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シナネンHD Research Memo(9):セグメント別では非エネルギー事業が収益貢献


*14:19JST シナネンHD Research Memo(9):セグメント別では非エネルギー事業が収益貢献 ■シナネンホールディングス<8132>の業績動向

2. 2023年3月期のセグメント別業績動向
2023年3月期のセグメント別業績(概数)は、エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)が売上高81,419百万円(前期比11.3%増)、営業利益150百万円(同85.5%減)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)が売上高241,251百万円(同22.0%増)、営業損失346百万円(前期は営業利益573百万円)、非エネルギーが売上高19,354百万円(同6.9%増)、営業利益856百万円(同324.9%増)となった。BtoC事業、BtoB事業ともに石油類とLPガスは例年並みに戻ってきたが電力の苦戦が大きく影響した一方、非エネルギー事業はシェアサイクル事業などが増益に貢献した。なお、所有していた老人ホームの売却(2022年2月)による賃貸収入の減少と、中長期成長に向けたシステムや人財への投資拡大を背景に、調整額が売上・利益ともに減少した。

セグメント別の状況に関して、BtoC事業の売上高は、原油価格やプロパンCPの高騰に伴い、主力のLPガス・灯油販売の単価が大幅に上昇したため増収となった。利益面では、LPガスが順調に拡大したほか住設機器が好調となったが、調達コストが上昇した電力販売が大きく売上総利益を低下させた。なお、新たな収益源確保に向けた取り組みとして、東北エリアで集合住宅向け建物維持管理事業、関東エリアでは不動産の売買・管理などを行う不動産事業を開始した。

BtoB事業の売上高は、BtoC事業と同様に原油価格の高騰に伴い、主力の石油事業で販売単価が大幅に上昇して増収となった。利益面では、船舶燃料部門における長期契約案件の獲得や、軽油の販売機能を強化したオイルスクエアでの拡販、スポット在庫の貢献などにより、石油類で売上総利益が増加したが、調達コストの上昇に対して価格転嫁が遅れた電力事業で、BtoC事業と同様に売上総利益が大きく悪化して赤字となった。なお、当初見込んでいた計画及び開発が著しく困難になったと判断し、特別損失を計上した韓国における大型陸上風力発電事業は、現在、株式の売却可能性を含めて検討しているところである。

非エネルギー事業は、抗菌事業でコロナ禍の需要が一服したものの、シェアサイクル事業やシステム事業などが好調に推移したため増収増益となった。個別の事業では、自転車事業は、上海ロックダウンなどの影響で続いていた世界的な部品不足の解消、海外輸送費や原材料価格の高騰に対応した価格改定の実施、新規法人開拓の推進により増収増益となった。シェアサイクル事業は、駅前など収益性の高いエリアを中心に「ダイチャリ」の拠点開発を推進、新たな地方自治体との実証実験も進めたことで、ステーション数は3,100ヶ所超、設置自転車数は10,000台を超える規模まで拡大した(2023年3月末現在)。利用データを活用した運営効率化の取り組みや、2022年4月に行った価格改定の効果によって、設立以来初の黒字を達成した。

環境・リサイクル事業は、主力の「木くずリサイクル」において、新設住宅着工戸数の伸び悩みにより建築系廃棄物の発生が減少した影響で減収減益となった。抗菌事業は、中国や台湾での拡販や「吸着剤」の事業拡大を進めたが、コロナ禍における抗菌需要が一服した影響で減収減益となった。システム事業は、主力のLPガス基幹業務システムが安定して収益に貢献、電力自由化に対応した顧客情報システム(電力CIS)も顧客管理軒数が870万軒を超える規模にまで拡大するなど好調に推移した。建物維持管理事業の中核となるタカラビルメンは、マンションや斎場など定期管理業務が安定して収益貢献、集合住宅の運営管理業務のエリア拡大も順調に進んで増収増益となった。


平常化に向け収益が大幅に改善する見込み
3. 2024年3月期の業績見通し
第三次中期経営計画の初年度となる2024年3月期の業績見通しについて同社は、売上高360,000百万円(前期比5.2%増)、営業利益2,000百万円(同123.2%増)、経常利益2,300百万円(同87.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,300百万円(同171.5%増)と、増収大幅増益による業績回復を見込んでいる。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期計上した韓国の大型陸上風力発電事業に関連した特別損失などの影響がなくなるため、営業利益や経常利益を上回る増益予想となっている。

主力の石油・ガス事業を取り巻く環境は、国内人口の減少、省エネ機器の普及、ライフスタイルの変化などによりエネルギー需要の減少傾向が続き、引き続き厳しい状況にある。また、脱炭素やSDGsに対する世界的な意識の高まりに加え、国内では2050年のカーボンニュートラル実現に向けた動きが加速しているところである。このため総合エネルギーサービス企業グループとして責任ある対応が強く求められている同社は、こうした経営環境の変化や時代の潮流に対応すべく2023年4月にスタートした第三次中期経営計画に則して、経営基盤の強化を加速させるとともに成長戦略を確実に実行する。そのなかでも2024年3月期は特に、投資基準の明確化に取り組むとともに、前期ボラティリティ上昇の主因となった電力事業のリスク管理を強化する方針である。

売上高については、石油・ガス事業で前提となる相場を横ばいと見る一方、2023年3月期に2回実施したLPガスや電力事業の価格改定の効果、非エネルギー事業全般の安定成長などにより、増収を確保する見通しとなっている。利益面では、特に前上期に好調だった石油事業の採算が平準化、次世代システムなどIT関連費用や人件費、2024年問題※を前にした物流関係費などの増加が見込まれる一方、低迷していた電力事業の収益が改善、LPガス事業における価格改定の通期寄与もあって、営業利益は大きく改善する予想となっている。しかし、第1四半期については、石油事業で好採算のスポット在庫の反動及び電力事業でポジション調整を予定しているため厳しい業績を見込んでいるが、下期は価格改定の効果が出揃うことから大幅な利益回復を予想している。なお、非エネルギー事業では、シェアサイクル事業は価格改定の影響が一巡することから成長は継続するものの利益の伸び鈍化、建物維持管理は新たに受託した公営斎場運営などによる安定収益化を見込んでいる。また、グループシナジーやスケールメリットを目的に、2023年10月に建物維持管理事業を手掛けるグループ4社を統合、新会社となる「シナネンアクシア(株)」を設立し、総合建物メンテナンス会社としてサービス展開を進めていく予定となっている。

※2024年問題:2024年4月以降、自動車運転業務の時間外労働時間を960時間とする規制が設けられることによって生じる様々な問題を指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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