ベネ・ワン Research Memo(1):2023年3月期は成長投資により増収減益も、総会員数は順調に拡大
ベネフィット・ワン<2412>は、企業の福利厚生代行サービスを中心とした会員制サービス事業を展開している。福利厚生事業を主軸にヘルスケア事業、インセンティブ事業などを行っている。会員データを「ベネワン・プラットフォーム」に集約し、利用者の利便性を高めることで会員数の拡大を推進している。また、同社の事業セグメントに給与天引きサービスを追加し、決済代行ビジネスの確立と新収益基盤への育成にも注力している。2023年5月には新中期経営計画を策定し、さらなる会員数の拡大とペイメント事業の収益化に注力する方針だ。人事関連のビッグデータもプラットフォームに組み込み、顧客の人事分野でのデジタル化を推進することにより、長期的には「福利厚生のリーディングカンパニーから、HRDXのリーディングカンパニーへ」の変革も目指している。
1. 2023年3月期の連結業績概要
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比10.5%増の42,376百万円、営業利益が同17.9%減の10,484百万円、経常利益が同17.6%減の10,565百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同14.5%減の7,655百万円となった。売上高に関しては、主力の福利厚生・パーソナル・CRM事業が堅調に推移したものの、ヘルスケア事業の保健指導、インセンティブ事業が想定を下回って推移した。ヘルスケアのワクチン接種支援事業の売上高は、前期比では減少したものの、期初の計画を大幅に上回り、連結ベースの増収に寄与した。利益面では、(株)JTBベネフィットの統合効果もあり福利厚生・パーソナル・CRM事業の利益が想定を上回った。ワクチン接種支援事業も好調で、計画を大きく上回って着地した。一方、ヘルスケア事業の保健指導、インセンティブ事業の進捗は計画を下回り計画未達の一因となった。福利厚生事業の会員数は前年4月比46万人増の948万人に増加した。同社サービスに対するニーズは、安定して推移していると弊社は見ている。
2. 2024年3月期の連結業績見通し
2024年3月期通期の連結業績予想は、売上高で前期比7.3%増の45,450百万円、営業利益で同3.3%増の10,830百万円、経常利益で同3.8%増の10,970百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同4.6%減の7,300百万円としている。ヘルスケアのワクチン接種支援事業とペイメント事業を除くすべての事業セグメントで増収増益を計画している。特にヘルスケア事業の保健指導とインセンティブ事業に関しては、事業環境の追い風に加え、システム投資効果等も寄与し、大幅な増収増益を見込んでいる。同社は将来の成長加速に向けて人・システム・マーケティングへの投資を引き続き積極的に行っていく。加えて、営業人員の増強も計画しており、新規顧客開拓も進む見通しだ。こうした業績拡大と生産性の向上によって、成長投資を行いながらも利益を積み上げることができると弊社は見ている。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比で減益となっているのは、2023年3月期に発生した一過性の投資有価証券売却益を2024年3月期は見込んでいないことによるものである。
3. 成長戦略
同社は2023年5月に、3ヶ年の新中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を発表した。新中期経営計画においても「収益構造の多重化と会員基盤のさらなる拡大により、最終的には日本人全員が使用する福利厚生インフラを構築する」という土台となる世界観を変えることなく、引き続き会員基盤の拡大と決済事業の収益化を中核戦略として事業を遂行していく。数値目標として2026年3月期に売上高70,900百万円、営業利益22,500百万円、営業利益率31.7%を目指す。同一労働同一賃金などの社会的背景が同社の事業拡大にとって追い風となることが想定されるほか、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)による先行きの不確実性を受けて意思決定を先延ばしにしていた企業経営者が同社サービスを導入することも期待できる。生産性向上のための拠点移管、システム開発内製化のための人員増強などが着実に実施されており、今後収益性の高まりが期待される。
■Key Points
・2023年3月期は成長投資を実施したことにより、増収減益も会員数は堅調に推移
・2024年3月期は成長投資を継続しながらも増益を確保する想定
・2023年5月に新中期経営計画を策定。世界観、戦略は堅持しつつ、さらなる業績拡大を目指す
・企業の健康経営、人材不足等が同社の事業へ追い風
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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