rakumo Research Memo(8):4つの主要な経営施策の実行に加え、新たにM&Aを1件実行へ
2. 中長期成長に向けた2023年12月期の主要な施策
rakumo<4060>は2023年12月期に取り組むべき主要な施策として、(1)売上増加に向けた販売パートナーとの関係強化、(2)売上増加に向けたアップセル・クロスセル・低解約率の実現、(3)今後の成長に向けた新規プロダクト開発力強化、(4)今後の成長に向けた各種業務提携等の検討・実現、の4つを掲げている。
(1) 売上増加に向けた販売パートナーとの関係強化(人員強化を含む)
同社では高い売上成長を継続するためには導入サポート体制をさらに拡充させていくことが重要だと考えており、そのために販売パートナーとの協業や関係を強化していく方針を打ち出している。同社の販売パートナーは大きく1)既存の販売パートナー、2)ディストリビューションパートナー、3)新規販売パートナーの3つに大別されるが、各種販売パートナーの特長に応じて異なる戦略を実行していく計画である。特に既存の販売パートナーとの関係強化に関しては、販売パートナーが得意とするユーザー規模に応じたカスタムメイド的な戦略的アプローチを実行する意向であり、人的リソースへの投資も進めながらより案件をパートナーと共に創出するための体制拡充を進めている。また、ディストリビューションパートナーや新規販売パートナーに関しては、2次代理店の拡大なども含め、相対的に事業規模の小さな中小企業向けなどを中心に拡販を進めていく方針である。このように、クライアントの事業規模やユーザー数の違いなどに着目し、それぞれ異なるアプローチから全方位的にクライアントに対する営業活動を実施する計画である。
(2) 売上増加に向けたアップセル・クロスセル・低解約率の実現
同社では50万ユニークユーザーに対して100万ライセンスを付与しているため、単純計算で1ユーザーあたり2つのプロダクトを利用している計算となる。製品別にみると、「rakumoカレンダー」と「rakumoコンタクト」のライセンス数が最も多くなっているが、今後はカスタマーサポート部門の新設や増員による同社製品利用率(稼働率)の上昇、クライアントに対して積極的にインタビューを実施することでニーズを拾い上げ、アップセルやクロスセルを進める方針。現在、ストックベースでは「rakumo Basicパック」や「rakumo Suiteパック」といったパッケージ商品の販売比率(クライアント数ベース)は10%程度にとどまっているが、新規クライアントに限ってみると50%近くに達しており、今後は中長期的にアップセルやパッケージ商品の販売比率上昇による継続的なグロスMRRの上昇が見込まれよう。また、低解約率の実現に関しては、既存施策に加えて、同社グループ製品の活用を促すための能動的なオンボーディング(活用促進)施策の実施を進める計画である。
(3) 今後の成長に向けた新規プロダクト開発力強化
同社は継続的に新規プロダクトを生み出すための体制強化を進めている。期初計画では2023年12月期においてHR系の新規プロダクトをローンチする計画であった。HR系プロダクトは単なる人事情報の管理だけでなく、タレントマネジメントや人事評価システムなど今後の中長期的な事業領域の拡大につながる可能性があり、同社における今後の新規プロダクト開発の要となる可能性がある。同社のHR系プロダクトは人事部門や経営層だけでなく、幅広く一般の従業員にも使ってもらえるようなプロダクト設計を考えている。ただし、期初に計画していたHR系プロダクトのローンチ時期は2023年12月期から2024年12月期に若干ずれ込む可能性もあるため、本格的な業績寄与は来期からとなりそうだ。
(4) 今後の成長に向けた各種業務提携等の検討・実現
同社はアドバンテッジアドバイザーズとの資本業務提携を2023年5月に発表し、当該会社などが出資するファンドに対して第8回新株予約権および第1回無担保転換社債型新株予約権付社債を割り当てた。同社債により調達した資金は主に7月1日付で完全子会社化したアイヴィジョンの買収資金に充当された。アイヴィジョンは、IR動画や会社紹介・サービス紹介動画を中心とした映像制作・配信事業を手掛けており、2022年6月期の売上高は136百万円、営業利益は68百万円となっている。買収関連費用やのれん償却費の詳細金額は現在算定中だが、これら費用計上後でも十分、下期業績にプラス寄与が期待されるとみられる。また、アイヴィジョンの買収により、短期的な業績寄与のみならず、中長期的にも新規クライアント獲得に弾みがつくこと、新規プロダクトのローンチなどが期待され、一定のシナジー効果についても期待されよう。同社では従来から他社サービスの連携強化、M&Aの実行による事業拡大を目指しており、今回の買収もそれに沿った動きと考えられる。今後も年1件程度、徐々に規模の大きなM&Aが想定されるが、同社では割安に買収可能で同社企業価値にプラスとなるようなM&Aを実施することを大前提としており、同社のM&A戦略は今後も中長期的な企業価値向上にプラスに作用する可能性が高いと弊社は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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