クオールHD Research Memo(6):製薬事業の営業利益が薬局事業と肩を並ぶ水準まで成長
2. 事業セグメント別動向
(1) 薬局事業
a) 出退店とM&Aの状況
2025年9月末の店舗数は941店舗と、前期末比7店舗減となった。自社出店(売店を除く)で4店舗、売店で2店舗を出店した一方でM&Aによる取得がなく、また収益体質の強化を目的に13店舗を退店したことが主因だ。2024年11月にKDDI<9433>との協業により出店したオンライン専門薬局「クオールどこでも薬局」(埼玉県川越市)は順調に稼働しているが、オペレーションに関する規制がまだ一部残っているため、追加出店については様子見の状況となっている。新たな取り組みとして、2025年6月にKDDIがローソン店舗内のブースで提供する次世代リモート接客プラットフォームに参画した。同ブースと「クオールどこでも薬局」をつなぐことでオンライン服薬指導を行い、新たな顧客体験を提供するとともに、都心部と地方における医療資源の偏在等の課題解決に取り組んでいる。
b) 調剤売上高の状況
薬局事業の売上高は、調剤薬局の調剤売上高と売店やECなどの商品売上高で構成される。2026年3月期中間期の売上内訳を見ると、調剤売上高が前年同期比2.8%増の80,121百万円、その他売上高が同8.3%増の6,613百万円といずれも増収となった。調剤売上高の内訳を出店期別・タイプ別で見ると、自社出店店舗のうち既存店が同6.4%増の26,371百万円、新店(売店を除く)が同11.7%減の431百万円となり、M&Aなどで取得した店舗が既存店、新店合わせて同1.2%増の53,317百万円となった。
調剤売上高を処方箋応需枚数と処方箋単価に分解すると、処方箋応需枚数は前年同期比1.3%減の8,286千枚、処方箋単価は同4.1%増の9,669円となった。これらも出店期やM&Aなどの影響を受けているため、それぞれについて以下に詳述する。
処方箋応需枚数のうち、既存店の増減率は前年同期比1.6%増と堅調に推移した。在宅・施設調剤の取り組みを推進したことが増加要因となっている。一方で、M&Aなどによる店舗の応需枚数は同2.4%減となった。猛暑の影響もあって処方期間が長期化したことが主因だ。
処方箋単価は全体で前期比4.1%増となった。このうち既存店は同4.7%増となり、M&A店舗が同3.7%増といずれも上昇した。薬剤料単価は薬価改定の影響で若干低下したものの、長期処方が増えたことで1回当たりの薬剤量が増加したことや、技術料単価の上昇が寄与した。医療DX推進体制整備加算の取得が進んだことや、後発医薬品(以下、GE医薬品)の使用割合が増加したことが主因だ。
店舗の付加価値分に相当する調剤技術料に関しては、定められた基準の達成度に応じて点数が加算される仕組みで、主に調剤基本料(応需枚数や特定医療機関への集中率などで分類)、GE医薬品調剤体制加算(GE医薬品の取扱比率で分類)、地域支援体制加算(在宅調剤など地域医療への貢献体制によって分類)がある。なかでも、GE医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算については各薬局の取り組み状況で点数が変わる差別化ポイントである。調剤報酬改定は隔年で実施され、直近では2024年6月に改定され、改定内容を受けて調剤薬局は加算点を取得するための取り組みを推進することになる。
医療DX推進体制整備加算は2024年から新たに設定されたもので、マイナンバーカード利用実績や電子処方箋応需体制等の整備状況によって加算点を取得できるものだ。2025年9月時点の1店舗当たり平均取得点数は9点と前年同月比で5点上昇した。処方箋1枚当たり技術料で換算すると50円の上昇となる。処方箋単価は前年同期比で381円上昇したが、このうち50円は医療DX推進体制整備加算の寄与となる。同様にGE医薬品調剤体制加算の2025年9月時点の1店舗当たり平均取得点数は前年同月比2.3点上昇し、地域支援体制加算も在宅調剤やかかりつけ機能の強化に取り組んだことで同2.0点円上昇し、処方箋単価の上昇に寄与した。
(2) BPO事業
BPO事業のうち、主力のCSO事業は製薬企業からのCMRの引き合いが強く、CMRの採用・育成に注力してきた。第1四半期はCMRのリソース不足により、需要に対応しきれなかったが、広告宣伝費を投下するなどして採用を強化したことで、第2四半期には派遣数も増加した。CMR数については前期末の約650名から約700名まで増加しており、同社では当面の目標として1,000名体制を目指している。CRO事業についても健康食品などの食品試験を中心に受注が伸び、増収となった。
医療系人材紹介派遣事業は、主力の薬剤師の紹介派遣拡大に向けて、前期に社員の採用を強化した効果で成約件数が増加した。人件費や広告宣伝費等も増加したが増収効果で吸収した。
(3) 製薬事業
第一三共エスファの業績は売上高で前年同期比142億円増の474億円、営業利益で同11億円増の40億円と大幅増収増益となった。2024年12月に発売した3つのAG製品の寄与によるもので、なかでも血栓塞栓症治療薬の「リバーロキサバン錠(先発品名 イグザレルト(R)錠)」及び「リバーロキサバンOD錠(先発品名 イグザレルト(R)OD錠)」は、複数のGE医薬品が発売されたなかでもAG製品としての信頼性の高さや、適応範囲が他のGE医薬品より広かったことが評価され、市場シェアで約8割と圧倒的シェアを獲得した。売上高は薬価ベースで9,640百万円と計画を上回り、そのほかの2製品※と合わせた売上高では12,684百万円と増収要因の大半を占めた。営業利益率は前年同期の8.8%から8.4%と若干低下したが、新製品の販売増に伴うプロモーションコストの増加が主因だ。一方、藤永製薬については、売上高で10億円前後、営業利益も収支均衡水準で推移した。第一三共エスファとの連携も視野に入れ、医薬品の品目数増加に向けた準備を進めている。
※ 経皮吸収鎮痛抗炎症剤「ロキソプロフェンNaテープ(先発品名 ロキソニン(R)テープ)」、免疫調整剤「ヒドロキシクロロキン硫酸塩錠(先発品名 プラケニル(R)錠)」。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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