日本電技 Research Memo(6):「ND For The Next 2030」「第1フェーズ」は好調に推移
日本電技は長期経営指針「ND For The Next 2030」を掲げ、2031年までの成長戦略を進行中である。この計画は3フェーズに分けられ、第1フェーズ(2022-2024年)は好調に進んでいる。計画は社会の脱炭素化やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の流れを捉え、省エネ・省力化技術に対する需要を見越したもの。産業システム関連事業ではAIやIoTを活用し、工場のデジタル化を推進する。第2フェーズ(2025-2028年)では、戦略的人材の確保と育成、DX推進を重視し、人手不足や「2024年問題」に対処。業績も上方修正されており、第2・第3フェーズに期待がかかる。2030年に向けた既設工事の成長や産業システム事業の拡大も視野に入れ、M&Aの検討を行っている。
1. 長期経営指針「ND For The Next 2030」
将来的に人口減少などを背景に新築ビルが続々と建てられるような時代ではなくなることから、足元で好調の空調計装関連事業の新築工事も長期的には現状以上に大きく広がらないと言われている。一方、既設工事では、築年数の経過とともに改修時期の到来する大型ビルが増加していくことが想定される。また、日本のエネルギー政策※1から、脱炭素社会の実現に向けて環境ビジネス市場は堅調に拡大すると予測されており、とりわけ建設業界ではビルを中心に究極の省エネであるZEB※2の実現に向けた取り組みが進められている。このため、省エネ・省力化を実現する同社の「計装エンジニアリング」技術に対する需要はますます高まると考えられている。産業システム関連事業においては、中長期的にAIやIoT、ICT技術といったDXを活用した工場のデジタル化(スマートファクトリー化)が追い風となって、市場が大きく広がることが期待されている。なかでもプロセスオートメーションやファクトリーオートメーションなど、工場設備の更新や生産管理システムの構築に関連する需要の増加が期待されている。
※1 国は2050年までにカーボンニュートラルの実現や2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指している。
※2 ネット・ゼロ・エネルギー・ビルのこと。
同社は、空調計装関連事業については同社を支える安定収益源、産業システム関連事業については成長ドライバーと考えており、2022年3月期に2031年3月期を最終年度とする長期経営指針「ND For The Next 2030」を策定した。さらに、「ND For The Next 2030」を、成長基盤を構築する「第1フェーズ(2022年3月期〜2024年3月期)」、成長基盤の拡大と生産性の向上を果たす「第2フェーズ(2025年3月期〜2028年3月期)」、さらなる飛躍と挑戦の「第3フェーズ(2029年3月期〜2031年3月期)」に分け、好調な空調計装関連事業のなかでも既設工事につながる新築工事で収益を拡大するとともに、既設工事で収益の積み増しを図る。一方、産業システム関連事業の独り立ちを進めた後、開拓余地が大きい産業システム分野に経営資源を投入し、産業システム関連事業の成長に弾みをつける考えである。なお、2024年3月期に終了した「第1フェーズ」は好調に推移したうえ、「2024年問題」を前に着実に対策を講じた点は高く評価できる。
環境改善などを背景に「第2フェーズ」「第3フェーズ」を上方修正
2. 新中期経営計画「第2フェーズ」
2024年4月にスタートした「第2フェーズ」では、成長基盤の拡大と生産性の向上を図るため、戦略的な人材の確保、育成、活用や協力会社の体制強化など人的資本の強化、及び生産性向上に向けたDX推進への積極的な投資を実行する。特に中長期的な課題である人手不足に対しては、積極的に対処する方針だ。残業上限規制適用開始など「2024年問題」に対しては、施工余力や収益性、竣工後のメンテナンス契約可否を勘案した選別的な受注活動へとシフトしたが、今後、人材確保や人材育成、DX推進による生産性の向上を推進する。人材育成に対しては、人材教育の専門部署「電技アカデミー」を2024年4月に開設した。新卒社員は本来1ヶ月の研修後に現場でのOJTを実施するが、現場が繁忙を極めていることもあり、本社の「電技アカデミー」で1年間集中して研修することで、効率的に新卒社員の、ひいては若年層の施工品質を引き上げ、さらには早期戦力化と離職の防止を図る。加えて、「電技アカデミー」を協力会社の人材育成や基盤強化にも活用することで、同社の中長期成長を下支えする。
このように生産性向上を図るものの人員増やベースアップを背景に人件費の増加が見込まれるが、事業環境など当初想定していた諸条件が改善したため、「第2フェーズ」初年度ではあるが、「第2フェーズ」及び「第3フェーズ」の目標を上方修正した。この理由は、「第2フェーズ」に関しては、受注環境が都市再開発の長期化と大型化、地方への広がりによって好調が継続、また、選別受注しなければならない状況が続いていることから採算も向上することが見込まれるためだ。もちろん、空調計装関連事業の新設工事向け人員強化が一巡すれば、既設工事と産業システム関連事業の想定以上に強いニーズを積極的に取り込むことができる。これにより、2028年3月期の財務目標について、ROE10%以上を12.5%、売上高420億円を450億円、営業利益65億円を80億円へと上方修正した。また「第3フェーズ」の2031年3月期目標も「第2フェーズ」の上方修正に伴い、ROE10%以上を12.5%、売上高450億円を525億円、営業利益60億円を90億円へと上方修正した。長期のシナリオは、空調計装関連事業は新設工事が横ばいプラスアルファで推移、2030年に向けた気候変動対応の案件を含め既設工事が大きく増える想定だ。また、産業システム関連事業もいよいよ活動を本格化、機会があればM&Aも検討する考えのようだ。なお、2026年3月期は、2025年3月期下期に大型の完成工事が集中する反動でやや足踏みとなりそうだが、同社の勢いが変わらなければ増収増益は確保できると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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