サクシード Research Memo(4):ICT支援員や部活指導員などを学校や自治体に紹介・派遣
1. 教育人材支援事業
教育人材支援事業では、ICT支援員や学校教員、部活動指導員、日本語教師など、教育に携わる人材を学校や自治体に紹介・派遣するほか、業務の受託を行っている。また、他社学習塾・予備校などに対して、塾講師や教室長といった人材を紹介・派遣するサービスも展開している。特に学校教員は、生徒指導のほか部活動指導や英語必修化、プログラミングの教科化など負担が激増しており、海外の教員と比較して労働時間が非常に長くなっている。このため、教員人気は低下傾向が続いており、公立小学校教員採用倍率も大きく低下している。さらに今後35人学級が始まると13,000人の教員が不足するとの試算もあり、このため閉鎖的だった学校や自治体もようやく重い腰を上げ、教員の業務負担軽減や働き方改革などを目的に予算を計上するようになった。現状は導入しやすいICT支援員が先行しているが、部活動指導員やALT※などでも外部人材の有効活用が進みつつある。以下は、同社の代表的な教育機関向け人材サービスである。
※ALT(Assistant Language Teacher):グローバル化に対応した英語教育を実践するために、小学校、中学校、高等学校に配置される外国語指導助手。
(1) ICT支援員
日本では、オンラインやタブレットなどのICTを授業で利用できる教員が、諸外国に比べ非常に少ない。これを是正するため文部科学省は、児童1人につき1台の情報端末を配布し、4校に1人の割合でICT支援員を配置するという「GIGAスクール構想※」によって、教育現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進することとなった。この結果、自治体はICT支援員の確保を迫られることになり、これに対して同社は、2022年3月期にICT支援員を紹介・派遣する人材サービスを開始した。ICT支援員の制度は始まったばかりのため、当面の間、全国的に需要が継続すると見られている。また、ICT支援員の制度化は、学校・教員の負担軽減と学校授業の質向上という様々な教育現場の課題を解決する端緒にもなると考えられている。このため、同社はICT支援員の登録を充実・強化するとともに、全国の自治体をターゲットに様々なニーズに対応する体制を構築した。
※GIGAスクール構想:2019年に始まった政策で、1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークによって、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく公正に個別最適化し、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境の実現を目指している。
(2) 学校教員
現在、全国の私立小・中・高校に対して、常勤・非常勤の教員を紹介・派遣するサービスを展開している。かつて教員は人気職種だったが、現在では厳しい職場環境にあるため教職志望の学生の減少が続いているが、教員の採用倍率低下に伴う質の低下も懸念されている。加えて大量に採用された世代の教員が定年を迎えていることもあり、今は定年後の教員を教員不足の埋め合わせに活用している公立校も、遠からず外部に依存する時代が来ると言われている。同社の特徴は、教育関連の人材を多く抱えているところにある。なかでも教員の人材紹介サービスのニーズの高まりを受け、教員の転職をサポートするための求人サイトなどを拡充しており、実績のある私立校はもちろん、公立校に対しても適材の紹介・派遣を強化している。
(3) 部活動指導員・部活動の運営受託
学校現場において部活動による教員の負担が増えており、教員本来の業務である授業に集中できないことや、部活動の指導に割く時間外労働の多さ、部活動に対するノウハウや責任の所在などが大きな課題となっている。同社は、全国の学校に対して部活動の運営を受託するサービスを展開している。部活動の運営を外部に委託することで様々な課題が解消され、教員の働き方改革の実現につながるが、さらに、ハイレベルな競技実績や理論を有する外部コーチを派遣できれば生徒の満足度も向上する。このため現在、同社による部活動の運営受託は私立学校を中心に人気となっており、公立学校でも予算を確保する動きが見られるようになった。なお、部活動指導員は、アスリートのセカンドキャリアとしても有効な職業である。
(4) 日本語教師・ALT・介助員
少子高齢化に伴う人材不足を背景に日本企業では外国人材の採用ニーズが高まっており、それに伴って人材が定着するための語学支援のニーズが広がっている。同社は、外国人材を雇用する企業に対し、日本語教師の派遣やオンライン授業の配信、日本語教室の運営受託など様々な語学支援サービスを展開している。2030年には国内で600万人を超える人手不足に陥るとの予測があるうえ、インバウンド需要も復活してきたことから、人材サービスのなかでも中長期的に大きく伸びる分野と考えられている。また、グローバル化に伴って日本人の語学力の向上が求められるようになってきたことを背景に、一般の小中学校や高等学校にALTを配置することになっている。同時に、一般の教室に外国人の子どもや障がいのある児童が在籍することが多くなってきことを受け、同社は、個別のニーズにもしっかり対応するため、日本語教師や介助員などの派遣も行っている。ダイバーシティの観点から重要な取り組みと言えよう。
(5) 学内塾の運営受託
同社は、私立中高一貫校、公立中学・高校に対して、学内塾の運営を受託するサービスを展開している。長年学習塾を運営してきたノウハウを生かし、放課後や土日、または早朝に、学校の教室において多彩なカリキュラムで課外授業をサポートしている。また、生徒の学習支援を行うチューター(塾内で学習補助を行う講師)や、進路相談を担当するカウンセラーによるサポートも行っている。少子化に伴い、特に私立学校の間で生徒獲得競争が激化しており、多くの学校は生き残りをかけて進学実績など特徴づくりを急いでいる。そうした学校が生き残るための差別化として、同社の学内塾に注目している。
(6) 塾講師
学習塾の講師は、大都市部に優秀な大学があるという供給の偏在性や、学生の進学・卒業などによる雇用の季節性から、採用難易度が高いと言われており、学習塾業界は慢性的な講師不足の状態にある。同社は、そうした課題を持つ競合の他社学習塾や予備校に対しても、専任講師やアルバイト講師を紹介・派遣するサービスを提供している。同社は「教えるシゴト」など自社媒体や各種有料媒体を通じて講師を集め、専任のコーディネーターが希望などを詳細にヒアリングして、講師一人ひとりの細かなニーズを汲み取る。一方、求人企業である学習塾の求人内容の詳細や個別の事情も予め聴取しておく。こうすることで、直接応募と比較して講師と学習塾双方のニーズがマッチングしやすくなり、自然と定着率も高くなる。競合する他社学習塾が顧客でもあるというユニークなビジネスで、同社にとって学習塾業界全体に流入する教育費がターゲットになっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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