ダイナムジャパンHD Research Memo(4):2024年3月期中間期は2ケタ増収増益(1)
1. 2024年3月期中間決算の状況
ダイナムジャパンホールディングス<06889>の2024年3月期中間決算は、営業収入で前年同期比14.6%増の64,375百万円、営業利益で同13.4%増の4,400百万円、税引前中間利益で同26.1%増の2,924百万円、中間利益で同58.4%増の1,874百万円となった。営業収入は中間期ベースで3期連続増収、各利益は2期振りの増益に転じた。
コロナ禍が収束に向かうなかで、2022年11月より導入が開始されたスマスロが人気化したことで若中年層を中心に客足が戻り、パチンコ事業の営業収入が同12.8%増と好調に推移したことが主因だ。航空機リース事業においても、リース供与中の機体数が前年同期の4機から9機に増加したことにより、前年同期比で約2倍の増収となったことも収益増に貢献した。コロナ禍前の2020年3月期中間期の業績(営業収入74,052百万円、営業利益14,042百万円)と比べると営業利益の回復が鈍いように見えるが、これは2022年3月期より会計処理を変更したことで、遊技機の減価償却費が同5,990百万円増の18,033百万円と大幅に増加したためだ。遊技機関連費用(償却費+購入費)控除前の営業利益で見るとコロナ禍前の水準に対して89%まで回復しており、収益力も着実に回復してきたことが窺える。
その他収入は前年同期に計上した店舗立退きに伴う補償金817百万円がなくなったことで同987百万円減少し、その他費用は1,037百万円減少した。店舗に係る固定資産の減損損失で651百万円、固定資産処分損で340百万円それぞれ減少した。なお、2024年3月期中間期末のグループ店舗数は前年同期比1店舗増の434店舗(前期末比5店舗増)となった。また、オペレーションの標準化及び効率化に取り組んだ結果、連結従業員数は同216名減少の12,679人となった(前期末比43名減)。
(1) パチンコ事業
パチンコ事業の業績は営業収入で前年同期比12.8%増の62,187百万円、セグメント利益で同12.7%減の2,707百万円と増収減益となった。既述のとおり2022年3月期から遊技機の購入費用を一括費用計上から2年定額償却方式に変更したことにより、減価償却費及び償却費用が同6,035百万円増加の26,427百万円と大幅増となったことが減益要因となった。
ただ、こうした会計基準変更の影響をなくして本来の収益力を見ると、着実に回復していることが窺える。具体的には、EBITDA(セグメント利益+減価償却費+減損損失+金融費用)に一時費用として処理した機械費を加えたベースで2020年3月期以降の推移を見ると、2024年3月期中間期は前期比17.9%増の32,384百万円と3期連続で増加し、対営業収入比率でも同2.3ポイント上昇の52.1%まで上昇した。コロナ禍前(2020年3月期中間期)の水準と比較すると、営業収入で84.1%、EBITDA+機械費で79.4%の水準まで回復したことになる。収益性((EBITDA+機械費)÷営業収入))に関しても52.1%とコロナ禍前の水準近くにまで回復した。業界全体では店舗数の減少が続くなど厳しい環境が続いていることに変わりないが、店舗オペレーションの見直しやコスト削減に取り組んできた成果が出ているものと評価される。
パチンコ事業収入の内訳を見ると、パチンコ収入が前年同期比0.1%減の397.3億円にとどまったのに対して、スロット収入が同45.9%増の224.5億円と大きく伸長した。スマスロで新規則に対応した複数のヒット機種が誕生し、若中年層を中心に客足が戻ったことに加え、スマスロ人気に対応すべく台数の増台を実施したことも増収要因となった。中間期末の遊技機台数設置台数は、パチンコ機が前年同期比0.6%減の14.2万台となったのに対して、スロット機は同10.5%増の6.8万台と約6千台を増台した。このうち、スマート遊技機について見ると、2023年4月から導入が開始されたスマパチが2,351台、設置比率で1.7%にとどまったのに対して、スマスロは14,312台、設置比率で20.8%となった。貸玉収入比率で見ると、この動きはさらに顕著で、2023年9月時点のスロット貸玉収入のうちスマスロの比率は29.5%に達している。
スマパチの導入が進まなかったのは、スペックが従来機種とほとんど変わらず差別化できなかったことに加えて、遊技機内に玉の還流システムを新たに設ける必要があるなど製造コストが上がるため、メーカー側で積極的にメインタイトルを発売する動きが限定的であったこと、またホール側でも投資余力が限られる中で、稼働率の上昇が見込めるスマスロの導入を優先的に進めたことが要因だ。実際、ダイナム店舗における稼働率を見ると、スロットが前年同期比6.6ポイント上昇の28.6%となったのに対して、パチンコは同1.3ポイント低下の28.5%にとどまっており、こうした動きを反映する動きとなっている。
年代別の客数の動きについて見ても、スロットを好む若中年層の回復が顕著で、パチンコユーザーが多いシニア層についてはまだ伸び悩んでいる状況が続いている。2023年9月時点のデータでは、10~30代の客数が全体で9%増、スロットだけで見ると36%増と大きく伸長しており、40~50代においても同様に全体で5%増、うちスロットは24%増となっている。60代以上のシニア層については全体で2%増、スロットでも9%増と回復力は緩慢となっている。シニア層についてはコロナ禍以降、客足の戻りはまだ鈍く、若中年層についてはコロナ禍前の水準近くに戻った印象だ。同社では客層の4割強をシニア層で占めているため、当面は勢いのある若中年層の顧客層も取り込むべく店舗運営を進めていく。
店舗形態別の営業収入の内訳を見ると、高貸玉店舗で同8.1%増の29,246百万円、低貸玉店舗で同17.3%増の32,941百万円となり、低貸玉店舗が相対的に好調だった。スロット収入についてはいずれも好調だったが、パチンコ収入において高貸玉店舗の落ち込みが大きかったことが要因だ。
また、グロス売上高となる貸玉収入で見ると、前年同期比13.4%増の278,822百万円と前下期から増加基調に転じた。2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2類相当から季節性インフルエンザ並みの5類に引き下げられ行動規制がなくなったことに加えて、スマスロでヒット機種が複数台頭したこと、営業対策として既存店舗でのスロット増台や老朽化した旗艦店舗において大規模リニューアルを実施し、ホスピタリティを高めた効果が出た。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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