クリアル Research Memo(8):中期経営計画策定、「CREAL」等の飛躍的成長で純利益100億円へ
クリアルは中期経営計画「Game Changer 2030」を発表し、5年後に純利益100億円を目指す。計画では年間獲得GMV2,500億円、売上総利益270億円を掲げ、CAGRはGMVが58%、利益が36%、純利益が50%を見込む。成長戦略には、新プロダクトの投入による「マルチプロダクト」及び「マルチアセット」の展開、不動産STやオルタナティブアセットの拡大が含まれる。また、臼木証券を子会社化し、第一種金融商品取引業の免許を活用することで新たなサービス展開を図る。株主還元策も充実させ、2025年に初配当を行う予定。株式分割で流動性向上と投資家層の拡大を目指し、配当政策も進める方針。
1. 中期経営計画「Game Changer 2030」策定
2025年5月、中期経営計画「Game Changer 2030」を発表した。対象期間を2026年3月期から2030年3月期までの5ケ年とし、最終年度において年間獲得GMV2,500億円、売上総利益270億円、当期純利益100億円の実現を目指す。CAGR(年平均成長率)については、年間獲得GMV58%、売上総利益36%、当期純利益50%の目標を設定し、目標達成を目指すことで飛躍的な成長を果たす。同計画期間中は、全事業の利益成長を目指し、事業間のシナジーを追求した各種施策を展開する。その他の財務目標は、ROE40.0%(2025年3月期比9.8ポイント増)、自己資本比率40.0%(同30.2ポイント増)、当面の目安として配当性向15%程度(同1.8ポイント増)を設定している。
(1) 5年後の目指す姿
新プロダクトの投入によりGame Changer となることを目標に、現在取り組む不動産投資を対象とした各種サービス(プロダクト)に加え、不動産STやオルタナティブアセット※への投資を商品化する。主に機関投資家や富裕層、投資経験を積んだ顧客層を対象に、商品の多様化によって、各層の投資家に最適なプロダクトをマルチに展開し、多様なニーズに応える。このように、多様に開発する「マルチプロダクト」と伝統的な投資資産に代わる選択肢となる「マルチアセット」を組み合わせた提供を「金融商品SPA(金融商品 製造小売業)」と称し、推進する方針である。新たな投資商品の企画開発第一弾として、不特法3号4号型ファンドと不動産ST商品を展開し、成長を加速する。年間獲得GMVについては、不特法3号4号型ファンドに加え不動産ST「CREAL ST(仮称)」の推進により拡大し、期間中に2,500億円までの伸長を目指す。
※ 未上場株式、インフラ、ヘッジファンド等、上場株式や債券以外の投資資産を指す。
(2) サービス別方針
「CREAL」については、不特法3号4号ファンドを拡大し、加速度的な利益成長を図る。重点施策として、(1)不特法3号4号免許活用によるGMVの加速、オフバランスでのファンド運営、収益安定化メリットの追求、(2)ホテル運営やレジデンス賃貸管理機能の強化による案件の安定供給やアセットのバリューアップ、(3)社会的潮流を捉えたアセットパイプラインの強化を挙げている。これにより業界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築く。同社予測では2032年のオンライン不動産投資市場が7.79兆円まで拡大すると見込んでおり、「CREAL ST」については、機関投資家や富裕層といった顧客層を取り込み、市場開拓を進める。不動産STの商品設計では、不特法1号2号型の利回り(5%前後)と比較すると、商品によっては利回りが低い(4%以上)場合がある。しかし、この商品は、税務上、申告分離課税を選択(不特法1号2号型は総合課税)することができるため、一般的な投資である株式投資等との損益通算が可能であるなど、運用での利便性が高い点に投資家の注目が集まりそうだ。また、今後のファンド規模拡大や、運用期間の長期化を見据えた新たなスキームづくりも進める。重点施策として、(1)子会社化した臼木証券との協業と2026年3月期上期のサービス開始に向けたシステム開発、(2)既存サービスとのシナジーを生かした商品設計、(3)投資家獲得のためのマーケティング活動を推進する。
「CREAL PRO」については、規模が拡大する「CREAL」の安定的なファンド組成と運用アセット積み上げからのフィー収入の拡大と機関投資家や富裕層とのリレーション強化を推進し、「CREAL PB」はDX活用による安定したフロー・ストック収益の確保や、「CREAL」とのクロスセルを引き続き強化する。なお、同社代表取締役社長の横田大造(よこただいぞう)氏は、業界のリーディングカンパニーを率いる代表として、業界団体である(一社)不動産クラウドファンディング協会の代表理事に就任しており、2024年12月には関連する他団体を統合して業界唯一の事業者団体を作り上げた。これによりデータベース登録案件は増加するとともに、不動産クラウドファンディング振興議員連盟との連携強化を通じ、益々の業界発展と更なる市場需要喚起に期待がかかる。
2. 臼木証券の子会社化
2025年1月、臼木証券の完全子会社化を発表した。臼木証券は業歴74年に及ぶ老舗の証券会社で、対面型営業の限界からDXを検討していた。一方、同社は不動産STや将来のデジタル社債の取り扱いといった新たな証券事業へ参入するニーズがあり、協業に至った。臼木証券が同社傘下に加わることで同社は第一種金融商品取引業に関する免許が利用可能となる。ほかにも、ピッチを上げてPMI(子会社化後の経営・業務面等の統合)を進めることで、臼木証券の証券業に関わる知見等を今後のサービス開発に迅速に反映し、成長を後押しするだろう。
■株主還元策
初の配当実施決定、2025年3月期は1株あたり年間30.0円
2025年3月、初の配当を実施する旨を発表した。2025年3月期は1株当たり30.0円の期末配当を実施する。これまでは株主への利益還元を経営上の重要課題として認識しつつも、現在の成長過程を踏まえて内部留保の充実とさらなる成長投資を優先してきた。2025年3月期決算も好調に推移し、株主還元策を安定的・継続的に実行可能な段階に入ったとの判断から配当実施に踏み切った。今後は配当と成長投資のバランスを取りながら配当政策を進めるものと考えられ、現時点では配当性向15%程度を目安とする方針である。
また、2025年5月、2025年3月期決算発表とともに株式分割を発表した。投資単位金額の引き下げで投資しやすい環境を提供し、株式の流動性向上及び投資家層の拡大をねらう。株式分割の方法は、2025年9月30日を基準日とし、同日最終の株主名簿に記載された株主の所有普通株式1株につき5株の割合で分割する。なお、2026年3月期は1株あたり期末配当30.0円、配当性向は13.2%を見込んでおり、上述の株式分割を考慮しない場合の1株当たり年間配当金合計は35.0円(前期比5.0円増)となる。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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