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サンフロ不動産 Research Memo(4):既存不動産の活用等をとおして、顧客の資産価値の最大化を実現(2)


サンフロンティア不動産は、ホテル・観光事業や地域創生に重点を置き、顧客資産価値の最大化を目指しています。ホテル運営では「HIYORI HOTELS &RESORTS」のブランドを展開し、さまざまなクラスの宿泊施設を提供。ホテル開発は既存施設の再利用を通じ、リニューアルや新規建設を進めています。地域創生では、日本の文化や自然を活かし、新潟や沖縄での雇用創出に寄与。 海外開発事業ではベトナムに進出。ダナンで高層マンションを展開。建設事業ではビルのリニューアルで価値を高める施策を進めています。 経営手法には「アメーバ経営」システムを導入し、効率的な管理と従業員の参加による事業成長を図っています。市場ではオフィスの賃料上昇やインバウンド需要拡大が同社の成長を支え、地政学的リスクには柔軟に対応していく計画です。

*15:04JST サンフロ不動産 Research Memo(4):既存不動産の活用等をとおして、顧客の資産価値の最大化を実現(2) ■サンフロンティア不動産<8934>の事業概要

3. ホテル・観光事業
ホテル・観光事業では、「ホテル運営事業」「ホテル開発事業」「地域創生事業」を手掛けている。

「ホテル運営事業」は「心温かい楽しいホテル」をテーマに、地域の文化と歴史を大切にした、上質で心地よいプライベート感のあるホテルを目指している。「HIYORI HOTELS & RESORTS」のブランド展開により、「BUDGET」「ECONOMY」「UPPER MIDDLE」「UPPER」「LUXURY」にクラス分けし、3,144室を運営している(2024年11月現在)。

「ホテル開発事業」は、自社開発によるホテル建設、自社ブランドによる既存ホテルのリニューアルといったホテルの最有効活用を企画・提案している。ホテル開発では、顧客が所有する不動産を同社グループが購入し、ホテル建設・運営を行う事業方式や、既存ホテルを購入し同社グループでリニューアル・運営を行う事業方式がある。その他にも、建物賃貸借開発方式や土地賃貸借開発方式、他社運営によるホテル保有事業がある。ホテル開発のほかに再生では、顧客視点の付加価値の創出により高収益ホテルへの再生を行っている。再生工事は、企画立案、建築デザイン、資材調達、工程進捗、引渡しまで、すべて一括して同社グループが行うことで、細部にこだわり、使いやすく清潔感のある高品質な不動産に改修する。ホテルの再生には建物だけではなく運営面での再生も重要である。ホテルに従事するスタッフと併走して再生に向けた取り組みを行っている。

「地域創生事業」は、その地域ならではの魅力や特長をテーマにした事業に取り組んでいる。同事業の背景には、日本が誇る文化・歴史・自然・食事・温泉・おもてなしなどに魅了される訪日外国人旅行者の急増があり、創業者の出身地でもある新潟県・佐渡島より事業を開始した。佐渡島では観光産業を軸に地域創生を進めており、既に100人を超える雇用を創出した。また、ホテル事業の運営を基軸に沖縄県・宮古島にも進出を果たしており、「日本の素晴らしさ」を備える地方に視点を向け、その地方ならではの魅力を生かした地域創生事業に挑戦を続けている。

4. その他事業
その他事業では、「海外開発事業」「建設事業」を手掛けている。

「海外開発事業」は、成長が期待できるベトナムへ進出し、日本の高度な施工技術によるマンション・住宅等を中心とした不動産開発事業を展開している。都市型高層分譲マンション事業では、ベトナム中部に位置するダナン市において高層分譲マンションの開発・販売、運営を行っている。2019年12月には「HIYORI Garden Tower」を竣工し、住居306戸が完売している。また、分譲マンションプロジェクト第2号案件として、2024年8月に「HIYORI Aqua Tower」を着工しており、2026年9月末に竣工予定である。

「建設事業」は、事業用ビルのリニューアル企画や修繕・改修工事、内装仕上工事及び電気通信工事等を行っている。ビル空間や外観・エントランスのリニューアルをプロデュース、入居テナントにとって魅力的で使いやすい空間を創造することによりテナントの満足度を高め、オーナーが保有するビルの競争力や資産価値の向上につなげている。現状分析・コンサルティング・デザインから設計・施工までをワンストップで提供することで、高い品質とコスト効率を実現している。

5. 同社グループの強み
同社グループの強みとして、不動産再生事業における内製化したワンストップサービスの提供力が挙げられる。ビルの仕入れから、再生・活用企画、建設工事、テナント誘致、管理、販売、販売後のビル経営に至るまでを一貫して内製化し、高い付加価値を創出している。この一連のワンストップサービスは、不動産サービス事業の各部門(リーシングマネジメント、ビルメンテナンス、資産コンサルティング、滞納賃料保証、貸会議室)が協業することで実現している。こうした協業を行えているのは、同社グループがフィロソフィ経営を実践するなか、最上位概念であるクレド「利他」の精神が、従業員同士をしっかりと結び付けているためである。

管理会計の手法においては、「アメーバ経営」システムを導入している。これは、グループの事業を5人~10人の小集団(アメーバ)に分類し、アメーバごとに時間当たりの採算の最大化を図るものである(時間当たり採算=売上総利益÷労働時間)。各アメーバにはリーダーが存在し、期初に設定した年間予算・月次予算(売上総利益と時間当たりアメーバ)に対する進捗管理を行う。アメーバ経営による管理会計手法は、市場に直結した部門別採算制度の確立のみならず、全員参加による従業員の採算意識向上や、経営者人財の育成につながるメリットがある。小集団であることにより意思決定のスピードアップが図られ、環境変化による市場ニーズの変化などにも柔軟な対応が可能なため、効果的な経営手法であると弊社では考える。

6. 事業環境
同社を取り巻く事業環境として、世界経済では欧米での利下げの効果が期待される一方、中国経済の減速や中東・ウクライナ情勢が懸念されている。IMFは、2024年及び2025年の世界経済の実質成長率を3.2%で据え置き、安定的な成長が見込まれている。米国では、利下げに伴う経済成長の持続が期待され、また大統領交代後の政策の動向が注目される。日本においては、緩やかな経済回復が続くなかで実質賃金の改善が期待され、日銀がマイナス金利を解除した後も政策金利の引き上げは緩やかであり、全体として堅調に推移している。物価上昇が続くなか、賃金と物価の好循環が形成されつつあり、持続的な賃金上昇への期待が高まっている。

また、都心のオフィスビル市場では賃料上昇と空室率の改善が続いており、投資意欲も高い状況にある。オフィスビルの新規供給量が減少しつつあり、オフィス回帰の動きが進むなかで賃料上昇と空室率改善が続くと見られる。金利が今後上昇する可能性はあるものの、アジアを中心とした富裕層及び機関投資家からの高い投資意欲が続いている。一方、ホテルや観光市場については、円安基調を背景にインバウンド需要が拡大し、国内旅行需要も好調である。2023年の訪日客による旅行消費額は5兆3,065億円を超え、過去最高額を更新した。訪日外国人数も増加しており、9月単月で287万人、1月から9月の累計で2,688万人に達し、2023年の年間累計を超えて過去最高を記録している。

このような事業環境のなか、同社事業は都心のオフィスビル市場と観光・ホテル市場での安定的な成長が期待される。オフィス市場では、賃料の上昇と空室率の改善が続き、投資需要も堅調であり、同社の収益基盤を支える重要な要素となっている。さらに、円安基調がインバウンド需要を後押しし、ホテル事業の収益拡大に寄与している。また、国内経済は緩やかな回復基調にあり、賃金と物価の好循環が進んでいるため、堅調な不動産市場の支援を受けやすい環境が整っている。地政学的リスクや中国経済の減速が懸念材料ではあるものの、日本の政策金利の引き上げが緩やかであることから資金調達環境も良好であり、総合的に見て安定した成長と収益拡大の機会が見込まれると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)

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