rakumo Research Memo(6):主力のSaaSサービスの売上高は前期比16.9%増と高成長が続く見通し
1. 2023年12月期の業績見通し
rakumo<4060>の2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比13.7%増の1,246百万円、営業利益で同25.6%増の291百万円、経常利益で同26.4%増の285百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同6.9%増の197百万円の見通し。同社を取り巻く業界環境としては、Google Workspace及びSalesforce市場は引き続き高成長を続けているため、既存マーケットの開拓余地は十分に残っていると弊社では見ている。主力のSaaSサービスの売上高は、前期比16.9%増を見込んでおり、引き続き全体の売上拡大をけん引する見通しだ。一方、営業利益率は23.4%を見込んでおり、販売部門への先行投資及び円安進行により一時的に利益率が低下した2022年12月期から改善する見通し。同社は限界利益率が約90%と高く、売上増加が営業利益及び営業利益率の上昇に直結しやすいことから、さらなる円安進行などがなければ、売上高の継続的な増加に伴って利益率の上昇局面が続くと弊社では見ている。
新規プロダクト開発力強化など、4つの主要な施策を掲げる
2. 2023年12月期の主要な施策
同社は2023年12月期に取り組むべき主要な施策として、(1) 売上増加に向けた販売パートナーとの関係強化、(2) 売上増加に向けたアップセル・クロスセル・低解約率の実現、(3) 今後の成長に向けた新規プロダクト開発力強化、(4) 今後の成長に向けた各種業務提携等の検討・実現、の4つを掲げている。
(1) 売上増加に向けた販売パートナーとの関係強化(人員強化を含む)
同社は、売上増加を継続するために販売パートナーとの協業や関係を強化する。具体的には、クライアントの事業規模やユーザー数の違いなどに着目し、異なるアプローチから全方位的な営業活動を行う。同社の販売パートナーは(1) 既存販売パートナー、(2) ディストリビューションパートナー、(3) 新規販売パートナーの3つに大別されるが、各種販売パートナーの特長に応じて戦略を変えている。(1) 既存販売パートナーとの関係強化については、販売パートナーが得意とするユーザー規模に応じたカスタムメイド的な戦略的アプローチを実行する方針で、人的リソースへの投資も進めながら、パートナーと共に案件を創出する体制の拡充を進めている。(2) ディストリビューションパートナー及び(3) 新規販売パートナーについては、2次代理店の拡大なども含め、相対的に事業規模の小さな中小企業向けなどを中心に拡販を進める方針である。
(2) 売上増加に向けたアップセル・クロスセル・低解約率の実現
同社のプロダクト平均導入数は2プロダクト程度(50万UUに対して100万超のライセンスを付与していることから単純計算)であることから、プロダクト導入数の拡大余地は大きいと言える。同社は、カスタマーサクセス部門の新設や増員によって同社製品利用率(稼働率)の上昇を目指すほか、クライアントに対して積極的にインタビューを実施することでニーズを拾い上げ、アップセルやクロスセルを進める方針だ。パッケージプロダクトである「rakumo Basicパック」「rakumo Suiteパック」の販売比率(クライアント数ベース)は10%程度に留まっているが、新規クライアントに限れば50%近くに達しており、1社当たり販売額の上昇が期待できる。低解約率の維持については、既存の施策に加えて、同社グループ製品の活用を促すための能動的なオンボーディング(活用促進)施策を進める。
(3) 今後の成長に向けた新規プロダクト開発力強化
同社は継続的に新規プロダクトを生み出すための体制強化を進めている。2023年12月期にはHR系新規プロダクトのローンチを計画しているが、単なる人事情報の管理だけでなく、タレントマネジメントや人事評価システムなど中長期的な事業領域の拡大につながる可能性があり、今後の新規プロダクト開発の要となる。現時点では具体的な時期や料金体系は未定であり、2023年12月期業績予想には新規プロダクトの寄与は織り込んでいない。なお、人事部門や経営層だけでなく、幅広く一般の従業員も使えるプロダクト設計を考えているようだ。
(4) 今後の成長に向けた各種業務提携等の検討・実現
Google及びSalesforceのクラウドプラットフォームに依存する現状のビジネス領域については、他社サービス等の連携強化も含めた領域拡大を進めていく。加えて、これらのプラットフォームに依存しない新規領域へのビジネス展開も検討している。2022年6月に子会社化したgambaに続くM&Aとしては、セキュリティやコミュニケーション領域など、スタンドアローンでSaaSを展開している小規模なSaaS企業(売上規模で1~5億円程度)が候補になると見られる。なお、買収の方針としては、のれん償却後で利益が残せる企業を候補としている。2022年12月期末時点の現金及び預金は1,435百万円であり、デットファイナンスでも10億円超の調達が可能と弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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