日本ヒューム Research Memo(4):新技術・新製品を戦略分野と位置付ける
4. 戦略分野の新技術・新製品
(1) AIを活用したプレキャスト製品の製造技術
日本ヒューム<5262>は太平洋セメント<5233>と技術提携し、2023年4月にAIを活用したプレキャスト製品の製造技術を開発した。コンクリートの練り混ぜ画像からAIがスランプ値(コンクリートの軟らかさを表す指標値)を予測するPreSLump AI(R)(太平洋セメントが開発)を、同社のセグメント製品に適用し、製造工程における品質の安定化・高度化を実現した。
(2) ICTを活用した施工管理「Pile-ViMSys(R)」
ICTを活用した次世代型DX施工管理システム「Pile-ViMSys(R)」を2021年7月に開発した。杭打機に据え付けられている施工管理装置「アースガイド」と、専用タブレット「i-Pile-ViMSys」を無線でつなぎ、オンタイムでインタラクティブな管理を可能とした。管理者が杭施工管理を行ううえで必要な管理作業を、施工現場内の離れた場所から行うことが可能になる。工程ごとに画面の写真アイコンをタッチすることで、電子黒板付き工事写真の撮影を行うアプリ「ViMCam(ヴィムカム)(R)」が追加され、現場管理の効率化を実現した。2023年10月には、「Pile-ViMSys(R)」と連動する電子黒板アプリケーション「ViMSys Camera(ヴィムシスカメラ)(R)」が、信憑性確認及び小黒板情報連携機能の認定(国土交通省 国技建管第10号)を取得した。
(3) 工場の省人化ニーズに対応する「3Dプリンター」の導入
同社は、工場の省人化・省力化が図れることで注目されている3Dプリンティング技術の活用にも取り組んでおり、この技術を用いて製造した製品の納入実績が出始めている。同社では今後、3Dプリンターの活用により様々な形状の製品や大型製品を製造し、プレキャスト事業のソリューション実現をさらに推し進めたいと考えている。
(4) 「ウェルマン貯留槽(R)」
「ウェルマン貯留槽(R)」は、地中の縦スペースを利用して、狭い面積でも雨水の一時貯留が可能な立杭型貯留施設である。ゲリラ豪雨の発生などに伴う内水氾濫への対策として開発した都市防災ソリューションの1つである。同社のウェル工法(構造物の巨大化ニーズに対応したPC部材・大口径基礎工法)を活用し、中堀圧入式施工で約40mの深さまで沈設する。
(5) 合成鋼管のラインナップ拡充
合成鋼管は外殻鋼管付きコンクリート管(外側の鋼管と内側のコンクリート管を一体化したもの)である。鋼管とコンクリートのハイブリッド構造で、外圧に対するひび割れ耐荷力が大きく、大深度での施工が可能である。雨水貯留管のほか電力関連での需要拡大が見込まれるため、2021年に1、2、5、6種管を開発し、ラインナップを「1~6種」に拡大した。
(6) 脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」
脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」は、2019年に東京都下水道サービスと共同開発した環境配慮型の素材である。下水汚泥焼却灰由来の原料を有効活用し、通常のコンクリートに比べてCO2を約8割削減できるため環境面で優れているほか、耐塩害性能や耐酸性能もトップクラスであるため長寿命化も実現できる。対応可能製品はヒューム管、セグメント、マンホール、ボックスカルバート、壁高欄など幅広く、カーボンニュートラル時代の新しいコンクリート製品として需要拡大が期待されている。
(7) 「クイック壁高欄」
「クイック壁高欄」は施工スピードと耐久性の向上を図ったプレキャスト壁高欄である。床版との接合は床版から突出したアンカーボルトに壁部材のブロックを被せ、無収縮モルタルを充填して完了するため、シンプルな接合構造によって急速施工を実現する。また、劣化因子の侵入を抑制するため、路面配水が浸透しにくい高さに床版との接合部を設けることで耐久性の向上を図った。材料も耐久性向上を考慮し、鉄筋はすべてエポキシ樹脂塗装を行い、コンクリート材料は高炉スラグ微粉末を45%置換した。急速施工と高耐久性に優れた製品である。同社では道路分野の事業拡大に向けた主力製品と位置付けている。
公共工事は国土強靭化関連で需要堅調
5. リスク要因・収益特性と課題・対策
コンクリート二次製品の需要は建設投資(民間建築工事、公共工事)の影響を受け、競争激化、原材料価格変動、現場人手不足による工事進捗遅れなどもリスク要因となる。需要面では、一般的に民間建築工事は景気変動の影響を受ける可能性があるが、公共工事は防災・減災対策や社会インフラ老朽化対策など国土強靭化関連で需要が堅調に推移することが予想される。競合の面では、同社は競争力の一段の強化に向けた技術力・品質力の向上や新技術・新製品の開発を推進している。収益性の面では、建設関連業界全般において民間建築工事は利益率が低くなる傾向があるため、基礎事業の収益力向上が今後の課題である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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