テクマト Research Memo(7):情報基盤事業は採算重視の営業方針に切り替え以降も受注は好調を持続(2)
(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上収益は前年同期比0.8%増の3,364百万円と微増にとどまり、営業損失は97百万円(前年同期は32百万円の損失)となった。ただ、受注高は同10.4%増の3,691百万円と順調に伸び、受注残高も前年同期末比で23.8%増の4,284百万円と積み上がっていることから、先行きに関しては改善が見込める状況となっている。売上収益が伸び悩んだ要因は、CRM分野やソフトウェア品質保証分野でサブスクリプション型の受注案件が増加し、売上計上時期が繰延される傾向になったことや、受注時期が遅れたこと等が挙げられる。また、利益面では教育事業への積極的な投資を行ったことや、ビジネスソリューション分野で一部不採算案件が発生したことにより計画を下回った。
アプリケーション・サービス事業(単体)のストック売上比率については66.5%となった。前年同期はストック型ビジネスモデルである旧NOBORIの数値を含めて63.8%となっているが、旧NOBORIを除けば約50%だったと見られ、単体ベースのストック売上比率は同社の戦略どおり、順調に上昇していることが窺える。分野別で見てもそれぞれ上昇傾向にある。
分野別の動向を見ると、ソフトウェア品質保証分野は企業向けシステムや組み込みソフトウェアの品質を担保するテストツールの引き合いが好調を持続したが、サブスクリプション型ライセンスの受注が増加したことにより、売上収益は1ケタ台の伸びにとどまった。また、利益面では急激な円安進行の影響で若干減益となった。ただ、第3四半期から価格改定を実施したことにより、利益面でも増益に転じる見込みとなっている。
CRM分野は受注タイミングが全般的に第2四半期にずれ込んだことや、サブスクリプション型の契約が増加したこともあって売上収益は前年同期比横ばい水準にとどまったが、営業利益は増益を確保した。ただ、計画に対してはいずれも下回った。
ビジネスソリューション分野は、売上収益で前年同期比横ばい水準にとどまり、営業損失が拡大した。ベンチャーキャピタル向けシステムのリプレイス案件でカスタマイズに想定以上の時間を要したことから、数千万円規模の損失が発生した。同案件については第3四半期に納品できる見込みとなっており、さらに損失が広がるリスクはないものと思われる。子会社の山崎情報設計については、既存案件の対応にリソースが削がれて新規営業活動が停滞したことから減収減益となり、計画に対しても下回った。一方、カサレアルについては新人向けIT研修などの教育事業が好調で、おおむね計画どおりの増収増益となった。
新規事業となる教育分野については、営業・マーケティング活動を大幅に強化したことに加え、機能面での「ツムギノ」の優位性が口コミで広がってきたこともあり、先進的な教育方針を掲げる私立の中高一貫校や進学校のほか、国・公立校等も含めて数十校から受注を獲得するなど好調に推移した。また、競争力強化のため特許の取得も進めている。具体的には、新学習指導要領に対応する個別最適化されたプロジェクト型学習の実践を支援するための「時間割作成システム」、コメント投稿時に閲覧対象者(教師、保護者、生徒等)の範囲を簡単に指定でき、またコメント閲覧時に閲覧範囲の認識ができる「コメント投稿システム」、校務支援システムから出力する「通知表」などの各種帳票出力をより便利に行うための「帳票作成装置及び帳票作成方法」の特許を取得した。コミュニケーション・プラットフォーム上でのやり取りは情報漏洩リスクが存在するため、こうしたリスクを避ける機能は重要と考えられる。なお、運用開始時期は新学期が始まる4月に集中するため、現在はシステム導入に必要となる人的リソースの強化を進めている。同社では、今後も積極的な投資を進め、事業開始5年目となる2026年3月期の黒字化を目指している。
(3) 医療システム事業
医療システム事業の売上収益は前年同期比164.1%増の4,013百万円、営業利益は同195.5%増の748百万円となり、受注高で同246.9%増の5,287百万円、受注残高で前年同期末比170.3%増の11,348百万円といずれも大幅増となった。旧PSPの業績が新たに加わったほか、旧NOBORIも導入施設数の増加により収益が順調に拡大した。
期初計画では、旧PSPにおいてオンプレミス型PACSのクラウドシフトにより一時的な利益の落ち込みを想定していたが、既存顧客のリプレイス案件についてはほぼオンプレミス型での更新となったことから、売上収益、営業利益ともに計画を超過し、特に営業利益については大きく上回る格好となった。旧PSPの既存顧客はシステム変更に対して保守的な考えを持つ顧客が多いようで、クラウドシフトのペースは当初想定よりも緩やかに進む見通しだ。2023年3月期第2四半期累計におけるストック売上比率は56.4%となっている。
新規事業となるコンシューマ(患者)向けのPHRサービスやAIによる医用画像診断支援システムについては、先行投資を継続し着実に成果に結びつけている。PHRサービスについては大規模病院を中心に導入施設数が拡大しており、アプリ登録者数及び有料課金者数も増加傾向にある。収益化は数年先になると見られるが、個人で健康を管理するPHRサービスは将来的に普及が見込まれており、今後も投資を継続していく方針だ。また、AI画像診断支援システムについては複数の対象疾患で活用が進んでおり、保険適用の拡大が本格普及のカギを握るものと見られる。営業機能を担う合弁会社、エムスリーAI(株)をエムスリー<2413>と共同で2022年4月に設立しており、持分法による投資損失として4百万円を計上した。
そのほか、医知悟については読影件数の増加により、売上収益は2ケタ増となり計画を上回った。A-Lineについては医療機関の放射線量管理システム導入に対する投資意欲が依然、停滞傾向にあるものの、契約件数の増加により売上収益は前年同期比2ケタ増と会社計画どおりに推移した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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