いちご Research Memo(1):2026年2月期は増収増益。2027年2月期は営業・事業利益で過去最高を見込む
いちご<2337>は、オフィス、商業施設、ホテル、レジデンスなど幅広いタイプの不動産を対象とし、不動産価値向上ノウハウを活用して投資・運用を行う心築(しんちく)を強みとしている。また同社は、不動産価値向上技術・ノウハウを軸にオフィス、ホテル、再生可能エネルギー発電施設の3つの投資法人を運用・管理するユニークな企業グループである。
1. 2026年2月期の業績概要
2026年2月期は、売上高が前期比10.9%増の92,705百万円、営業利益が同25.4%増の20,449百万円、事業利益※(旧称:ALL-IN営業利益)が同12.8%増の28,047百万円、経常利益が同24.2%増の17,095百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.5%増の16,628百万円、キャッシュ純利益が同4.9%減の18,442百万円となった。主力の心築事業は商業施設の売却益等がけん引し、フロー収益が好調だった。トレードピアお台場の稼働率向上(97%に上昇)やセットアップオフィスの導入などにより賃料が増加し、ストック収益も増加した。ホテル事業では、保有ホテルの賃料成長と新規ホテル取得による増収が、物件売却・リブランド休館による減収を上回った。いちごオーナーズ事業では、物件売却の進捗や保有資産増加とリーシングの進捗などにより増収となった。一方、計画していた一括売却案件が翌期へ持ち越しとなり、期初計画は未達となった。アセットマネジメント事業では、運用資産の多角化によりストック収益が堅調に成長したが、私募リート運用会社買収による販管費増などにより事業収益は減少した。クリーンエネルギー事業は、安定的なビジネスモデルの下で堅調ではあるが、一部発電所の保守費用(売上原価)の増加が影響し前期比微減となった。
※ 心築事業及びホテル事業における営業活動本来の利益を可視化するため「事業利益」を採用している。同社は心築事業及びホテル事業で保有する不動産を「固定資産」と「販売用不動産」に分けて計上しているが、いずれも価値向上後の売却対象である一方、「固定資産」の売却益は会計上では特別損益に計上されるため、これを営業利益に戻し入れる「事業利益」により、利益創出の実態値を示している。
2. 2027年2月期の業績見通し
2027年2月期は、営業利益で前期比0.7%増の20,600百万円、事業利益で同21.2%増の34,000百万円といずれも過去最高益を見込んでいる。キャッシュ創出をさらに拡大する計画で、安定したストック収益に加えてフロー収益を伸ばし最高益更新を見込む。心築事業では、物件売却及び子会社売却により、事業利益で18,550百万円(前期比41.7%増)と大幅な増益を予想する。ホテル事業では、リブランドオープン及び新規物件による賃料収益増を見込むものの、売却を見込まないため事業利益減を予想する。いちごオーナーズ事業では、前期未実現の売却実現により、事業利益で7,600百万円(同101.9%増)と大幅増益を見込んでいる。アセットマネジメント事業では、安定したストック収益を見込むものの、投資法人関連成果報酬を織り込まない予想数値で、事業利益減を見込む。クリーンエネルギー事業では、出力制御及びコスト(売上原価)増を見込み、事業利益の微減を見込む。
2027年2月期は高水準で推移するストック収益が安定して獲得できるのに加え、心築事業やいちごオーナーズ事業のフロー収益が積み上がるシナリオである。オフィス分野では高稼働率のトレードピアお台場の売却の可能性、ホテル分野でのリブランドによるRevPAR(Revenue Per Available Room:平均客室単価×平均客室稼働率)の上昇、いちごオーナーズの前期の持ち越し案件の成約などがカギとなろう。ホテル、レジデンス、中規模オフィスや商業施設など各分野で売買市場は活況であり、フロー収益が確保しやすい環境が整っている。事業利益の目標は前期比21.2%増と意欲的であるが、弊社では十分達成可能であると見ている。
3. 中長期の成長戦略
同社では、リーマンショック時(2009年2月期)に大きな影響を受け保有資産を売却せざるを得なかった状況を踏まえ、外部環境変化に対応できる収益基盤・財務基盤の確立を目指してきた。その結果、2026年2月期のストック収益は24,399百万円と過去最高を更新した。ホテル、心築、アセットマネジメント事業が過去最高益となり、アセットタイプ別でもバランスが良い。長期VISION「いちご2030」の重要経営指標である、ストック収益比率(60%目標)及びストック収益固定費カバー率(200%目標)については、2026年2月期でストック収益比率57.8%、ストック収益固定費カバー率195.1%と、目標値に肉薄する。フロー収益に関しても、2026年2月期に17,828百万円と過去最高を更新した。特筆すべきは、含み益とそれを大きく超える売却益である。3,000億円を超える保有不動産には不動産鑑定上で835億円(2026年2月末)の含み益が存在しており、同社の仕入れた不動産が良質であることがうかがえる。実際の売却においては含み益を超える売却益を実現しており、2026年2月期に売却した不動産においては、不動産鑑定上の含み益49億円に対して2.9倍(平年は約2倍)の146億円の売却益を実現している。
4.株式還元策
同社は、配当の基本方針として「累進的配当政策」を導入している。原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」を明確な方針とし、企業の持続的な価値向上と長期的な株主還元にコミットするものだ。過去13期連続で累進的配当政策を維持しており、安定性に定評がある。同社では利益変動に左右されない安定配当を実現できる株主資本配当率(DOE)を早期から経営目標としており、2026年2月期の配当金は、年間11.50円(前期比1.00円増配)と4年連続の増配となり、DOE4.1%、配当性向28.7%となった。2027年2月期からはDOE目標を「5%以上」に引き上げ、2027年2月期の配当金は年間15.50円(前期比4.00円増配)、DOE5.1%と大幅な増配を予定している。
■Key Points
・2026年2月期は“心築”事業がけん引し、事業利益・純利益で過去最高益を更新
・2027年2月期は、事業利益で21.2%増の340億円と過去最高更新を見込む
・ストック収益の厚みと不動産価値向上力を発揮する売却益(フロー収益)が向上
・2026年2月期は年11.50円配当。2027年2月期はDOE目標を5%に引き上げ、前期比4.00円増の年15.50円を予定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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