アイシン Research Memo(7):製品戦略ではボデー、ブレーキにも注力
(3) 主要商材の展開と見通し
1) AT(オートマチックトランスミッション)
世界的にICE車全体は減少するものの、インド等の新興国において依然として強い需要があることから、シェアアップを図ることで市場対比では穏やかな減衰になると予想している。その一方で、市場内での競争は減っているため残存者利益があり、同社も既存設備を有効活用できることからROICは向上する見込みである。
2)PHEV/HEVの拡販
スモールからラージまで幅広い製品ラインアップを揃えていることを強みとして、世界的に増加するPHEV/HEV需要を獲得していく。
3) eAxle ラインアップと拡販戦略(BEV商材)
BEV向けの重要かつ主力部品であるeAxleでは、既に第2世代製品が投入されているが、短中期戦略ではスモール向けからラージプレミアム向けまでフルラインアップ化で多様化する顧客ニーズに応えていく。その先の中長期戦略では、BEVの本格拡大期と予想される2030年以降を見据えて、世界No.1製品(第3世代)の開発を加速する。具体的には、革新構造による圧倒的な高効率&小型化を実現するほか、小型化/パッケージ技術を活用した機能統合電動ユニット(Xin1)を開発・拡販していく。
現在のeAxleには基本要素である「減速機(ギア)」「モーター」「インバーター」が組み込まれている。同社が開発したXin1では、これら基本要素に加えて統合ECU、熱マネジメントデバイスなどを組み込んだうえで減速比を2倍にし、モーターを小径化・高回転化しつつも、最適設計技術・新生産技術・制御技術により体格1/2化を実現している。この結果、占有スペース60%減、主要部品点数30%減、質量40%減となり、圧倒的な競争力となっている。
4) 電池骨格・TEKIZAIボデー
同社は現在でも、衝突設計・熱マネジメント技術力、アルミダイキャスト等の素形材料技術力を生かして各種のボデー部品(バッテリークロス、シートクロス、ロッカーEA、底面ヒートシンク、側面ヒートシンク等)を製造している。加えて近年では、BEVの性能向上を目指して「TEKIZAIボデー(分割キャストボデー)」や「電池骨格」を開発・提案している。
TEKIZAIボデーとは、アルミダイキャストやアルミ押出し技術を活用し、それまで一体構造であったボデーを分割することで、既存設備を有効に活用でき、追加投資の抑制が可能である。加えて、ユーザーにおいても、一体構造ボデーと比べて車両修理費の低減といったメリットが見込まれる。また電池骨格は、電池を衝突や外力から保護するだけでなく、温調管理による電質改善及び電池性能劣化の抑制を可能にしている。既にこれらの製品については試作品において実車評価を実施中で、複数の自動車メーカーと協議を行っている。
5) ブレーキ
同社では、ブレーキも今後の成長分野と位置付けている。市場環境としては、電動車の拡大に伴い回生協調ブレーキの需要が増加し、アセアンやインドなど新興国では電動パーキングブレーキ(EPB)搭載車が拡大する見込みだ。このような市場見通しに対して同社では、回生協調ブレーキでは電費に貢献する前/後輪独立制御やボリューム領域向けの普及版まで全セグメントで競争力のある製品を揃えている。またキャリパ※とEPBでは、顧客で摺合わせ不要なキャリパ/MOCのパッドセットを提供している。今後は、新興国向けキャリパ・EPBの増加に加えて新型回生協調ブレーキ(第8世代回生協調ブレーキ)の投入により収益性を向上させる計画だ。
※ ディスクブレーキにおいて、ローターを挟んで車両を減速・停止させる部品。油圧でピストンを動かし、ブレーキパッドを押し付ける。
地域戦略では特に北米とインドに注力
3. 「地域軸」の概要
(1) 地域別戦略
同社は既に世界各地に拠点を置いていることから、今後の戦略は地域拡大ではなく、各地域で異なる需要に対応した個別戦略を押し進める。特に北米とインドに重点を置く方針だ。
1) 北米
北米では、環境規制の見直しなどを背景に、PHEV/HEVの需要拡大が見込まれている。同社は現在、北米向け電動ユニットを米国内3拠点で生産しており、今後の需要増加に対応するため、現地生産を一段と拡大していく方針である。関税影響を抑制するとともに、競争優位性を確立し、収益基盤の強化を図る。
2) インド
インドでは、経済成長及び自動車市場の拡大が期待されるが、電動ユニットの成長以上に2ペダル需要(AT需要)が急増すると予想される。これに合わせて同社では、AT/CVTの現地生産化を強力に推進する方針で、既存工場の拡張(インド・ハリヤナ州ロータク(AISIN AUTOMOTIVE HARYANA PRIVATE LIMITED敷地内))と新工場(インド・マハラシュトラ州サンバジナガール)設立のために約320億円を投資する。またインドのブレーキトップメーカーであるBrakes India Private Limitedと合弁会社を設立し、ESC(横滑り防止装置)をはじめとした制御ブレーキ製品を現地で生産する予定だ。
3) ASEAN
今後、PHEV/BEVの需要が増加すると予想されることから、電動化対応を積極的に推進しつつコスト競争力を強化する。
4) 欧州
欧州では、2030年以降に本格拡大が見込まれるBEV向けに、BEV商材を現地生産する方向へ事業シフトする。既に欧州発のパワートレインユニット現地生産工場としてAISIN EUROPE MANUFACTURING CZECH s.r.o.が稼働を開始した。また長期的な戦略パートナーシップ構築の一歩として、BMWが設計するe-axle※の受託生産に関して協業していくことに合意している。
※ 同社顧客向け名称を使用。
5) 中国
今後、電動ユニットの比率は上がると予想しており、現地企業との協業で市場特性に合わせた製品を開発・投入する。これにより、収益性を改善する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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