ゼンリン:地図情報のパイオニア、社会課題解決に不可欠なオンリーワンの存在
ゼンリン<9474>は、1948年に大分県別府市で創業された地図情報のパイオニアである。福岡と東京の二本社体制で、東京証券取引所プライム及び福岡証券取引所に上場している。同社は「地図で情報を価値化する企業」をビジョンとして掲げ、住宅地図や地図情報システム、自動車向けナビデータなど多岐にわたる地理空間情報サービスを展開。全国に展開している拠点を軸に独自調査を行い、高精度・高鮮度な空間データベースを維持している。事業はプロダクト、マーケティング、公共、インフラ、モビリティの五領域に整理され、保有する膨大なデータを活用したビジネス課題や地域・社会課題の解決を支援するソリューションの提供など、DX推進への対応も強化。NTTグループとの資本業務提携などを背景に、地理空間情報サービス企業として2030年ビジョン「ZENRIN GROWTH PLAN 2030」の下、さらなる成長を目指す。
【2025年3月期は過去最高を更新】
同社の2025年3月期連結決算は、売上高64,363百万円(前期比4.9%増)と過去最高を更新した。営業利益は3,923百万円(同98.0%増)と大幅な増益を達成。経常利益は3,936百万円(同91.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,606百万円(同25.4%増)と、収益性の面でも優れた結果となった。事業別に見ると、主力のプロダクト事業はGISパッケージや住宅地図データ販売が堅調に推移し売上高は165億円となり2.1%増加した。主に大手企業向けのソリューションサービスが中心となっているIoT事業も好調で、売上高は154億円となり9.9%の増収を記録した。一方、公共ソリューション事業は大型案件の反動減により80億円となり0.7%減収、マーケティングソリューション事業も商業印刷やDMの発注減少により66億円となり、2.4%の減収となった。オートモーティブ事業は177億円となり9.5%増収と好調であり、カーナビ向けデータの需要拡大と一過性の数量調整が収益を押し上げた。全体としては、製品・サービスの価格改定効果や時流に対応した新規分野の伸長が奏功し、営業利益の改善に寄与した。増収により営業キャッシュ・フローも前期比52.6%の増加となり、財務面でも自己資本比率は67.4%と2.1ポイント向上し安定性が強化された。配当については、中間配当15円、期末配当は当初予想から5円増配の20円で年間配当は35円とし、DOEは3%超を確保している。なお、2026年3月期の連結業績予想は売上高65,500百万円(前期比1.8%増)、営業利益4,300百万円(同9.6%増)、経常利益4,400百万円(同11.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,000百万円(同15.1%増)としている。
【成長戦略は社会との共創に軸足】
同社は、新たな中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2030(ZGP2030)」(2026年3月期~2030年3月期)において、「企業共創」と「地域共創」を軸に社会課題の解決を目指すことを基本方針としている。こうした共創活動を通じて、社会に対する価値創出とともに、企業価値の向上を図ることが目標である。
計画では、5つの事業区分ごとにそれぞれの特性に応じた戦略を展開している。プロダクトソリューション事業では、住宅地図などの汎用的な地理情報や業務に必要な機能を「パッケージ」として提供し、企業のDX化や業務効率の向上を支援する。また、顧客ごとのニーズに応じて機能を選択できる「セレクション型」モデルも導入し、柔軟なサービス提供を拡げようとしている。マーケティングソリューション事業では、コンサルから販促までの流れを一括で担う体制を整え、「パッケージ」や「セレクション」形式で提供。従来の受託中心の事業から、継続的な収益を生むストック型ビジネスの伸長を図っている。
さらに、公共ソリューション事業では、自治体や官公庁との連携を通じて、行政業務のデジタル化や住民向けサービスの高度化支援に取り組む。特に防災など地域課題の解決に向けて、共創によるアプローチを強化している。インフラソリューション事業においては、業界固有の業務システムとゼンリンの地理情報を連携させることで、産業界のDX推進を支援。APIや空間データベースを活用し、業務の中に地理情報を組み込む仕組みを整えている。とりわけ、物流や不動産などのインフラを担う大企業との共創に注力するとともに、新たな顧客基盤の開拓も目指す。最後に、モビリティソリューション事業では、既存のカーナビ関連ビジネスの強化に加え、自動運転や安全運転支援のための高精度な地図データやコンテンツの提供、SDV時代への対応等、次世代モビリティ分野での競争力を一層高めていく方針である。これら5つの事業において、「パッケージ」「セレクション」「ソリューション」という提供モデルを顧客に最適な形で組み合わせ、ストック型収益への移行と共創による価値創造の最大化を目指している。
定量的なKPIとしては売上高を2025年の643億円から2030年に780億円へ、EBITDAを95億円(14.9%)から150億円(19.2%)へ、営業利益を39億円(6.1%)から80億円(10.3%)へ増加させる目標を掲げる。ROEは5.3%から2030年には10%以上を目指し、また株主への還元はDOE5%以上・5年間累計で総還元性向100%とする計画である。
同社の提供するソリューションはあらゆる社会課題解決に不可欠なツールとなった。今後も益々同社の存在意義は高まり着実な成長が期待できる。
<HM>
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