TDSE Research Memo(3):強いニーズを背景にAIエージェント「Dify」が伸長し、業績に寄与
2. 事業内容
(1) コンサルティング事業
コンサルティング事業では、データドリブン経営を目指す企業に、分析ノウハウを軸とした統合型ソリューションを提供している。企業がDXを進める際、プロセスごとに専門特化した業者が担うことが多いが、同社は、データ活用のテーマ抽出からデータ分析・AIモデル構築、システム構築・実装、保守・チューニング、教育まで、顧客企業が進める事業戦略に寄り添った一気通貫したサービスを提供している。現状、コンサルティング事業は成長鈍化しているが、生成AIの定着によって分析から価値創造へと顧客のデータに対するニーズが変化するなか、データサイエンティストの提供する価値・役割を時代に即して変えていく必要が生じていると思われる。
(2) プロダクト事業
プロダクト事業では、自社製AI製品「TDSEシリーズ」や他社製AI製品、業務特有のAIモジュール※を顧客企業に提供しており、サービス利用料や運用・保守料を受領することで収益が積み重なるストック型収益構造になっている。取扱製品は、クラウドベースのハイエンドなソーシャルリスニングツール「Quid Monitor」など、同社設立直後の2014年に代理店契約を締結した米国Quid, Inc.の製品が中心である。強みは、XやFacebook、Instagram、YouTubeなど正式に使用契約した豊富なソーシャルメディアデータを、圧倒的な処理スピードで様々な角度からリアルタイムに分析できる点にある。また、50ヶ国以上の言語に対応しているうえ、標準装備のAPI(Application Programming Interface)によって簡単に他のシステムと連携できる点、さらに、キーワードだけでなく人(アカウント)に着目した分析によって、従来のソーシャルリスニングツールでは難しかったビジネスへの関連付けが容易な点も強みである。
※ 異常検知や物体認識などのAIモデル(未学習モデルを含む)で、業務システムやアプリケーションなどに組み込むAIシステムの根幹。同社は「scorobo」というブランドでAIモジュールを販売していたが、ブランディング戦略のなかで「scorobo」を収束し、「TDSE」を冠した自社製品へとシフトしている。
Quid製品は独自の生成AI機能を搭載するなどアップグレードを続けてきたため、足元で優位性が一気に高まっている。このため、これまでに累計300社を超える企業に導入された実績がある。「Quid Monitor」のほか、競合企業のSNSアカウントの分析ができる「Quid Compete」やテキストデータからインサイトを導く「Quid Discover」などのラインナップがある。さらに、2024年5月に自社開発の「TDSE KAIZODE」がラインナップに加わった。「TDSE KAIZODE」は、国内ローカルニーズにも適応できる多様な分析機能や、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)を組み合わせた最新ロジック機能に特徴がある。
(3) AIエージェント事業
同社のなかで最も高い伸びを示している事業で、ドイツのベンチャー企業Cognigy GmbHの対話型AIプラットフォーム「Cognigy」や、同社が独自開発した国内初の生成AI「QAジェネレーター」、米国の生成AIアプリ開発企業LangGenius,Inc.による生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify」といった製品を扱っている。「Cognigy」は、最先端の自然言語処理と自然言語理解技術を強みとしており、20以上のチャネルと30以上の業務システムにつなげるコネクターを装備し、短期間で拡張性の高い対話型AIを開発することができる。多言語対応のバーチャルエージェントは100ヶ国以上の言語をサポートし、OpenAI LPの「ChatGPT」や「QAジェネレーター」などの生成AIと連携、自然言語処理の精度向上に必要な膨大な学習用QAを自動生成することができる。ビジネスユーザーが簡単に開発できるローコード仕様になっているため、欧米では自動車メーカーや銀行、航空会社など500社以上の有力企業が導入している。一方「QAジェネレーター」は、規程やマニュアルなどのドキュメントから膨大な組み合わせのFAQを独自AIで自動生成することができる。現在、LLMの回答精度向上に向けたRAG(Retrieval-Augmented Generation)※に対応するなど、機能アップに向けて積極的に開発を進めている。
※ 検索拡張生成のこと。LLMに検索技術を組み合わせて回答精度を向上させること。
「Dify」については、同社が2024年にLangGeniusとの間で国内初のパートナーシップを組み、取り扱いを開始した。「Dify」は多様なLLMに接続が可能で、RAGによるナレッジ機能や外部ツールとのAPI連携機能を有している。強みは、「Cognigy」がルールどおりに答えを出すことに強みを発揮するのに対し、「Dify」は答えをクリエイトできる点にあるため、コールセンターのあり方を変えるかもしれないとさえ言われている。プライベートクラウドを前提に開発された点、導入コストが安くAI専門家でないビジネスパーソンでも扱える点、ジーデップ・アドバンス<5885>とともに提供するNVIDIAの最新統合AIプラットフォームを利用した場合は格段にレスポンススピードが速い点※なども強みである。特にプライベートクラウドである点は大きな強みで、主流の「ChatGPT」をはじめ、「Microsoft Azure」やGoogle、Amazonといったオープン型の生成AIを利用する場合は情報漏洩のリスクを覚悟しなければならないが、「Dify」は構築次第でそのリスクを大幅に低減できる。このため、機密情報を扱う製造業や金融機関からの注目を集めている。
※ AIとビジュアライゼーションのソリューションカンパニーであるジーデップ・アドバンスと協業し、「Dify」を用いた生成AIの開発を「NVIDIA DGXTM B200」のプライベートクラウド上で利用するサービス「GX CLOUD × Dify」の提供を2025年6月に開始した。
「Dify」を扱っている企業は国内に5~6社あるが、同社の優位性は、「Dify」の商用ライセンスを持っている点(同社以外に2社が保有)、AIの知見がありLLMを理解している点、コンサルティング(需要予測や与信などを分析するAI)と組み合わせることができる点、大手企業に対して販売ルートを持っている点、積極的にマーケティングを行っている点にある。このため、LangGeniusからの信頼が厚く、商用ライセンス代理店第1号となった。「Dify」は、生成AIによる価値創造ニーズが非常に強いことから、コンサルティング事業で抱えている技術要員をAIエージェント事業にシフトすることができれば、中長期的に同社の成長を大きく押し上げる製品に育っていくこと可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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