四電工 Research Memo(3):設備工事業を主力にリース事業や太陽光発電事業等も展開
四電工は、設備工事事業を中心にリース事業や太陽光発電事業などを展開しています。設備工事は電力会社向けの送配電設備およびオフィスや工場などの建築設備工事が主で、同社の売上の約9割を占めています。一方、リース事業と太陽光発電事業も安定収益を上げています。リース事業は工事用機械などのリースを行い、太陽光発電事業ではオフサイトコーポレートPPA契約も推進しています。また、同社は新たな技術革新や人材育成を通じて、持続可能な成長を図っている点が特徴です。四国電力グループへの電力送配電設備工事が安定収益源となっており、業績の安定に寄与しています。
1. 事業概要
報告セグメントは設備工事業、リース事業、太陽光発電事業である。設備工事業は、同社の創業以来の基幹事業である四国エリアでの電力会社・送配電会社向け送配電設備工事と、オフィスビル・商業施設・物流施設・公共施設・工場等の建築設備工事(電気・空調・給排水設備工事、情報通信設備工事、システム制御工事など)が2本柱で、電気設備工事から空調・給排水設備工事までワンストップで提供できる技術力や高品質の施工力・保守力を強みとしている。施工における同社の主たる役割は現場監督であり、協力企業に施工業務を発注して現場の管理を行う。リース事業は工事用機械・車両・備品等のリースを行っている。太陽光発電事業は太陽光発電による電力の販売を行っている。また、その他事業としてCAD開発・販売事業、公共施設の設計・施設整備・運営管理を受託するPFI・指定管理者事業などを行っている。
(1) 送配電設備工事
送電・土木工事は、主に発電所から各地の変電所へ電気を送るための送電設備(送電線・鉄塔など)に関連する工事を行う。山中等での大規模な工事も多いため工期が長期間となる。配電工事は、変電所で変圧(降圧)した電気を企業や各家庭へ送るために必要となる配電設備(電線・電柱等)に関連する工事を行う。あらかじめ送配電会社と締結した契約に基づいて、日々現場を移動しながら膨大な件数を施工する。施工については専属の協力企業と緊密な連携体制を構築している。
(2) 建築設備工事
電気・空調・給排水設備工事は、オフィスビル・商業施設・物流施設・公共施設・工場等あらゆる建築物の屋内電気配線などの電気・計装工事及び空調・管工事を行っている。施主からの直接受注のほか、ゼネコン各社からも受注しており、大規模な工場や病院の手術室など特別な施設のオーダーにも応えるなど多くの施工実績がある。
(3) 情報通信工事
情報通信工事は、通信事業者の光ケーブル敷設や携帯電話基地局工事、自治体の防災無線工事や消防無線工事の請負など、保守・運用サポートを含めて通信高度化等に対応したネットワークインフラ構築に貢献している。システム制御工事は、生産工場のライン効率化や物流倉庫のオートメーション化など、制御に関わる計装工事を行っている。自社でプログラミングを行っている強みを生かし、現場の状況に応じたシステムの構築と、運用開始後の速やかなアップデートにより省エネルギーや時短化を実現している。
(4) リース事業
リース事業は、子会社ヨンコービジネスが工事用機械、車両、備品等のリースを行う。同社とのリース取引もある。新規取引先の開拓等により売上拡大を図る一方で、与信管理の徹底などコスト低減にも努めている。
(5) 太陽光発電事業
太陽光発電事業は、子会社ヨンコーソーラー等が太陽光発電による電力の販売を行っている。2023年12月には、四国化成ホールディングス<4099>の子会社である四国化成工業(株)、四国電力、ヨンコーソーラーの3社がカーボンニュートラル社会の実現に向けて、太陽光発電によるオフサイトコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)に関する契約を締結した。同社グループとして初のオフサイトPPA事業となる。ヨンコーソーラーが発電事業者となり、香川県三木町のため池に太陽光発電設備を設置し、発電した再生可能エネルギー電力を環境価値(非化石証書)とともに、四国電力を介して四国化成工業徳島工場へ供給する。2024年12月から再生可能エネルギー電力の供給を開始し、総発電出力は2,035kW、CO2削減量は年間約1,503トンを見込んでいる。
(6) その他事業
CAD開発・販売事業は、同社独自の建築設備CAD「CADEWA(キャデワ)」シリーズや、建築設備業支援ソフト「CRAFT DX(クラフト ディーエックス)」シリーズの開発・販売を行っている。2024年2月には「CRAFT DX」シリーズの新バージョン「V2」の販売を開始した。また「CADEWA」シリーズの新バージョンとして、2025年1月にフル3次元建築設備CAD「CADEWA Smart V6」の販売を予定している。
設備工事業が約9割、リース事業や太陽光発電事業等も安定した収益を計上
2. 報告セグメント別業績の推移
過去5期(2020年3月期~2024年3月期)報告セグメント別業績の推移は次のとおりである。構成比(調整前合計に対する割合)では特に大きな変動は見られず、主力の設備工事業が売上高で9割強、営業利益で7~8割を占めている。リース事業及び太陽光発電事業等は、設備工事業に比べて売上規模が小さいため構成比は小さいが、いずれも安定した収益を計上している。2024年3月期の構成比は売上高が設備工事業93.0%、リース事業3.2%、太陽光発電事業2.3%、その他1.5%、営業利益が設備工事業80.4%、リース事業4.6%、太陽光発電事業11.9%、その他3.2%となった。なお、2025年3月期中間期の構成比は売上高が設備工事業93.5%、リース事業2.8%、太陽光発電事業2.5%、その他1.2%、営業利益が設備工事業81.4%、リース事業3.0%、太陽光発電事業13.2%、その他2.4%となった。
3. 工事種類別・得意先別売上高構成比の推移(単体ベース)
過去5期(2020年3月期~2024年3月期)の工事種類別・得意先別売上高構成比(単体ベース)の推移は次のとおりである。工事種類別の構成比には特に大きな変動が見られず、配電工事が約4割、電気・計装工事が約3割で推移して主力事業となっている。得意先別では、四国電力グループ(四国電力、四国電力送配電(株))向けが約5割、官公庁が約1割、一般民間が約4割で推移している。官公庁と一般民間は期によって変動するが、四国電力グループ向けが安定収益源となっている。
2024年3月期の工事種類別売上高構成比は、配電工事42.5%、送電・土木工事7.9%、電気・計装工事30.2%、空調・管工事12.7%、情報通信工事4.9%、兼業事業1.8%、得意先別売上高構成比は四国電力グループ51.2%、官公庁10.0%、一般民間38.8%である。なお、2025年3月期中間期の工事種類別売上高構成比は、配電工事39.4%、送電・土木工事4.6%、電気・計装工事37.4%、空調・管工事12.6%、情報通信工事4.5%、兼業事業1.5%、得意先別売上高構成比は四国電力グループ44.7%、官公庁7.7%、一般民間47.6%となった。
売上高のエリア別構成比(単体ベース)は、2023年3月期が四国87.9%、首都圏9.3%、関西圏2.7%、2024年3月期が四国89.6%、首都圏7.0%、関西圏3.2%となっている。
4. リスク要因と課題・対策
建設業界の一般的なリスク要因としては、景気等に伴う建設投資変動と受注競争激化、人件費や資機材価格の高騰による工事利益率の低下、人手不足による施工力の制約、計画変更等による工期遅れ、施工不具合に伴う賠償責任、環境規制や技術革新への対応遅れなどが挙げられる。
建設投資については、一般民間建築に関しては変動の可能性があるものの、大都市圏の再開発案件や地域の社会資本整備等により底堅く推移する見込みである。同社の場合は四国電力グループ向け電力送配電設備工事が安定収益源となっているため、需要変動によって業績が悪化するリスクは小さいと弊社では考えている。人件費や資機材価格の高騰に関しては、業界全体として受注価格への転嫁が進展しているもようである。
人手不足による施工力の制約リスクに関しては、2024年度から適用開始された時間外労働の上限規制による影響が、同社だけでなく建設業界全体のリスク要因として意識される。一方で、昨今の旺盛な建設需要に対して施工力が追いつかない状況であるため、採算性を一段と重視した受注(いわゆる選別受注)を行うことで、工事の採算性向上につなげている。また同社は資機材調達を含めた原価管理の強化や施工効率の向上に加えて、積極的な人材採用・育成を進めており、M&Aも活用しながら徐々に施工力を高める方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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