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富士ソフト Research Memo(2):挑戦と創造の精神を礎に売上高3,000億円突破を目指す


*15:42JST 富士ソフト Research Memo(2):挑戦と創造の精神を礎に売上高3,000億円突破を目指す ■会社概要

富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、1970年当時、コンピュータ専門学校で講師を務めていた創業者である野澤宏氏がコンピュータ産業の将来性に着目し、自身に加え2名の教え子社員とともに自宅で開業した富士ソフトウエア研究所である。設立50周年を超えた今、連結子会社31社(うち4社が上場企業)、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万7千人超のグループにまで発展している。

企業規模が飛躍的な発展を遂げるなかでも、『もっと社会に役立つ もっとお客様に喜んでいただける もっと地球に優しい企業グループ そして「ゆとりとやりがい」』という基本方針の下で事業を通じた社会貢献を目指す創業者の経営哲学は一貫しており、グループ会社憲章や役員・社員心得の制定等を通じて企業理念としての形式知化が図られている。

なお、同社は「各企業が相互に独立会社としての尊厳と自主性・主体性を尊重する」とするグループ会社憲章の下で、親子上場戦略を進め子会社として4社の上場企業を擁している。親子上場戦略が持続的な価値創造・企業価値向上に反することは許されないが、事業会社は資本市場のみに存在するわけではなく、製品・サービス市場や労働市場において厳しい競争にさらされている事実は極めて重要である。各市場におけるメリット・デメリットを総合的に判断すれば、現時点における同社の親子上場戦略には納得できるものがある。

報告セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター等を行っている。

また、報告セグメントを横断する技術戦略として、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。こうした成長分野で技術を蓄積し磨き上げることは容易ではないものの、「AIS-CRM」領域の単体売上高が、2018年12月期の618億円から2022年12月期にかけて順調に成長し、1,122億円の実績を上げたことから、技術戦略に対する手応えと自信が一段と深まっている。

創業時のコンピュータ・オペレーターの派遣業務事業で基盤を築いた同社は、その後、ソフトウェア開発やシステム構築の事業領域に進出、コンピュータ産業の爆発的拡大を追い風に飛躍的な発展を遂げたわけだが、その成長要因として見逃せないのが、「新たな分野に挑戦し、事業を創造し、企業としての成長・革新を目指す攻めの経営姿勢」を創業来継続していることである。創業者を含む経営トップがコンピュータ社会の到来と発展を確信し、相当程度大きなリスクを負ってでも積極的な人材採用・技術者育成と自社にない技術や顧客基盤を取り込む補完的M&A戦略を推進してきた結果、独立系ながら売上高2,500億円超、連結従業員数17,000人規模の企業グループにまで発展した事実には重みがあると考えられよう。

実際、コンピュータ社会が現実化し国内ITサービス市場が6兆円規模に拡大するなかにあっても、売上高1,000億円大台を超える大手ITサービス企業は、メーカー系(富士通<6702>など)やユーザー系(NTTデータ<9613>など)、商社系(SCSK<9719>など)、外資系(日本IBM(株)など)がほぼすべてを占めており、創業来一貫して独立系と呼べる企業は同社を含めて3社に過ぎない。

同社は、2002年3月期に売上高1,000億円超グループ入りを実現したわけだが、その際の従業員数は単体で4,002名、連結で見れば6,353名と創業以来の積極的な人材採用・技術者育成に支えられた業容拡大であったことが窺える。また、1996年には金融系業務システムに強みを持つ(株)エービーシーと合併、その後も1999年に外資系を源流とするサイバネットシステム<4312>を連結子会社化、2002年には流通系業務システムを主力とする(株)マイカルシステムズ(現 ヴィンクス<3784>)を連結子会社化するなど、組込系/制御系ソフトウェア開発という自社の強みを補完する技術や顧客基盤を取り込むM&A戦略を推進したことも、単に追い風に乗るだけでは成し遂げられない売上高1,000億円の壁を突破するために不可欠な大英断であったと考える。

2011年3月期にかけてはリーマン・ショック等による減収局面を余儀なくされるも、2018年12月期に売上高2,000億円の大台乗せを達成、2022年12月期は2,787億円と、コロナ禍のなかでも過去最高売上高を更新している。そして、2022年2月に公表した中期経営計画では、ベンチャー魂と大手IT企業としての矜持を両立させる。ここでは、2024年12月期に売上高3,000億円突破を目指す目標を掲げていた。この目標数値は、同社の好調な事業環境の見通しと企業価値向上に資する施策の実行により、1年早い2023年12月期の達成を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)

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