AHCグループ Research Memo(1):福祉事業大手の一角で、首都圏で多様な事業所をドミナント展開
AHCグループは「人を想う」を理念に、社会福祉事業を展開し、放課後等デイサービスや就労継続支援B型等の多様なサービスを首都圏で提供しています。ITやAIを用いた新業態「パパゲーノ Work &Recovery」を開設し、障害者が自立しやすい環境を整え、新しいビジネスモデルの追求を進めています。2024年の業績は、売上高が前期比6%増、営業利益が609%増を記録。2025年にはさらなる増収増益を見込み、福祉事業の拠点を拡大予定です。特に就労継続支援B型と共同生活援助の事業所拡大に注力。株主還元として配当を増加し、自己株式取得も検討しています。
AHCグループ<7083>は、「人を想う」をグループ共通理念として「社会福祉に特化した人生の総合サポート企業」を目指し、放課後等デイサービス、就労継続支援B型、共同生活援助(グループホーム)、通所介護(デイサービス)など多岐にわたる福祉サービスを提供する。2024年に子会社に加わった(株)パパゲーノでは、ITやAIを活用して障害のある人が活躍できる環境を提供する就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」を開設し、新しい時代の福祉事業の事業モデルを追求している。
1. 事業概要
同社が展開する事業は「福祉事業」「介護事業」「外食事業」の3セグメントである。最大の事業セグメントは福祉事業であり、首都圏中心に多様な事業所をドミナント展開している。放課後等デイサービス・児童発達支援では、知的障害・発達障害を抱える未就学児・小学生・中学生・高校生を対象に、「アプリ」「TODAY」「Aプラス」などを展開する。就労継続支援B型では、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者を対象に「TODAY」「ラシーヌけんこうソムリエファーム」のブランドで展開する。共同生活援助(グループホーム)では、障害のある人に対して、共同生活を営む住居を提供する。介護事業では、要介護認定者や要支援認定者を対象に、身体機能の維持・回復・改善を支援するデイサービス事業所を「クラス」「グリーンデイ」「あいである」等のブランドで展開する。外食事業では、東京都内で主業態「ねぎま三ぞう」などの居酒屋を運営する。
2. 2024年11月期の業績動向
2024年11月期の連結業績は、売上高が前期比6.0%増の6,268百万円、営業利益が同609.0%増の144百万円、経常利益が同119.1%増の154百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同44.9%増の98百万円と、増収・大幅増益となった。売上高に関しては、主力の福祉事業において、既存事業所の売上回復と前期に開設した新規事業所の順調な立ち上がりが増収に寄与した。営業利益に関しては、増収により大幅な営業増益となった。セグメント別では、福祉事業と外食事業が前期比で大幅増益となった。費用構成では、売上原価率が人件費や消耗品費などの比率が低下したことで同2.5ポイント低下した。
3. 2025年11月期の業績見通し
2025年11月期の連結業績は、売上高が前期比5.6%増の6,622百万円、営業利益が同18.7%増の172百万円、経常利益が同5.4%増の163百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同12.4%増の110百万円と、4年連続の増収・営業増益を見込んでいる。福祉事業では、新規事業所の開設及び既存事業所の収益改善等を重点施策として成長を目指す。福祉事業の売上高は同11.0%増の3,809百万円、セグメント利益は同6.4%増の284百万円を見込む。介護事業では、前期に引き続き、レクリエーション等のイベントを開催することにより利用頻度を増やし、業績の改善を図る。介護事業の売上高は同1.0%減の1,626百万円、セグメント利益は39百万円(前期は28百万円の損失)を見込む。外食事業は、原材料価格の高騰への対策としてメニューや価格の見直しを行うとともに、来店動機を高める施策として、SNS等を活用した販売促進を継続する。外食事業の売上高は同0.6%減の1,185百万円、セグメント利益は同20.1%減の64百万円を見込む。
4. 成長戦略・トピック
同社は、中期経営計画(2025年11月期〜2027年11月期)を発表しており、福祉事業を中心に拠点展開を行い、最終年度となる2027年11月期には、売上高で7,563百万円、営業利益で330百万円を目指す。成長戦略としては、「事業の拡大」と「DXの推進」を掲げる。福祉事業の事業所の新規開設では、特に注力する事業所タイプは、需要が高まる「就労継続支援B型」「生活介護」「共同生活援助(グループホーム)」である。注目の事業所タイプは、全国でも珍しいパソコンを使ったIT系の仕事が中心の就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」である。主に精神障害や発達障害のある人がパソコンを使ってITスキルを学び、自分らしく生きることを応援する就労継続支援B型事業所であり、1人1人の希望や体調に合わせて、自分のペースで働くことができる。開設から1年で利用者数が50名ほどとなり稼働率も高まっている。2025年3月には2事業所目を開設予定であり、今後数年の間に5〜10事業所の開設を予定する。
5. 株主還元策
同社は、2024年11月期末から配当を開始した。配当の基本方針としては、中長期的な企業価値の向上に向けた戦略的投資や財務体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定的かつ継続的な利益還元を業績に応じて適正に行う、としている。2024年11月期は年配当金10.0円(期末)、配当性向21.3%となった。2025年11月期は増益計画を背景に、前期比2.0円増配の1株当たり配当金12.0円(期末)、配当性向22.7%を予定する。長期的には、増益基調である点と配当性向の向上余地がある点で継続的な増配が期待できる。また、自己株式取得に関しては、経営環境の変化を考慮し、継続的に取得を検討・実施する方針だ。
■Key Points
・福祉事業大手の一角で、多様な事業所をドミナント展開。首都圏を地盤に、福祉・介護・外食事業を展開し、ITやAIを活用した新業態の開設を強化
・2024年11月期は主力の福祉事業がけん引し増収増益
・2025年11月期は、引き続き増収増益を見込む。福祉事業の新拠点6ヶ所を開設予定
・中期経営計画では、2027年11月期には、売上高で7,563百万円、営業利益330百万円を目指す。“福祉×DX”を実現した事業所「パパゲーノ Work & Recovery」展開加速へ
・2025年11月期は、前期比2.0円増配の1株当たり配当金12.0円、配当性向22.7%を予定。自社株買いも継続実施の方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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