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デリカフHD Research Memo(3):2023年3月期は過去最高売上更新と3期振りの黒字転換を果たす


*15:03JST デリカフHD Research Memo(3):2023年3月期は過去最高売上更新と3期振りの黒字転換を果たす ■業績動向

1. 2023年3月期の業績概要
デリカフーズホールディングス<3392>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比20.5%増の47,925百万円、営業利益で635百万円(前期は397百万円の損失)、経常利益で769百万円(同242百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で702百万円(同746百万円の損失)と急回復した。コロナ禍による行動制限が解除され経済活動の正常化とともに外食需要が回復してきたほか、コロナ禍を契機に取り組んできた事業ポートフォリオの変革が奏功し、売上高は3期ぶりに過去最高を更新した。利益面では人件費や物流費、エネルギーコストの増加があったものの、増収効果に加えて仕入率の改善や売価転嫁に取り組んだことが奏功して3期振りの黒字転換を果たし、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は8期ぶりに過去最高を更新した。

2020年3月期以降の売上高推移を外食業界と外食業界以外に分けて見ると、外食業界向けはコロナ禍で2021年3期に前期比70%弱の水準に落ち込んだが、コロナ禍に強い業態(ファストフード、テイクアウト、デリバリー業態)の顧客開拓に注力してきたことで2022年3月期は外食業界全体の縮小が続くなか増収に転じた。2023年3月期は外食需要全般が回復に向かうなかで、同社の売上もさらに拡大した。2020年3月期比で見ると、同社の外食向け売上が93.4%の水準まで回復したのに対して外食市場全体は73.1%の水準にとどまっており、外食業界におけるシェアも拡大してきたことが窺える(コロナ禍に強い業態を除いたベースでも80%の水準まで回復)。シェア拡大の要因としては同社が全国規模で安定した物流サービスを提供できる基盤を構築している点が評価され、取引先の集約化を進めてコスト低減を図ろうとする大手外食チェーンにおいて取引シェアが拡大するケースが多く見られた。

外食業界以外の売上高も事業ポートフォリオの変革によって売上拡大に貢献した。量販・小売店や中食、給食業界で顧客開拓を進め、新規事業としてBtoC事業やミールキット事業などを育成し、これら合計売上高は2020年3月期の約68億円から2023年3月期は約165億円と3年間で2.4倍に急拡大した。売上構成比でも16.7%から34.4%に上昇しており、この3年間で外食業界の動向に影響を受けにくい、バランスの取れた収益構造に転換したと言える。

営業利益率は前期比で2.3ポイント改善した。2023年3月期は異常気象や台風による被害が少なく青果物の市況もおおむね安定して推移したこともあり、仕入率が60.2%から58.8%に低下したほか、増収効果により人件費率が20.5%から20.3%に、物流費率が8.2%から7.4%に低下し、エネルギー価格高騰による水道光熱費率の上昇を吸収した。人件費率についてはベトナム人実習生の受け入れを2022年5月より再開したことも寄与した。前期まではコストの高い短期派遣などで対応していた。物流費率については燃料費の上昇があったものの、物流量の増加による積載率の上昇が寄与した。エネルギーコストや人件費、物流費の増加、円安による輸入品の仕入コスト増に対応すべく売価改善にも取り組み、通期で18.7億円の改善効果につながった。

同社は事業の拡大に向け人員体制の強化を進めている。2023年3月末時点の従業員数は前期末比16名増加の667名、臨時雇用者数は同295名増加の2,133名といずれも過去最高水準となった。

(1) 商品別・業態別売上動向
商品別売上高を見ると、カット野菜は前期比15.4%増の21,689百万円、ホール野菜は同27.6%増の18,680百万円、その他(ミールキット含む)は同19.0%増の7,554百万円とすべての部門で2ケタ増収となった。カット野菜(真空加熱野菜含む)は、人手不足と簡便に調理できる利便性の高さを背景に外食業界で利用が広がっているほか、量販・小売業界向けや給食事業者向けでの採用も進み、2期連続で過去最高を更新した。ホール野菜についても外食業界向けの回復に加えて量販・小売店向けの増加により4期ぶりに過去最高を更新した。

BtoC事業の売上高(ミールキット事業含む)は、前期比90.2%増の3,794百万円と急成長した。2021年より開始したミールキットの製造工場(デリカフーズ長崎)の売上が順調に増加したほか、業務提携先であるワタミのミールキット宅配食「あっ!とごはん」やそのほかの流通企業向けなどのOEM商品の販売が2022年夏以降拡大した。自社ブランドである「楽彩」の売上規模はまだ小さいものの、スマートフォン公式アプリも2022年8月にリリースするなど、事業拡大に向けた先行投資を着実に推進しており、販売ネットワーク(商品受取店舗)は2022年4月の12店舗から2023年3月には140店舗以上((株)JR東日本クロスステーションが運営するNewdaysで101店舗、キャンプ場を運営する(株)Recampで18拠点、フィットネスクラブ等)に拡大している。

業界別売上高増減率を同社が開示している売上構成比率から試算すると、主力の外食業界向けは前期比27.4%増と大幅増となった。主要顧客先である大手ファミリーレストランや焼肉、居酒屋チェーンなどで客足が戻り、店舗あたりの売上が回復してきたことに加え、大手チェーンで販売対象エリアが広がるなど顧客先での取引シェアが拡大したことが要因だ。

また、コロナ禍に強い外食向けは前期比9.8%増と堅調に推移した。外食する機会が増えたことによりテイクアウトやデリバリーのニーズは伸び悩んだものの大手ファストフードチェーン向けが伸長し、給食事業者向けはコロナ禍以降獲得した新規顧客からの売上が増えたことで同19.2%増と続伸した。一方、全体の受注量が拡大するなかで採算の低い取引の見直しを進めている。量販・小売業界向けは同5.4%増、コンビニエンスストア向けは同5.3%、中食向けは同1.7%減に留まった。

(2) 事業セグメント別業績
青果物事業の売上高は前期比20.4%増の47,348百万円、セグメント利益(経常利益)は715百万円(前期は322百万円の損失)となった。前述したように外食業界向けを中心に売上高が拡大し、仕入率及び売価の改善が進んだことが増収増益要因となった。

物流事業の売上高は前期比10.9%増の3,779百万円、セグメント利益は同156.6%増の38百万円となった。売上高はグループ内取引が拡大したことに加え、外部顧客向けについても同28.1%増の488百万円と増収基調が続いた。トラックの空きスペースを利用した受託物流サービス(他社商材の配送)が順調に拡大した。同社では自社トラックの稼働率を上げるため、今後も受託物流サービスを積極的に推進する方針である。

研究開発・分析事業の売上高は前期比5.2%減の99百万円、セグメント損失は10百万円(前期は9百万円の利益)となった。売上高は大手企業からの検証試験の受託分析サービスやJAXA補助事業※、コンサルティング事業などが順調に推移したが、グループ内研究委託の減少により減収となった。利益面では、人員増に伴う人件費の増加が減益要因となった。

※JAXA補助事業とは、「資源循環社会に向けた自立循環型水耕栽培システム(地産地消型探査技術)」共同研究事業のことで、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人千葉大学、菱熱工業(株)の産官学4機関と連携した共同研究プロジェクトとなる(事業実施期間は2020年11月~2022年10月)。同社グループでは、野菜残渣の提供、残渣分解装置の設置・稼働、野菜残渣や液化堆肥、環境浄化型植物等の評価・分析を行った。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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