翻訳センター Research Memo(1):2025年3月期は、過去最高の売上・利益を予想(1)
翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、特許、工業・ローカライゼーション、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、人材派遣、国際会議運営(コンベンション)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応している。多数の中小プレーヤーがひしめく分散型事業において、組織化・システム化された営業・制作機能を整備し、品質・スピード・コストのバランス、大規模案件対応などで他社の一歩先を行く。機械翻訳技術の取り込みにも積極的であり、同技術を持つ(株)みらい翻訳と資本業務提携するとともに、社内の翻訳業務にも機械翻訳を活用し、生産性を向上させている。国内翻訳業界を牽引する存在であり世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。
1. 事業内容
主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野に分けて専門化し、ノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる翻訳・通訳登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは2,866名(2024年3月末時点)の登録者である。7年前から本格的に機械翻訳や翻訳支援ツールを導入し、品質の向上や作業時間の短縮、さらには売上総利益率の向上を達成している。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。顧客数3,500社、年間受注件数は49,000件に上る。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、派遣事業、通訳事業、コンベンション事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連していて翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。
2. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.2%増の11,303百万円、営業利益が同2.8%減の902百万円、経常利益が同2.2%減の938百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同3.5%増の711百万円と堅調な増収とともに、好調だった前期並みの各利益を確保した。売上高に関しては、コアビジネスである翻訳事業で医薬分野の減収などが影響し前期比でほぼ横ばいとなったものの、派遣事業、通訳事業、コンベンション事業が増収を下支えした。売上総利益は前期比4.4%増であり、売上総利益率では47.0%(同0.6ポイント上昇)と高い水準を維持している。収益性の高い翻訳事業の構成比が下がったものの、機械翻訳や翻訳支援ツールを積極的に活用し、翻訳制作の生産性向上に取り組んだ成果が表れたことが粗利率上昇の要因である。販管費は期中のM&Aなどによる人件費の増加などから同6.1%増となった。結果として、営業利益及び経常利益でわずかに減益となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が同24百万円増(同3.5%増)となったのは(株)福山産業翻訳センターの株式取得に伴い、負ののれん発生益(69百万円)を計上したことが要因である。
3. 2025年3月期の業績予想
2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比7.0%増の12,100百万円、営業利益が同16.3%増の1,050百万円、経常利益が同15.0%増の1,080百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.2%増の720百万円と、各利益で過去最高益を更新する予想である。翻訳事業の売上高は大幅な増収を見込む。内訳としては、前期に受注減があった医薬分野を成長軌道に戻すことにより同354百万円増(同13.6%増)とするのが大きく貢献する。また前期好調だった特許分野、製造業中心に需要が旺盛な工業・ローカライゼーション分野、上場企業の英文開示要請に対応する金融・法務分野を含め、いずれの分野も前期を上回る増収率を予想する。派遣事業は、緩やかに回復基調にあり、堅調に推移する見込みである。通訳事業は、対面案件の増加によるプロジェクト単価増などの好影響もあり同164百万円増(同15.0%増)を見込む。営業利益は過去最高益の更新を予想する。機械翻訳の活用拡大の効果が現れることなどにより売上総利益率は47.9%(同0.9ポイント増)とさらに上昇する見込みである。販管費は、人件費増などの影響により前期比7.6%増を予想する。弊社では、外部環境が良好ななか、各セグメントでの上振れ・下振れはあるものの、事業ポートフォリオが過去から機能しており、2025年3月期も売上高は予想値を達成するものと見ている。営業利益に関しては、収益性が相対的に高い翻訳事業の伸び、特に医薬分野の復調がカギとなるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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