新晃工業 Research Memo(10):原材料費高騰や納期遅延などにより第2四半期は苦戦
1. 2023年3月期第2四半期の業績
新晃工業<6458>の2023年3月期第2四半期の業績は、売上高17,910百万円(前年同期比1.9%増)、営業利益1,459百万円(同20.2%減)、経常利益1,827百万円(同9.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,270百万円(同11.1%減)となった。日本経済は、ウクライナ情勢及び急速な円安の進行により資源・エネルギー価格が高止まりとなったものの、コロナ禍の行動制限が緩和されたことにより経済活動は正常化に向けて動き出した。公共投資は底堅さが増し、民間設備投資は製造業で堅調に回復、景気は緩やかに持ち直していると言えるだろう。空調機業界では、産業空調への投資を中心に需要が回復し、空調機の全国出荷台数は前年同期に比べ約12%増加した。しかし、原材料価格の上昇や部材調達難を背景に、納期や工期の遅延、価格競争の発生など厳しい事業環境でもあった。こうした環境下、同社は販売価格の改定や納期管理の強化などを最重要課題として対策を強化した。
業界全般の価格改定ムードや空調機出荷台数の好調に後押しされたこともあり、同社は原材料高を販売価格に転嫁する方針を期初に打ち出した。多くの取引先に受け入れてもらえたが、基本的に価格改定は新規引き合いからとなるうえ、売上計上されるまで9ヶ月前後のリードタイムが生じるため、上期は業績にほとんど反映されなかったもようである。なお、一部で価格競争が激化したものの、業界が繁忙期に入ったため影響は小さかったようだ。納期管理に関しては、代替部品メーカーの開拓や川上川下ともに取引先との交渉を強化したほか、SIMAプロジェクトとは逆行するが、一時的に遅延品を省いてセットアップするなどの対応も行った。一方で、中期経営計画「move.2025」に基づき、5つの重点ターゲットに対する製品販売戦略の実行、SIMAプロジェクトによる業務のデジタル化推進、需要が活発な空調工事分野における収益力向上、中国事業における利益率の改善なども着実に進めた。特に2023年3月期の注力分野としたデータセンターでは、国内勢の建設増加に対応したディベロッパーへの営業強化が奏功しているようである。
このように、売上面については、中国事業はゼロコロナ政策で減収となったが、国内需要が強かったため機器販売は減らず工事も伸長し、1.9%の増収を確保することができた。利益面では、原材料高や円安によって原価が圧迫されたことで売上総利益率が3.4ポイント低下、販管費の抑制に努めたもののカバーできず、営業利益は20.2%の減益となった。なお、原材料価格の高騰や価格転嫁の遅れ、部材調達難などによる納期ずれが期初想定を超えて発生する可能性が高まったため、第2四半期決算を前に保守的に第2四半期の売上高を18,000百万円から17,400百万円、営業利益を1,850百万円から1,200百万円へと引き下げた。しかし結果的に、売上高は17,910百万円となり期初予想付近で着地し、営業利益も1,459百万円へと下方修正幅を縮めて着地した。これは、原材料高や円安の進行が急となったことで取引先の工事の進捗が見えにくくなっていたことが背景にあり、後述するように、最終的に購買強化などで対応できたため、納期遅れが想定ほどに発生しなかったという特殊な事情が要因である。
セグメント業績では、日本セグメントが、部材調達難による納期延期が例年以上に見込まれるなか、購買強化と納期調整に注力したことで売上高は16,057百万円(前年同期比6.8%増)と増収を確保し、セグメント利益は原材料高の影響を受け、1,490百万円(同22.8%減)となった。アジアセグメントは、中国で不動産市場に依然リスクを抱えるものの固定資産投資の伸びが横ばい圏となって景気に持ち直しの動きが見られたが、ゼロコロナ政策によるロックダウンなどの影響により、売上高は1,873百万円(同26.4%減)となった。利益面では、減収に伴う目減りの一方、売掛金回収を進めたことで貸倒引当金の戻入益を計上したことから、セグメント損失は56百万円(前年同期はセグメント損失124百万円)と損失を縮小することができた。中国でロックダウンなどにより2ヶ月間工場が止まったことを考慮すれば、健闘した数値と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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