アイビーシー Research Memo(3):一気通貫で広範な機能を提供し、顧客のトータルコスト削減に貢献
3. アイビーシー<3920>の「System Answer G3」の概要・特色
近年、企業のITシステムは、マルチベンダー化やクラウド技術の採用により、常に増加・変化し続けている。これに伴い、ITシステムの重要性が高まる一方で、従来の監視手法では対応できない部分も多く生じている。このような状況に対応するため、ITシステム全体を常時監視し、傾向を把握したうえで予兆を検知する「System Answer G3」を開発した。
(1) 製品概要
コーポレートミッションである「IT障害をゼロにする」を実現するため、同製品は従来のネットワークや機器の性能監視(データ流量、容量など)にとどまらず、収集データに基づき障害予防につなげる分析をコンセプトとする。これらを達成するため、「検知から予防へ」「安定稼働を促進」「カスタマーサクセス」という3つのポイントに焦点を当てた機能を実装している。
a) 「検知から予防へ」
一般的な監視システムは、異常が発生した際にそれを検知することが主な役割とされるケースが多い。これに対し、同社の「System Answer G3」は異常の検知にとどまらず、トラブルを未然に防ぐことを目的に設計している。
同製品は、監視によって取得したデータを基に自動分析を行う将来予測機能や、分析精度を維持するため、データを単純に平均化せずに保持する仕組みを備えている。これにより、システムの劣化傾向や負荷の変化を早期に把握し、障害発生前の対応を支援することが可能となる。これらの機能は、企業におけるITサービスの重要性がより一層高まる現在において、サービス品質の向上には必要な機能である。同製品のこうした予防型のアプローチは、ITサービスマネジメントの高度化に寄与するものとされる。
i) キャパシティ予知機能
将来予測機能の1つとして、キャパシティ予知機能を搭載している。これは、ディスク容量やメモリー使用率などの傾向を自動的に分析・予測し、将来的にリソース使用量がしきい値を超過する時期を予測してアラート通知を行う機能である。リソース使用状況が限界に達する前にアラートを受信できるため、計画的な増強や設定変更などの選考対応が可能となり、余裕をもってシステム障害を回避する対策を講じることが可能となる。
ii) 昨対比較機能
将来予測機能の1つとして、昨対比較機能を備える。これは、昨年の月別実績値と今年の経過月の昨対平均倍率を乗じることにより、将来月の予測値を算出する機能である。この予測値がしきい値を超過した場合にアラートを受信できるため、お盆や年末年始といった季節変動の大きい月におけるリソース使用量が想定上限を超過する可能性を事前に把握することができる。
b) 「安定稼働を促進」
万一の障害発生時における問題の切り分けや原因特定の可否は、システム運用担当者の経験やナレッジに大きく依存する傾向がある。「System Answer G3」は、こうした切り分け業務の工数を削減する機能を提供している。
「ダイナミックブックマーク(相関分析)機能」では、アラートを検知した機器単体(監視項目)の状況分析に加えて、監視対象機器全体から相関性を持つ機器(監視項目)を自動抽出し、潜在的な障害リスクの把握と早期対策を実現する。また、「監視設定の自動追従機能」も搭載しており、運用フェーズでの設定変更があっても監視の登録漏れを防止し、データ未取得の事態を回避することが可能となる。
c) 「カスタマーサクセス」
同社は、純国産製品の強みを生かし、顧客の要望やニーズを反映させながら、機能エンハンスを継続している。運用現場で「本当に役立つ」製品の開発を追求する姿勢から、監視機能に加え、製品活用を積極的に支援する「ハンズオントレーニングサービス」や、月次での運用報告を自動で提供する「性能評価レポートサービス」といった利活用支援サービスが充実している点も、同社の大きな特色である。
(2) 課題解決事例
「System Answer G3」は、顧客が抱える様々なIT運用上の問題に対して解決策を提供する。たとえば、機器ごとの管理ツール分散の課題に対してはマルチベンダー対応による一元管理を可能にする。また、過去データの活用困難に対しては、収集データを5年間平均化せず非圧縮で保存することで詳細な分析に寄与する。さらに、OSSツールの属人化という問題にはわかりやすい日本語UIやトレーニングサービスの提供を通じて製品活用をサポートする。設定ミスによる把握漏れの懸念は登録・修正の自動化により稼働状況の的確な把握を支援し、サイレント障害や急激なシステム変動の予兆検知は将来予測機能により分析を容易にする。加えて、運用報告の工数は性能評価レポートサービスの活用によって削減に導くことが可能である。
(3) ビジネスモデル
基本的に主力の「System Answer G3」はライセンス販売で様々な環境に対応できるラインナップとなっている。価格は、「監視を行う項目数」「契約期間」「オプション」によって決められるが、通常は年間契約となっている。したがって、1ライセンス(契約)当たりの価格は、監視項目数や契約条件により異なるものの、数百万円台から数千万円台がボリュームゾーンと考えられる。通常は、一度契約した顧客は毎年更新する(2025年9月期の「System Answerシリーズ」の更新率は96%)。したがって、この事業モデルは「ストック型」と言える。一方で、保守以外のサービスの提供、その他物販等はその都度の契約(販売)のケースが多く、これらは「フロー型」と言える。同社にとっては、「ストック型」の売上が増加することが収益基盤の安定につながる。2025年9月期のストック型の売上高構成比は64.1%、フロー型は35.9%である。
(4) 顧客ポートフォリオ
同社の販売形態は、約40%が直販、残り60%がパートナー企業販売(主に大手ITベンダー経由)となっている。導入実績は累計で約1,000社に達しており、顧客ポートフォリオは特定の業種や企業に偏ることなく多岐にわたる。主な導入先は、製造、金融、情報・通信、公共分野(自治体・教育機関)などで、社会インフラを支える大手企業や公共・教育機関を中心としている。これまでに、製造業や開発・運用基盤を有する大手企業のほか、金融・流通関連企業、証券取引に関わるインフラ関連機関、地方自治体や教育機関などへの導入実績を有しており、同社製品の信頼性及び多様な利用環境への対応力の高さが実利用ベースで確認されている。
4. 競争優位性と競合環境
主力製品「System Answer G3」は、メーカー133社、監視項目5,384種類から、必要な情報を自動で判断し設定を行う。さらに、同社製品及びサービスは、監視・データ収集・分析・事前予知・レポーティングといった機能を一気通貫で提供できる点を特徴とする。複数ツールを組み合わせる必要がないため、運用負荷やシステム連携コストの削減につながり、結果としてトータルコストの抑制が可能となる。監視関連ソフトウェアメーカーとは機能面で部分的に競合するものの、同社は、広範な監視対象に対応しつつ、各工程を一体で提供できる点に競争優位性があると認識している。一方で、実質的な競合としては、同社製品を導入せずに「社内IT部門が監視業務を内製化するケース」や、「大手ITベンダーに対し、他サービスと組み合わせた形でシステム運用全体を委託するケース」が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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