ドリーム・アーツ Research Memo(11):SmartDBによる市民開発の認知向上と顧客基盤拡充を目指す(2)
2. 成長戦略とCSF(Critical Success Factor:重要成功要因)
この計画は、ドリーム・アーツ<4811>がこれまで掲げてきた「デジタルの民主化」を基本戦略とする。今回、「デジタルの民主化」を「DX内製化が経営課題となるなか、業務部門がDXによる課題解決と価値創出に主体的に取り組み、その改善と価値の増幅を自律的かつ継続的に主導する状態」と定義した。すなわち、「業務部門が自部門DXの投資対効果に責任を持つ」「業務部門が業務要件の定義と仕様決定を主導する」「業務部門が『市民開発』により、実装プロセスに能動的・主体的に関与する」ことが成立要件となる。「デジタルの民主化」なくしてDXは成立しない、ということを「NOデジ民 NO DX!」というキャッチフレーズで表現し、ノーコードツールである「SmartDB」が、現場の担当者(「市民開発者」)が自ら能動的・主体的にDXを進めることができるプラットフォームであることを引き続き訴求していく。
基本戦略の推進に当たっては、5つのCSFがカギを握ると考えている。1点目は、MCSA(Mission Critical System Aid)領域での「SmartDB」の活用促進だ。複数の事案が既に動いて稼働フェーズまで至ってきており、今後具体的な事例発表される旨が2026年2月に開催された決算説明会でも言及されており、進捗は順調なようだ。2点目は、日本企業の海外拠点のデジタル化を支援する構想「グローバル・コネクト」である。機能・オプション群を組み合わせ、グローバル共通プラットフォームでの業務遂行による海外DXを進め、国内本社と海外拠点との連携強化を実現している。実際に海外で「SmartDB」を利用している企業のうち、具体名を挙げられるところだけでもアシックス、日本通運を擁するNXグループなどのグローバル大手企業が既に利用している。日本本社と海外拠点の業務プロセスの統一や標準化をノーコードで実現するため、グローバル展開する大企業での活用が「SmartDB」を拡販していくためのカギとなる。具体的には、日・英・中に加え、順次10言語以上に対応する「マルチLANGUAGE」、申請書など「SmartDB」のフォームに入力されたテキストを自動翻訳する「AI翻訳ロボット」、GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)やCCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)など各国の法対応に向けた規約同意を取集する「規約確認機能」、国内外を問わずユーザーのアクセス経路に応じたデータアクセス権限を規制する「マルチGATEセキュリティ」、24時間365日無停止のサービス提供を行う「無停止運用」の機能・オプション群を順次リリースしていく。
3点目は、2025年6月に発表した大企業におけるAI活用の新たな独自構想「DAPA」だ。急速に進展する生成AIを同社製品に実装し、大企業の業務プロセス改革に活用していく考え方と方向性を示した。第1弾として、業務フローにAIを統合し、入力内容のチェックやドラフト案の生成などを通じて組織の意思決定を支援していく。現在パイロット版で稼働しており、2026年4月から正式にサービス提供する予定だ。「AIエージェントへの過度な期待に?」というキーフレーズに示されるように、AIエージェントは驚異的な進化を遂げてはいるものの、個人事業主や中小零細企業とは異なり、大企業での実務という点において必要な「信頼」や「権限管理」を自律判断でクリアできるわけではないのが現実である。そこで、実務/実用/実践的にAIの活用を行う、つまり意思決定プロセスの中に溶け込ませる(=人間とAIの協働)ことが、核となるコンセプトである。また、出力の信頼性や安定性を高めるための構造である「AIプロンプトデータベース」もDAPAの構想のなかで欠かせない。プロンプトスキルで相当な出力乖離が生まれてしまう状況を未然に防止すべく、プロンプトの専門家が精査し、研ぎ澄ましきり進化させたプロンプトをデータベース化して、それらを必要に応じて自動的に各員が利用するような形での設計だ。また、2026年10月頃にはデータのベクトル化(ベクターレイヤー)によって、AI-readyな形にさらに強化することも予定し、2027年頃にはオントロジーレイヤーをさらに追加する構想も明かされた。これにより、大企業の現場部門とIT部門の協創に不可欠な立ち位置の最終確立を目指す。
4点目は、PLG(Product-led Growth)であり、「SmartDB」を主な成長エンジンとして、顧客獲得・エンゲージメント・拡張(アップセル)を推進していくことであり、「SmartDB」が持つスモールスタート可能な価格設計、利用拡大に応じた段階的ライセンスモデル、柔軟なオプション課金などを維持・向上させる必要がある。「SmartDB」にはユーザー追加、バインダ(データベース)追加以外にも業務の複雑性に応じた課金オプションが用意されており、セキュリティオプション、タイムスタンプ、データ一括アップロード、業務ダッシュボード、検証環境などの多様な製品オプションをラインナップしている。2025年7月には「SmartDB」でマイナンバーカードによる本人確認への対応を開始した。マイナンバーカードを用いた社外パートナーとの連携を業務プロセスに組み込むことで、分断されていた業務を統合し、安全かつ効率的な外部連携を実現する。また、他社SaaSとのAPI連携モジュールも投入しており、これらのオプションによってアップセル、ARPAの向上を図る。足元では、50万名を超える社外利用者(取引先など)とのアカウント共用を実現したほか、それに対応して組織ごとのアカウント一括管理機能を強化するなど、需要に即した拡張が進んでいる。なお、他社SaaSとの連携としては「Microsoft 365」「Amazon Business」「Adobe Sign」「クラウドサイン」など多数ある。5点目は、EC2(External Capability & Capacity)だ。「デジタルの民主化」に必要な推進体制・支援体制を強化するため、社外リソース(ユーザー企業内の資格認定者、戦略パートナー)を拡充することがポイントとなる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 若杉 孝)
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