Iスペース Research Memo(4):サービス業界からの広告出稿やストアフロントアフィリエイトが2ケタ増
2. 事業セグメント別の動向
(1) インターネット広告事業
インターネット広告事業の売上高(社内取引高含む)は前年同期比5.2%増の2,338百万円、取扱高ベースで同7.4%増の12,149百万円、事業利益は同4.2%増の661百万円と増収増益基調が続いた。このうち、国内アフィリエイト広告の取扱高は、同6.8%増の11,821百万円と2期連続で増加した。カテゴリー別の売上動向を見ると、金融分野が減少、EC分野も低迷が続いたものの、サービス分野(人材派遣・エステ・マッチングサービス)とストアフロントアフィリエイトがそれぞれ2ケタ増と好調に推移し、収益のけん引役となった。
サービス分野では特に人材派遣が好調で、エステやマッチングアプリ等の需要も堅調に推移した。ストアフロントアフィリエイトについては、スマートフォン向けセキュリティソフトの好調が続いた。継続課金型サービスとなるため、契約件数の積み上がりとともに売上高も増加する格好となっている。また、新商材として2023年1月よりスマートフォンユーザー向けに容量無制限でデータをクラウド上にバックアップできるサービス「ポケットバックアップ」(月額500円(税抜))の提供を開始した。類似のサービスが既にあるため、当初の計画には届かなかったものの、月間数千件ペースで契約を獲得できているもようだ。自社コンテンツとなるため売上総利益率も高く、今後は取扱店舗数を増やしていきながら契約件数のさらなる積み上げを図っていく方針だ。
一方、海外事業の取扱高(ベトナム関連会社含む)は、前年同期比25.3%増の1,799百万円と半期ベースで過去最高を更新したが、第2四半期だけで見れば同2.0%減、前四半期比では38.7%減と失速した格好となった。失速の原因は、取扱高の8割強を占めるベトナム関連会社によるもので、ベトナムで主要カテゴリーの1つを占めていた金融分野が、当局の金融規制発令を契機に広告をストップしてしまったことが要因だ。この結果、ベトナム関連会社の持分法投資利益も第1四半期の49百万円から第2四半期は2百万円に減少した。このためベトナムでは金融以外の他業界のクライアント開拓を進めているほか、200名超に増えていた人員を一部削減するなどして収益回復に取り組んでいる状況となっている。そのほか、連結子会社4社(インドネシア、タイ、シンガポール、マレーシア)については、それぞれ着実に取扱高を伸ばしている。損益面では、インドネシアが黒字化しており、その他3社については若干の損失が続いている状況に変わりない。それぞれベトナムと比べると取扱高が小さいため、クライアント企業の開拓が課題となる。
(2) メディア運営事業
メディア運営事業の売上高(社内取引高含む)は前年同期比11.6%増の1,438百万円、事業利益は同3.5%増の299百万円と過去最高を更新した。売上高の内訳を見ると、「ママスタ」を中心としたコンテンツ型メディアが同0.7%増の770百万円と伸び悩んだ一方で、比較・検討型メディアが同27.3%増の667百万円と大きく伸長した。比較・検討型メディアの増収要因は、「派遣サーチ」「転職Finder」など人材サービス関連のメディアに対するアクセストレードのアフィリエイト案件の掲載件数増加(社内取引が増加)が主因となっている。比較・検討型メディアにおける外部顧客向けの売上高で見ると、前年同期比13.4%減の154百万円であった。利益率が低下した要因は、比較・検討型メディアの集客施策として広告費が増加したことに加えて、収益性の高い「ママスタ」の広告単価が第2四半期に入って下落し、広告収入が落ち込んだことによる。
「ママスタ」の広告単価下落の要因は、ネットワーク広告表示規制を受けた影響※でアドネットワークを通じた広告配信ボリュームが第2四半期に入って減少し、需給バランスが軟化したためで、第2四半期のアドネットワークの広告単価は前年同期比で3割近く下落したものと見られる。コンテンツ型メディアの四半期ベースの売上推移を見ると、第1四半期の422百万円から第2四半期は348百万円と前四半期で17.5%減少したが、主力となる「ママスタ」のPV数については前四半期比で3%増と堅調に推移しており、広告単価の下落が売上減に直結したと考えられる。
※「ママスタ」のサイト画面に広告枠数を増やしすぎた結果、ユーザーが意図せず広告枠をクリックするケースが増え(画面デザインの問題)、UXを阻害しているサイトであると検索エンジン側で認識されたことが、配信ボリュームの減少につながったと同社では分析している。
運営メディアの四半期別UU数の動向を見ると、第2四半期は前年同期比11.5%増と2ケタ増ペースが続いた。「ママスタ」についても同9.5%増と着実に増加しているが、その他のコンテンツ型メディアや比較・検討型メディアも順調に訪問者数が増加していることがうかがえる。
なお、学習塾ポータルサイトの「塾シル」については、掲載教室数が10,000教室間近と前期末の約7,900教室から大きく増加した。複数の大手学習塾の掲載が決まったためで今後の収益化に向けて、良い方向に進んでいるものと評価される。とは言え、業界最大手の「塾ナビ」では掲載教室数が10万教室を超えているほか、その他にも「テラコヤプラス by Ameba」「塾選」など大手が複数あり、激しい競争が続いている状況に変わりない。売上高も前年同期比で横ばい水準にとどまっており、サイトの集客力強化が課題と言える。今後はSEO対策の強化とコンテンツの充実によりサイト訪問者数を増やし、売上高の増加に取り組んでいく方針となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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