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TrueData Research Memo(9):新サービスの取り組みで収益源の多様化。成長のためのポートフォリオ戦略


■中長期的な成長戦略

True Data<4416>は「データ」「テクノロジー」「活用ノウハウ」という3領域をワンストップで提供し事業を拡大してきた。今後もこの3領域において付加価値を高め、コスト効率を最大化していくことが、同社の中長期的な成長戦略のテーマと見て良いだろう。これまで培ってきたマーケティングサービスとシナジー効果が高いビジネスアナリティクス市場から、広告市場まで多面的な事業拡大を狙う。目標を達成するにはテクノロジーの観点からM&Aの機会もうかがう。対象領域の企業もシナジー効果が発揮できる可能性が高いテクノロジー技術を有する企業を優先し、取扱いサービスの拡大を目指す。数値目標はかかげてはいないものの、これまでの既存サービスと新規事業開拓を加速して推進していく方針である。顧客の獲得が順調に進めば2ケタ増収・増益を継続していく可能性は十分にある。

(1) ビジネスアナリティクス市場の開拓による収益の多様化
同社はビッグデータを用いてシナジー効果の生み出せる企業と協業を進める方針である。データ・市場測定を手掛けるニールセン、ソフトウエアソリューションを提供するSAPなどとアライアンス関係を構築している。これらのビジネスアナリティクス企業はビッグデータを用いて顧客に価値を提供する事業構造となっており、そのためにビジネスや業務の問題解決に必要なデータを必要な形で抽出する必要がある。具体的には「モデリング」「予測」「機械学習」「最適化」などのテクノロジーを駆使して顧客の意思決定を支援するが、そのためには判断の根拠となるデータを用いた分析が必要となる。同社の保有するドラッグストア業界のID-POSデータはデータカバー率が高く、消費者購買データを広く押さえているため、高付加価値のビジネスアナリティクスを手掛ける企業に提案が可能である。購買行動や属性をデジタル化することで、製造コストの削減・効率化の可視化も可能となる。また、それだけでなく在庫や輸送の効率化にも応用できる。また、それらのテクノロジーを使用したサービスを提供するパートナー企業がデータを用意できなかった場合に、同社の持つ消費者ビッグデータを用い分析を行うというビジネスモデルも有効である。

(2) 広告市場の開拓による収益の多様化
広告市場への参入にも具体的な取り組みを始めており、小売業の販売実績を持つID-POSデータを必要とする広告事業者との協業を行う方針である。これまでの広告ビジネスは、広告枠の取引による手数料ビジネスであった。限られた「広告枠」をその都度売買している「モノ」としての取引性が高いと言える。今後、デジタル化が広告市場サービスへの転換だと捉えるならば、単なる広告ではなく、情報を利用した効果を顧客に提案する「サービス化」がより実用性を伴い、必要となる。デジタル広告は生活者との接点が多様化したなかでマーケティング活動を行うため、デジタルを活用し人とモノやコトとの関係性がデータ化されていくようになる。広告・マーケティング活動はデータを活用した効率と効果の可視化がテーマとなり、広告も多様化していくと考えられる。データ収集・活用のノウハウを持つ同社は、そのような需要に応えられるデータやサービスを提供することができる。

(3) マーケティングサービスを推進する人員体制
同社はデータを付加価値の高いソリューションに変えるため、競争力強化の源泉となる人材の採用・育成の強化に努めている。エンジニア・データサイエンティストとして素養を備えた新卒の採用を始めている。モチベーションを高めるため次世代リーダー層へのコーチングプログラムが行われている。さらにキャリア形成の主体性を上げるために資格取得支援制度が拡大されるなど、技術革新への対応としてエンジニア・データサイエンティストのスキルアップに取り組んでいる。また戦略的に採用を進めるため、事業拡大のなかで必要とされる人材を外部から中途採用するということも継続して行われている。生産性や高付加価値を推進するため、ITリテラシーを醸成する社員教育に加え、適材適所に外部からの人材を採用していく体制の構築により、それぞれが活躍できる職場環境を整備している。今後もこの取り組みを継続し全体の人材基盤を強化し、同社における人材投資と社員の自己投資によるシナジー効果により一層の生産性向上を目指す。

(4) 独自のポジショニング確保による競争力強化
同社は事業領域で独自のポジションを築いている。「ビッグデータを持つこと×ビッグデータを活用できる」をコンセプトとしてサービスの差別化をしてきた。ドラッグストアのID-POSデータは国内トップシェアを誇る。大量のデータを高速でクレンジングする技術を用いて、処理されたデータを迅速に活用できるという強みがある。データを活用するノウハウは外部のテクノロジー企業と提携をすることにより、最新テクノロジーが使える状態にしている。また、同社は経営陣からエンジニア、営業まで会社全体でクライアントとの連携を緊密に取っており、クライアントのニーズを吸い上げてサービスに活かす仕組みができている。これらの要素が相まって、付加価値の高いサービスを提供することと、高い顧客満足度を実現している。

(5) 海外展開
ビッグデータの高度な活用は海外マーケットの顧客価値を生み出すフェーズに入っており、同社のサービス拡大の機会は日本だけにはとどまらない。今後は国内で実施してきたデータ精製、データ分析、可視化、レポーティングのサブスクリプションサービスを海外でも展開する方針だ。2022年1月にベトナムのFPTソフトウエアと業務提携を行い、FPTグループのTRANDATAへと出資をしている。この資本・業務提携により、FPTソフトウエアのAIやITのノウハウを活用し、ベトナム国内の小売業購買ビッグデータを活用したプラットフォームを構築し、消費財・流通業界、金融市場に対してより良いデータソリューションを提供する。ベトナム国内の購買データを活用したマーケティング領域を皮切りに、アジアをターゲットに、消費者購買データを活用したマーケティング支援事業の拡充を図る。同社のビジネスモデルは、リソースの最適化が容易であり、クロスボーダー展開が可能である。海外展開に新しい生産設備の投入などの大きな資金を必要としないのも同社の強みだ。継続して事業拡大を検討していく方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)

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