コーエーテクモホールディングス:「信長の野望」「三國志」などの有名タイトル持つゲームソフト会社
40年以上にわたるゲーム開発の歴史を有し、「信長の野望」「三國志」「真・三國無双」シリーズといった東アジア史観を題材としたIPを長期にわたり育成してきた。近年では「仁王」「Wo Long: Fallen Dynasty」などの高難度アクションゲームを通じて、欧米市場での認知度向上も進んでおり、国内外で、多様なIPを用いて複数の展開手法で収益を得るIP戦略が特徴である。また、同業の多くの企業では、将来の売上が見込まれる開発費を資産として計上し、リリース後の一定期間で償却する手法を採用しているが、同社では資産計上は行わず、開発費はその期の費用として発生ベースで処理している。収益構造の透明性を高め、財務の保守性と予見性を強化することを目的としている。そのほか、同社は余剰資金の運用を積極的に行っている。継続的に運用益を上げることにより、ヒット予測を立てにくく、変動が大きいゲーム事業を主軸とする会社の経営を下支えしてきた。運用方針としては、「安定した継続性」「機動性」「健全性」を重視しつつ、金融市場の変動にも適切に対応できる柔軟な運用体制を構築している。運用ポートフォリオは株式40%・債券30%・その他30%、国内20%・海外80%の構成(2024年度末時点)となる。
2024年度の年間ゲームソフト販売本数7,630千本、豊富なIPの数200以上、年間発売・運営開始タイトル数9タイトル。地域別ゲームソフト販売本数は、日本31%、北米26.5%、欧州15.6%、アジア26.9%。プラットフォーム別売上高は、コンソール・PC50.6%、オンライン・モバイル48.1%となっている。
競争優位の源泉として同社が挙げるのは、開発力・技術力・マネジメント力の総合力となる。他のゲームソフト企業との違いについて、「40年近くにわたり積み上げてきたIPの蓄積」と「東アジアを題材にした独自性」に加えて、単一のメガIPに依存するのではなく、複数のシリーズIPをナンバリングや派生作品として展開し、安定的にヒットを創出してきた点は、同社の事業リスクを相対的に低く抑えている。また、「ゼルダ無双」に代表されるように、他社IPとの協業を積極的に行い、IPの新たな価値を生み出している。さらに、成長した自社IPを他社へライセンス許諾することで、ロイヤリティ収入も得られるビジネスモデルも構築している。
技術面では、自社開発エンジン「KATANA ENGINE」とAI活用が、開発効率の向上に寄与している。ブランドごとに蓄積されたタイトルノウハウを横断的に活用することで、開発工程の効率化を図っており、翻訳やローカライズ、デバッグといった工程でもAIを活用。「信長の野望」などの歴史シミュレーションゲームでは、AIによって戦略や戦術を生み出すだけではなく、武将の個性をゲーム内で表現するなど、AIを積極的に活用しているようだ。
2026年3月期第2四半期業績は、売上高31,268百万円(前年同期比11.2%減)、営業利益7,964百万円(同25.2%減)で着地し、売上高、利益ともに期初予想を上回った。前期、当期ともに大きな新作の発売なし、バックカタログ中心となっている。費用面では、先行的に厚めに織り込んでいたコストが想定ほど顕在化せず、利益の上振れにつながった。通期業績予想については、売上高92,000百万円(前期比10.6%増)、営業利益31,000百万円(同3.5%減)を見込んでいる。下期には『仁王3』をはじめとした大型タイトルが控えており、新作タイトルの販売動向に左右されるため現時点では据え置き。為替前提が1ドル140円であり、1円の変動が営業利益に1億円超の影響を与える構造であることから、円安局面では業績に対して一定の追い風が見込まれる。
市場環境については、国内よりも海外、とりわけ欧米および新興国市場に成長余地が大きい。現状、同社の海外シェアには依然として余白があり、コンソール・PCを中心に拡大余地がある。モバイルについては国内を主軸とし、中国・アジアでは許諾モデルを活用する方針である。直近では任天堂による新型機(Switch 2)の発売もあり、コンソール・PC市場全体が盛り上がりを見せており、業界全体としてポジティブ材料にもなっている。
2025年度からスタートした第4次中期経営計画では、3か年累計営業利益1,000億円以上、単年度営業利益400億円規模、営業利益率30%以上を目標に掲げている。エンタテインメント事業を主軸とし、アミューズメントおよび不動産事業は安定収益源として位置づけられている。中計の重要テーマはパイプラインの数および質の成長、販売力の成長である。将来的には、世界トップ10入りを目指し、現状2,000~3,000人規模の人員を、5,000人規模へと拡大する構想が示された。ただ、世界トップ企業との差は依然として大きく、グローバルで高い認知度を持つ新規IPを創出できるかが最大の課題とされている。日本国内では強力なIPを有する一方、世界規模で数千万本を狙えるIPの育成が中長期的な焦点となる。
株主還元については、配当を軸に総配分性向50%を基本方針としており、安定的な還元を継続する姿勢が改めて示された。株主優待も導入しており、長期保有を意識した資本政策を志向している。加えて、2025年9月に実施した株式売出しにより流通株式比率が35%を超え、プライム市場の上場維持基準をクリアした。出来高も改善しており、市場からの見え方が変化している。
総じて、コーエーテクモは高収益なIPポートフォリオと安定した財務基盤を背景に、営業利益額世界ランキング17位、営業利益率38%と高収益体質のゲームソフト会社として独自のポジションを確立している。資産運用による営業外収益は、長期化するゲーム開発を下支えするための保守的かつ安定志向の運用であり、本業を補完する位置づけであることが改めて確認された。下期には『仁王3』『ぽこ あ ポケモン』をはじめとした大型タイトルが控えており、これらの販売動向とともに、開発体制拡充を通じてグローバルで通用する新規IPを創出できるかが、今後の注目点となる。
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