中部鋼鈑 Research Memo(1):2025年3月期は新電気炉の更新などで減収減益、2026年3月期はV字回復へ
中部鋼鈑は、鉄スクラップを原料とする電気炉メーカーで、2025年3月期は電気炉の更新と大規模事故により減収減益となりました。売上高は24.7%減の51,047百万円、営業利益も74.1%減の2,704百万円でした。この背景には、主力市場である産業機械や建設業の需要低迷と、事故による生産停止が影響しています。しかし、2026年3月期の見通しでは、売上高19.7%増の61,100百万円、営業利益84.9%増の5,000百万円を見込んでいます。この回復は、電気炉の安定稼働やグリーン鋼材の販売拡大が鍵となっています。また、長期経営計画では、「脱炭素対応」や持続可能基盤の強化を推進し、2026年3月期の利益拡大に向けた戦略を進めています。
中部鋼鈑<5461>は、鉄スクラップを原料に電気炉で高品質な厚鋼板(以下、厚板)を製造し、販売する電炉厚板専業メーカーである。同社の厚板は、産業機械・建設機械、土木・建築など、様々な分野で社会のインフラを支えている。
1. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の連結業績は、売上高51,047百万円(前期比24.7%減)、営業利益2,704百万円(同74.1%減)、経常利益2,599百万円(同74.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,731百万円(同75.7%減)と減収減益となった。2025年1月に発生した同社製鋼工場における水蒸気爆発事故(原因は電気炉周辺での炉外溶鋼漏れ)に伴い、2025年3月期第3四半期決算発表直前に業績予想を、売上高50,000百万円、営業利益1,800百万円、経常利益1,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,200百万円と下方修正した。同予想比では売上高2.1%増、営業利益50.3%増、経常利益52.9%増、親会社株主に帰属する当期純利益44.3%増といずれも上回った。売上面では、主力製品である厚板の主需要先となる産業機械、建設機械、土木・建築の各業種における需要低迷などにより、販売価格の下落や販売数量減少に見舞われた。さらに元々見込まれていた電気炉更新に伴う減産の影響に加え、事故に伴う第4四半期の操業停止により通期で減収となった。第4四半期に購入スラブや在庫スラブ(スラブは製鋼工程でできる鋳片)を圧延して製品化し販売したことや、エンジニアリング事業等の他セグメントでの奮闘が業績寄与し、修正予想を達成した。利益面では、製品需要の低下でメタルスプレッドが縮小したこと、販売数量の減少及び減産に伴う製造コストの上昇が重石になっている。
2. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の連結業績は、売上高61,100百万円(前期比19.7%増)、営業利益5,000百万円(同84.9%増)、経常利益5,000百万円(同92.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,300百万円(同90.5%増)を見込んでおり、2025年3月期からの復活を目指す。2026年3月期上期は前期の一時的な操業停止によって未出荷となった顧客との約定済分の出荷や、他社に流れた受注の取り戻しに注力し、下期は新電気炉の安定稼働とともに本来の短納期サイクルを復旧させ、建材等の付加価値商材受注の再開やグリーン鋼材の販売を実施することで、販売数量や利益面の回復を目指す。顧客との約定済取引のうち、未出荷分が上期の売上に計上される一方、顧客が他社に発注した取り引きもあることから販売数量は伸び悩む見通しで、事故の影響はしばらく残存すると見ている。しかし、四半期ごとの順調な回復を目指し、通期の販売数量は54.2万トンと、2024年3月期の実績(51.8万トン)を超える計画だ。米国関税政策の行方など、不透明な要素はあるが、新電気炉の安定稼働を背景に受注活動を活発化させる。また新電気炉工事に伴い休止していた中山製鋼所<5408>へのスラブ供給を2026年3月期から再開する方向で、業績寄与の材料になりそうだ。
利益面では、下期に向けた戦略としてメタルスプレッドの維持・拡大を図るべく、高付加価値商材の販売比率拡大やスクラップコスト削減のほか、脱炭素戦略ではオフサイトPPA(同社敷地外の発電所から再生可能エネルギーを調達)の拡大と新電気炉予熱の相乗効果により電力使用量を削減し費用縮小を進める。
3. 24中期経営計画の進捗状況
2025年3月期からスタートした3ヶ年の「24中期経営計画」では、基本方針として「鉄鋼製品(厚板及び鋳片)80万トンの販売」「脱炭素対応」「持続可能な基盤整備」の3点を掲げ、時価総額1,000億円の達成を目指す。2025年3月期の実績として、「鉄鋼製品」では新電気炉の事故の影響等で、販売数量が53万トンの期初計画に対して39.8万トンに留まった。2026年3月期業績予想では、事故後の回復シナリオを想定し、2024年3月期実績の51.8万トンを超える54.2万トンを計画する。「脱炭素対応」では新電気炉稼働による省エネルギー対応のほか、「厚板」で「エコリーフ」獲得や、CDP(英国の国際環境NGOで企業や自治体が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営)からの「B」評価(8段階中3番目)獲得、GXリーグでのCO2排出量の実績報告、オフサイトPPAの導入が挙げられる。グリーンスチールに関しては現在開発中であり、2026年3月期中の販売開始を目指している。「持続可能な基盤整備」については、人事制度の改定、従業員エンゲージメントの向上策等を実施した。業務効率改善策として、製鋼4直3交替による工場24時間運転を2025年4月から開始するとしていたが、新電気炉の事故に伴う操業停止期間があったことで担当者の育成期間を確保できず、準備期間を延長して2025年9月より4直3交替制を開始する予定である。
■Key Points
・2024年10月より新電気炉が稼働
・2025年3月期は新電気炉の対応やその後の事故の影響で減収減益
・2026年3月期は業績回復に注力、新電気炉のメリットを生かす
・24中期経営計画は見直しをせず、最終目標にチャレンジ
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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