ザ・パック:紙袋国内トップの総合パッケージ企業、意欲的な中計開示もPBR0.9倍台かつ配当利回り3%超
開示セグメントは、紙加工品事業(前期売上高構成比72.1%)、化成品事業(同)13.3%、その他事業(同14.6%)の3つで開示されている。ただ、紙加工品事業は、紙袋(同31.8%)・紙器(同25.5%)・段ボール(同12.8%)・印刷(同2.0%)に分かれている。また、業種別売上高構成比では、食品29.7%・アパレル17.0%・百貨店4.8%・スーパー/ドラッグストア3.8%・コンビニ1.3%・医薬品/化粧品4.7%・EC(通販)4.0%・雑貨2.1%・家電/住設2.9%・ライフケア3.0%・自動車0.3%・その他26.3%となっている。
同社の強みは、第一に、1.5万社に及ぶ顧客基盤と、その多くが直接取引である点にある。顧客の声を直接拾いやすく、価格改定局面でも単純な値上げ要請ではなく、「こういう仕様ならコストを抑えられる」といった提案を通じて、顧客とウィンウィンの関係を築きやすい。国内4工場での生産体制、グループ会社、物流拠点との連携により、パッケージに関する相談から安定的な供給、運用までトータルに提案することが可能となっている。第二に、メーカーでありながら商社的な調達機能も併せ持つ点である。外部調達比率も一定程度あり、自社設備に縛られず「作れないから受けない」ではなく、何とか調達して提供する柔軟性を持つ。第三に、複合販売によって案件全体で利幅を確保できる点だ。商材ごとに利益率の濃淡はあっても、1人の営業が袋、箱、フィルムなどを横断的に提案することで、顧客単位ではトータルで採算を取りやすい構造となっている。日本全国に支社・営業所をもち、営業約250名/クリエイター約75名が在籍している。
足元の業績について、2025年12月期の売上高1,031.25億円(前期比1.6%増)、営業利益72.07億円(同10.0%減)で着地した。紙加工品事業が牽引したが、特に紙器と段ボールの販売が堅調で、紙加工品全体を押し上げた。紙加工品の販売数量および販売単価は上昇し増収に寄与、価格適正化および付加価値提案の推進により紙加工品の平均販売単価が上昇した。一方、事業基盤強化を目的とした製造設備・基幹システム・人材への先行投資を実施し、減益着地となったが、これは将来への成長に向けての投資となるためネガティブな影響は限定的となる。そのほか、株式会社光パックス石川を子会社化し、紙器のラインアップを拡充した。
2026年12月期の会社計画は、売上高1,060億円(前期比2.8%増)、営業利益75億円(同4.1%増)を見込んでいる。紙加工品事業を中心に、商品ラインアップ拡充と複合提案の効果により新市場開拓・シェアを伸ばして販売数量は増加を見込み、原材料価格上昇圧力はあるものの、価格の適正化を推進して前期までの投資効果により生産性が向上していく想定となっている。
市場環境では、緩やかな景気回復が続く中で、インバウンド需要が国内消費を押し上げる効果は限定的となっている。食料品などの慢性的な価格上昇により、個人消費の回復は力強さを欠く。ただ、化成品では持ち帰り用ポリ袋のように環境対応の逆風を受ける領域がある一方、食品用フィルムの軟包装には伸びしろがある。特に同社は紙袋が強く、ポリ袋から紙袋への置き換え需要を取り込めており、単価面でも紙の方が高い。その他事業でも、不織布バッグやレジ回り用品などを扱っており、包装周辺まで含めて提案の幅を広げている。つまり、同社は幅広い製品を取り扱い顧客数も膨大、単一商材依存となっていないため、景気体制も強いディフェンシブ性の側面が強く、幅広い収益機会を取り込む構造になっている。
今後の成長見通しについては、中期経営計画を開示している。2030年に売上高1,200億円、営業利益100億円、ROE8.0%以上維持10%を目指す方針を掲げている。直販メーカーとしての強みを最大化し、顧客の期待を越える価値を提供する方針は変わっておらず、成長ドライバーは複合販売の強化と紙器の拡大となる。中国と米国の子会社を活用した海外展開も進める考えで、国内顧客の海外ニーズに応じて現地調達品も組み合わせながら対応していく方向性だ。年平均3%程度の成長が必要でハードルは低くないものの、既存顧客への深耕余地を考えると、十分射程圏内ともみられる。また、顧客業種の広がりも注目点である。食品分野やEC分野、菓子やコンビニ、レジスナック、ファーストフード、BtoB用途などまだ広げる余地のある領域を丁寧に開拓していく。食品分野は衛生環境や品質要件が厳しく、対応できる企業は限られるため、参入障壁が一定程度存在する。食品包装は今後も安定的な需要が見込まれるほか、東京・大阪の東西拠点を活かせる点も同社の競争力に繋がっている。既存顧客がじわじわ伸びる一方、毎年新規顧客の開拓も続けており、成熟市場の中でも地道な拡大余地を確保している。
株主還元については、同社は配当性向40%、総還元性向70%を掲げており、株主還元の意識も高まっている。一方で、現状は工場建て替えや設備更新などを進める「投資のフェーズ」にある点も重要だ。償却負担が高まる局面ではあるが、次の成長の足場固めとなる。現状PBR0.9倍台かつ配当利回り3%超えとなっているが、PBR1倍割れの脱却や資本効率改善も意識しており、成長投資と還元の両立を図る局面に入っているといえよう。
総じて、ザ・パックは紙袋国内トップという看板以上に、袋・箱・段ボール・フィルムを横断して提案できる複合販売力にこそ本質的な強みがある企業である。成熟市場に属しながらも、1.5万社の顧客基盤、多くの直接取引、仕様提案を伴う価格転嫁力、食品分野を中心とした深耕余地を背景に、着実な成長を狙えるポジションにある。足元は先行投資負担が利益面の重しとなる局面だが、これを経て複合販売の深耕と紙器拡大が進めば、同社は単なる包装材メーカーではなく、顧客の業務課題を解決する「包装インフラ企業」として評価を切り上げていく余地がありそうだ。
<FA>
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