントプラットフォーム事業においては、決済端末の売上、端末実用化に向けた開発や関連するシステム開発売上がフロー収入として発生する。これに加え、端末やシステムの利用に対する月額基本料、並びに決済処理金額・件数に応じた課金がストック収入を形成しており、ペイメントプラットフォーム事業と同様、継続性の高い収益源となっている。
コンサルティング事業では、決済や金融サービスの立ち上げ、業務設計、システム導入支援などに関するコンサルティングサービスの対価として収益を得ている。同収入は既存顧客からの継続的な受注が中心であり、単発にとどまらず、一定期間にわたって安定的に積み上がる性質を有している。
同社はフロー収入により各案件立ち上げ段階における需要を取り込みつつ、ストック収入と継続性の高いコンサルティング収入を組み合わせることで、業容の拡大に伴い安定的かつ持続的な収益成長を見込める収益構造を構築している。決済インフラを基盤とするビジネス特性を生かし、長期的な顧客関係に基づく安定収益を確保している点は、同社の事業基盤を評価するうえで重要なポイントと言える。
3. 競合環境
同社は複数のプロダクトを通じて、決済ゲートウェイから決済基盤・金融機能までを広くカバーしている。決済領域には多くのプレイヤーが存在するものの、同社と同じ事業領域を同じ深さと広さでカバーする企業は少ない。特定のプロダクト単位では競合が存在するものの、同社の事業全体と正面から競合する企業は実質的に存在しないと言える。
決済業界では、オンライン決済、対面決済、カード発行、ウォレット、銀行口座連携など、機能ごとにプレイヤーが分断されているケースが一般的である。たとえば、カード発行基盤ではTIS<3626>が比較対象となるが、TISは受託型の開発会社である点が事業モデル上異なる。対面決済領域ではGMOフィナンシャルゲート<4051>、ネットスターズ<5590>、オンライン決済や周辺領域ではGMOペイメントゲートウェイ<3769>、デジタルガレージ<4819>などがそれぞれサービスを展開しているが、いずれも特定領域に特化した事業モデルである。同社は、消費者が利用するウォレット基盤から店頭の決済端末、企業間取引におけるカード決済のほか、キャッシュレス決済において最も重要な役割であるカード発行、加盟店管理システムまで提供しており、複数のサービスを組み合わせることで、分断された市場構造を最適化するソリューションを提供している。
このような競合環境の中で、同社の最大の強みは、キャッシュレス決済の全体像を一気通貫でカバーするプラットフォームを構築している点にある。決済は利用者が支払う表側の仕組みだけでなく、その裏側でカード会社や銀行と接続し、資金移動や管理を行う複雑な基盤によって成り立っている。同社は、決済ゲートウェイ、アクワイアリング、イシュイング、ウォレットなど複層的な決済構造を自社で統合的に提供することで、エンドツーエンドでシームレスにつながる決済基盤の構築を進めている。従来の決済業界では、複数の事業者がそれぞれの役割を分担し、システムや契約が分断された構造が一般的であった。この場合、導入コストや運用コストが高くなり、サービス設計の自由度も制約されやすい。これに対し、同社のように決済全域をカバーすることで、余分な中間コストを抑えつつ、顧客にとって使いやすく拡張性の高い決済サービスを提供できる点は、大きな競争優位性と言える。
また、フルクラウドかつAPIベースで設計された柔軟・軽量なオープンプラットフォームである点も強みである。従来型の決済システムは縦割りで個別開発されたものが多く、システム同士の連携が難しいうえ、維持管理にも大きなコストがかかっていた。同社のプラットフォームは必要な機能をAPIで組み込む形を前提としており、短期間かつ低コストで決済・金融機能を実装できる。この設計思想により、大手企業だけでなく新興企業や非金融事業者にも決済サービスへの参入障壁を大きく下げている。
加えて、プロダクト提供にとどまらず、コンサルティングとプロダクトの両輪による顧客獲得モデルを確立している点も同社の特徴である。決済は事業の根幹に関わるため、単なるシステム導入ではなく、顧客のビジネスモデルや収益構造を深く理解したうえでの設計が求められる。同社は決済領域に関する豊富な知見を背景として顧客の課題解決を支援し、その過程で得られた知見をプロダクトにフィードバックする好循環を生み出している。これにより、広告宣伝に大きく依存せず継続的に顧客基盤を拡大できる構造を築いている。
以上のように、部分的な競合は存在するものの、決済全域をカバーする統合型プラットフォーム、柔軟でオープンな技術基盤、コンサルティングとプロダクトを融合した事業モデルにより、独自のポジションを確立している。決済という複雑で参入障壁の高い分野において、同社の競争優位性は中長期的にも持続性が高いと評価される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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