アンジェス Research Memo(7):EmendoBio関連の費用減で2025年12月期の損失額は大幅縮小
1. 2025年12月期の業績概要
2025年12月期の事業収益は874百万円(前期比230百万円増)、営業損失は5,145百万円(同3,964百万円減)、経常損失は5,288百万円(同2,249百万円減)、親会社株主に帰属する当期純損失は5,123百万円(同23,005百万円減)となった。
事業収益は、前期にAnoccaから受領した契約一時金等による研究開発事業収益が59百万円減少したほか、「コラテジェン」の売上11百万円がなくなったものの、「ゾキンヴィ」の売上が同58百万円増加の302百万円、希少遺伝性疾患に関する拡大新生児スクリーニング検査の手数料収入が同242百万円増加の554百万円となり増収要因となった。
売上原価は前期比157百万円増加の553百万円となった。主に「ゾキンヴィ」の商品仕入原価が65百万円、スクリーニング検査手数料収入の増加に伴う売上原価が100百万円それぞれ増加した。なお、「ゾキンヴィ」の仕入原価が増収額よりも増加したのは、2026年以降の売上増に対応するため第4四半期に仕入高を増やしたことが要因だ。仕入については円建て決済のため、為替変動の影響を受けない。
研究開発費は前期比230百万円減少の3,553百万円となった。HGF遺伝子治療用製品の米国における開発費用及び申請準備に関わる費用の増加により、外注費が325百万円増加した一方で、前期に計上した使用期限切れによる在庫廃棄損や「コラテジェン」の在庫評価損がなくなったことにより研究用材料費が526百万円減少した。販管費は3,661百万円減少の1,912百万円となった。前期末にEmendoBioに関わるのれんを一括で減損処理したことに伴い、のれん償却額3,322百万円がなくなったほか、EmendoBioの人員減少に伴い人件費関連が201百万円減少した。また、EmendoBioにおける弁護士やコンサルタント等への報酬減少により支払手数料も140百万円減少した。
営業外収支は前期比1,714百万円悪化した。EmendoBioへのUSドル建て貸付金(約1億USドル)の期末評価替え※に伴い、為替差損220百万円(前期は為替差益1,591百万円)を計上したことが主因だ。また、前期に特別損失として計上したEmendoBioに関わるのれん及び使用権資産の減損損失20,048百万円がなくなったことが損失額の大幅縮小要因となった。
※ 2024年12月末の為替レート157円/USドルに対して2025年12月末は156円/USドル。
HGF遺伝子治療用製品の上市に向けた先行費用計上で2026年12月期は損失拡大の見込み
2. 2026年12月期の業績見通し
2026年12月期の事業収益は1,330百万円(前期比456百万円増)、営業損失は10,230百万円(同5,085百万円増)、経常損失は10,240百万円(同4,952百万円増)、親会社株主に帰属する当期純損失は10,250百万円(同5,127百万円増)を計画している。
事業収益は、「ゾキンヴィ」の売上が投与患者数の増加により前期比1.5倍増となるほか、Anoccaの開発パイプラインが臨床試験入りすることによるマイルストーン収入の計上が主な増収要因となる。拡大新生児スクリーニング検査の手数料収入については、能力面の制約により微増にとどまる見通しである。
一方、費用については販管費が前期並みの水準となるものの、HGF遺伝子治療用製品の原薬製造費用や米国での申請準備費用を中心に研究開発費が55億円程度増加する見込みであり、損失拡大要因となる。ただ、これらの費用は将来の収益獲得のための先行投資と位置付けられ、前向きな費用であると捉えられる。HGF遺伝子治療用製品に関するライセンス契約一時金は計画に織り込んでおらず、仮に契約が締結された場合には相応の上方修正が期待できることになる。
私募債の発行により安定した資金調達を可能とし、買収防衛策も導入
3. 財務状況について
2025年12月期末の財務状況は、資産合計が前期末比737百万円増加の5,405百万円となった。流動資産では、第三者割当による新株予約権の行使を進めたことにより、現金及び預金が174百万円増加の1,882百万円となったほか、HGF遺伝子治療用製品の原薬購入により原材料及び貯蔵品が308百万円増加し、原薬の製造委託費用を前払いしたことにより前渡金が292百万円増加した。固定資産は、有形固定資産が36百万円、投資有価証券が23百万円、繰延税金資産が61百万円それぞれ減少した。
負債合計は前期末比182百万円減少の2,329百万円となった。棚卸資産の購入により買掛金が235百万円増加した一方で、EmendoBioの社屋に関するリース契約の一部解約によりリース債務が218百万円減少したほか、未払法人税等が98百万円、未払金が73百万円減少した。純資産合計は同919百万円増加の3,076百万円となった。新株予約権の行使により、資本金が2,972百万円、資本剰余金が2,973百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が5,123百万円減少した。
同社の収益は開発ステージにあるため、HGF遺伝子治療用製品が上市するまでは損失が続く可能性が高い。このため、当面の事業活動資金は株式市場から調達する方針だ。2025年11月には第三者割当による第46回新株予約権を発行した。株式数に換算すると96,466千株で下限行使価額は40円に設定されている。当初行使価格の72円ですべて行使できたとすると調達額は6,921百万円となり、主にHGF遺伝子治療用製品の米国での申請準備を含めたグローバルでの製品価値最大化のための研究開発費用に充当する予定であるが、株価水準が低迷していることもあり行使が順調に進んでいるとは言えない状況にある。
2026年はHGF遺伝子治療用製品の上市に向けた先行費用が膨らむこともあり、安定した資金調達を行うべく最大2,737百万円の私募債を複数に分けて発行するスキームを発表した(割当先は第46回新株予約権と同じCantor Fitzgerald Europe)。2026年2月に初回の社債を発行し、700百万円の資金調達を行っている。次回以降は、直前に発行された社債がすべて償還された日の5営業日後を払込期日としている。私募債の償還資金は第46回新株予約権の行使によって充当する。このため、同新株予約権の下限行使価額に対して株価が120%を下回った場合は新規の社債発行ができず、その後5営業日連続で120%以上となった場合のみ再開できる条件となっている。2026年内に大型のライセンス契約が決まれば資金負担の大幅な軽減が期待できるが、決まらない場合には株式市場から資金調達を継続していく必要があるため、今後のライセンス交渉の動向が注目される。
なお、同社はHGF遺伝子治療用製品が上市した場合の市場価値に対して現状の企業価値(時価総額で200億円程度)が低すぎると考えており、今後買収リスクが上昇することを想定し買収防衛策(新株予約権の無償割当)を2026年2月に導入した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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