ランドコンピュ Research Memo(4):パッケージベースSI・サービスが計画以上の成長(2)
a) Salesforce - クラウド型SFA・CRM用アプリケーション
米Salesforce社は、クラウド型のビジネスアプリケーションとなる営業支援(SFA)や顧客管理(CRM)などの機能を中核に、複数の機能を組み合わせて使えるプラットフォームを提供している。導入企業が世界で15万社以上と同分野で世界最大である。2000年に日本法人を設立している。ランドコンピュータ<3924>は、2010年4月よりSalesforceのビジネスを開始し、2016年11月には販売パートナー契約を締結した。2019年に中部地区において「Innovation Partner of the Year」を受賞した。現在は、Salesforce認定コンサルティングパートナー(Gold)、アプリケーションパートナーとなっている。これまで約500社、2,000件を超えるプロジェクト実績がある。多業種・多業務に及ぶ業務知見と、幅広い製品知識で最適なソリューションを提案する。業種としては、損保、保険代理店、大学、専門学校、塾・予備校、製造業(食品、機器、部品、ソフトウェア等)、飲食、卸売業、小売業、専門商社、アパレル、印刷・出版業、不動産、人材派遣、インターネットサービス、法律事務所、施設運営などの実績がある。2020年4月から、新設した「Salesforce推進室」によりSalesforceクラウドを事業部のみならず全社展開を開始したことから、同ビジネスの持続的成長につながっている。金融機関向けでは、情報系システムで採用されている。
同社は、パッケージ・サービスに関する自社のオリジナル商品のシリーズブランドとして「R&Driver」(ランドライバー)を展開している。Salesforce関連では、販売管理業務における顧客管理~商談管理~請求・入金・売掛管理を一括サポートし、請求・入金業務の効率を向上させる「necote for Salesforce」を開発・提供している。
b) SAP - 統合基幹業務パッケージ
ドイツSAP社は、1972年に設立され、基幹システムパッケージ(ERP)分野で世界トップとなる。2021年4月に、同社初のM&Aとして専業の(株)インフリーの全株式を取得し子会社化した。2001年創業のインフリーは、SAPの統合基幹業務パッケージ「SAP R/3」の導入コンサルティング及びアドオンソフトウェア開発に強みを持っており、2022年1月にSAP PartnerEdge Serviceパートナー認定を受けた。子会社化前の2020年7月期の売上高は330百万円であった。同社グループのSAP関連の連結売上高は、2021年3月期の69百万円からM&Aの寄与があった2022年3月期に483百万円へ急増した。M&A後の2年目となる2023年3月期も667百万円と好調が続く。シナジー効果を発揮するため、オフィスの統合や同社役員が子会社の代表取締役を務めるなどの改革を行った。インフリーが開発した教育ツールなどのリソースをグループ内で共有することで、グループ全体のSAP関連ビジネスの拡販に成功している。
c) SuperStream - 会計パッケージ
スーパーストリームは、1986年に設立され、メインフレーム対応一般会計システムGLを発売した。2022年3月に、会計パッケージ「SuperStream」の累計導入社数が1万社を突破。同社は、2022年4月に専業の(株)NESCO SUPER SOLUTIONを買収、子会社化した。NESCO SUPER SOLUTIONは、2008年に(株)ネスコがSuperStream事業部を分離・設立した。同子会社の商号は、2023年1月に(株)テクニゲートに変更された。新子会社との融和と経営資源を共有し相乗効果を早期に発揮するため、2022年12月に東京と大阪の事業所を統合した。子会社化する前の2021年3月期の売上高は586百万円であった。同社グループのSuperStreamを含む会計パッケージの連結売上高は、2021年3月期が269百万円、2022年3月期の295百万円から、買収効果もあり2023年3月期は837百万円へ膨らんだ。テクニゲートはインボイス制度に備えた電子帳簿保存法への対応を進めており、2023年3月期は端境期に当たった。2024年3月期は、対応パッケージへの更新需要が見込まれる。
納税者による“電子帳薄保存法”の利用状況は、2020年10月時点で大企業法人の3.3万社中72.7%、中小企業法人の309.9万社中4.8%、個人事業主525.1万人中1.2%であった。2022年1月の電子帳簿保存法の改正によって、電子取引については、紙での保存が禁止され、すべての事業に電子データによる保存が義務付けられた。宥恕期間は、2023年12月までの2年間であり、2024年1月から電子データの保存が必須となる。改正の主な目的は、経理業務のペーパーレス化、セキュリティ強化、働き方改革とDX化の推進になる。電子取引情報の電子保存義務化以外の改正点は、事前承認制度の廃止、タイムスタンプ要件の緩和、検索要件の緩和、適正事務処理要件の廃止、不正に対する罰則の強化などである。要件緩和により電子帳簿保存を導入しやすくする一方で、不正に対する罰則は強化している。
3. IT系及び業務系資格
(1) 資格保有者数
同社の強みは、優秀な技術者集団にある。IT系資格のみならず、金融、産業・流通、医療など顧客業務の理解を深める業務系資格の取得を積極的に推進している。2023年3月末現在、IT系資格と業務系資格の保有者数は延べ2,148人(内訳はIT系資格保有者数:1,886人、業務系資格保有者数:262人)であり、1人当たりの平均資格保有数は3.82であった。3期前と比べると、延べ資格者数は39.5%増、1人当たりの平均資格保有数は0.76件の増加であった。
業務系資格の取得を積極的に推進することにより、同社のエンジニアが顧客と同じ視点からシステムインテグレーション・サービスを提供できるため、結果として顧客満足度の向上、強固な信頼関係構築の原動力となっている。
(2) 新入社員教育
同社は、新入社員教育にも力を入れている。入社前研修として基本情報処理試験対策のe-ラーニングを受講するほか、入社後3ヵ月で社会人導入研修と基礎技術教育を実施する。この研修期間中に、プログラム開発の基本的な知識や、プログラミング言語、システム設計について学ぶ。カリキュラムには、Javaプログラミング入門、Javaプログラミング基礎、Javaプログラミング応用(DBアクセス編)、Javaアプリケーション開発基礎、JavaDBアクセスアプリ開発入門、Webアプリケーション開発基礎、Webアプリケーション構築演習、成果発表会が組まれている。単にプログラムが組めるようになるというだけでなく、プログラミングとデータベースについて、新人教育期間中に2つのベンダ資格にチャレンジするレベルの高い教育となる。新入社員研修にはコア協力会社社員の参加も認めており、2023年は自社の30人を含む総勢50人の研修を行っている。新入社員研修後は、配属先でのOJT教育に移行し、先輩社員がトレーナーとなりサポートする。
採用にあたっては、文系/理系、学部卒/院卒を問わない。教育制度が充実しているため、「論理的思考能力」と「学ぶ意欲」「IT業界、SEへの熱意」を重視し、制度を積極的に利用して成長したいという向上心のある人物を採用するようにしている。2023年4月には第二新卒を含め30名が入社し、2024年春は35~40名の採用を計画している。
同社の研修体制は体系化されており、IT系の技術研修、ヒューマンスキル研修、階層別研修、管理職研修、プロジェクトマネジメント研修、品質管理研修、資格取得対策研修、新技術勉強会など多岐にわたる。DX推進本部を中心とした「グラフィカル・ユーザ・インターフェース/GUI」の視覚的な操作を用いることで、極めて短期間でのシステム開発を実現するローコード開発など、新デジタル技術を活用したアジャイル開発などにも取り組んでいる。クラウド系の技術習得は、インフラソリューション・サービスだけでなく、全社的な広がりを見せている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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