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クオールHD Research Memo(9):保険薬局事業は店舗数の拡大と在宅調剤の強化、DX推進による差別化等に注力


*15:59JST クオールHD Research Memo(9):保険薬局事業は店舗数の拡大と在宅調剤の強化、DX推進による差別化等に注力 ■クオールホールディングス<3034>の中長期の成長戦略と進捗状況

2. 保険薬局事業の成長戦略と進捗状況
保険薬局事業では、「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」を基本戦略として成長を目指していく。

(1) 戦略的出店による規模の拡大
店舗数については自力出店で年間10~20店舗を行い、M&Aにより年間30~70店舗を獲得していくことで、1,000店舗を当面の目標としている。当初は2023年3月期の到達を目標としていたが、コロナ禍の影響でM&Aのペースが鈍ったため、今のペースでいけば2025年3月期には到達するペースとなる(大型M&Aが実現すれば前倒しで達成する可能性有り)。出店ターゲットとするエリアは、3大都市圏等人口の多いエリアが中心で、ドミナント出店により効率的な店舗数拡大を目指す。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携を取りやすいところを対象に進める方針だ。

店舗形態としては、同社が強みとするマンツーマン薬局での出店を継続し、M&Aの対象についても同様となる。異業種連携によるヘルスケア薬局の店舗数については、2023年3月末時点で45店舗となっている。内訳は、ローソン協業店が36店舗、ビックカメラ内店舗が5店舗、無印良品内店舗が2店舗、駅ナカが2店舗である。このうち、主力のローソン協業店については認知度の向上によって収益力も向上しており、今後も在宅調剤事業を拡大するなかでの差別化戦略として注力していく。

そのほか戦略的出店として、超高齢社会の到来で求められる地域医療の充実を目指し、在宅調剤の専門/重点薬局の出店を強化していく方針だ。現在、専門薬局で5店舗、重点薬局で10店舗の合計15店舗を展開しているが、数年後に50店舗まで拡大していく。在宅患者訪問薬剤管理指導料の条件となる半径16km圏内で介護施設など複数の施設と契約することにより安定した売上が見込めることになる。在宅施設・患者向けの専用棚を設けるなど初期投資が通常店舗よりもやや大きくなるため開店初期はコストが先行するが、処方箋単価は在宅患者訪問薬剤管理指導料※が上乗せされるため平均(約9,500円)より1.5倍程度高くなり、契約施設数を確保できれば収益力の高い店舗となる。

※在宅患者訪問薬剤管理指導料として、単一建物内の患者が1人の場合6,500円、2~9人で3,200円、10人以上で2,900円が加算される(患者1人当たり月4回まで(末期悪性腫瘍患者などの場合は週2回かつ月8回))ほか、在宅患者調剤加算として150円が付く。



調剤薬局業界では、2020年から解禁されたオンライン服薬指導や2021年8月より導入された機能別認定制度に加えて、2023年からは電子処方箋の運用も開始された。大手企業ではLINEのミニアプリを活用して顧客の囲い込みに取り組むなど、今後は薬局運営においてITを活用したサービスの提供が重要になってくるものと想定される。一方、こうした体制を構築していくためには一定規模以上の資金力が必要となり、大手企業による寡占化が進むと見られている根拠の1つとなっている。また、調剤薬局は全国に約6万店舗あり、市場規模としては2021年度で約7.7兆円の規模となっているが、2015年度(市場規模7.8兆円、薬局数5.8万局)から比較すると、薬価引き下げの影響によりほぼ頭打ちとなる一方で、薬局数はドラッグストアの出店もあり若干ながら増加しており、競争が激化する状況にある。

こうしたなかで、大手調剤薬局は自力出店やM&Aによって店舗数を拡大することで売上成長を続けていることになる。同社もそのうちの1社で、2015年度から2021年度までの年平均成長率を見ると、調剤売上高で5.3%、店舗数で7.2%とそれぞれ業界全体の成長率(調剤売上-0.3%、薬局数0.9%)を大きく上回っている。現状、調剤薬局市場で上位10社の売上合計は1.4兆円程度であり、市場シェアに換算すると約19%の水準となる。ドラッグストア業界が業界再編により上位10社で70%以上のシェアを占めていることを考えれば、調剤薬局業界は今後より一層寡占化が進む可能性が高い。同社が自力出店だけでなくM&Aを活用しながら出店を拡大していく戦略は理に適っており、中期的に店舗数拡大によって持続的な成長を実現していくことは可能と弊社では考えている。なお、M&Aの基準について同社は売上規模やシナジー効果の有無、投資回収期間等、社内で厳格な基準を定めて可否を判断するようにしている。

(2) 薬局の価値創出
同社では「薬局の価値創出」に向けた取り組みとして、国民から求められる質の高い薬局づくりを展開してきた。例えば、地域のかかりつけ薬局としての機能だけでなく、市販薬や介護、食事・栄養摂取など健康に関する様々な相談を受けることが可能な「健康サポート薬局」について、2022年11月時点で157店舗が認定されている。また、2021年8月から導入された薬局の機能別認定制度において、「地域連携薬局」※1で154店舗、「専門医療機関連携薬局」※2で10店舗がそれぞれ認定されている(2023年5月末時点)。同制度は、超高齢化社会の到来で医療・介護体制を円滑に進めていくための「地域包括ケアシステム」を構築するための施策の1つと考えられる。現状、収益への影響は出ていないが、今後の調剤報酬改定において調剤技術料の算定に影響する可能性がある。このため同社は今後も認定取得を推進し、将来的にはすべての薬局で「地域連携薬局」あるいは「専門医療機関連携薬局」の認定を目指す。

※1 入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局。
※2 がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局。


また、2023年度も重点施策として「在宅調剤事業の強化」と「DXの推進」に取り組んでいる。調剤市場全体に占める比率はまだ数%と低いが、団塊の世代が75歳を迎える2025年以降は在宅での医療・介護サービスが増えることによって在宅調剤の市場も高成長が見込まれている。介護施設など施設系の開拓と同時に個人宅向けへの対応も注力する方針だ。在宅調剤の売上目標として2024年3月期に100億円を掲げており、契約介護施設数については2021年4月時点から25%の増加を見込んでいる。

一方、もう1つの重点施策として取り組んでいる「DXの推進」では、薬局内でのIT活用による業務効率化(自動精算機の導入等)だけでなく、LINEの公式アカウントを活用して顧客の利便性向上につながる各種サービスの開発・提供に取り組み顧客の囲い込みを進めている。具体的には、2022年4月から処方箋予約受付サービスを開始したほか、即日配送機能やオンライン服薬指導、お薬手帳自動連携機能などのサービスも順次拡大し、ユーザーの利便性向上を図っている。これら取り組みによって、LINE公式アカウントの登録ユーザー数も2023年5月末時点で14万人超と半年前の2倍に増加した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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