DEAR・L Research Memo(1):東京都心の住宅系不動産市場の活況を背景に売却が進み、過去最高益を更新
ディア・ライフ<3245>は、都市型レジデンスの開発事業・収益不動産への投資事業などのリアルエステート事業と、保険、金融、不動産業界への人材派遣を行う、セールスプロモーション事業を展開する企業グループである。2004年の会社設立以来、東京圏に特化した、主に単身者・DINKS向けマンションの開発(リアルエステート事業)を主軸として急成長を遂げた。代表取締役社長の阿部幸広(あべゆきひろ)氏をはじめとした専門性の高い人材の不動産目利き力が強みである。2007年8月、会社設立から3年弱で東証マザーズに上場。2015年8月には東証1部に昇格、その後も著しい成長を見せている。2021年には、金融・保険業界のコールセンター向け人材派遣事業を展開する(株)N-STAFFを傘下に持つ(株)DLXホールディングス(以下、DLX-HD)及び総合不動産会社のアイディ(株)、(株)アイディプロパティ(以下、アイディグループ)を子会社化した。2022年4月の東証再編においては、プライム市場に移行した。
1. 市場動向と同社の強み
世界の大都市のなかで東京の不動産価格はまだ割安である(割高ではない)と言われている。加えて昨今の円安傾向がさらに“TOKYO”の割安感を高めている。
このような環境下で、需要の堅調な東京圏、特に神楽坂・飯田橋・市ヶ谷をはじめとする「職・食・住」の利便性が良好なエリア(新宿区、千代田区など)に事業エリアを特化することで、販売面だけでなく、用地取得や建築発注においても優位性を確立している。情報の非対称性が依然大きい不動産業界では、有益な用地・物件情報であればあるほど、フェイス・トゥ・フェイスの商談が重要になってくる。同社はエリアを限定することにより、より効率的で密度の濃い仲介業者などとの業界人脈を構築できており、その情報取得力は高い。またエリアを限定することで継続的に工事発注できることから、ゼネコンなど建築業者とも良好な関係性を構築できており、品質の高い建築請負工事を実現している。また、社内に一級建築士をはじめ専門性の高い人材を抱えていることも大きなアドバンテージとなっている。用地取得に関しては、素早く情報をキャッチすると同時にその開発ポテンシャルを素早く的確に算定し、競争力ある価格提示を迅速に行える能力が不可欠である。また建築技術等に詳しい人材がいればコスト抑制策での創意工夫が進みやすく、ゼネコンなどとの折衝力が高まる。
2. 業績動向
2022年9月期通期の業績は、売上高が前期比96.9%増の51,905百万円、営業利益が同42.8%増の5,736百万円、経常利益が同37.7%増の5,666百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同56.3%増の4,199百万円となり、各利益において過去最高益を達成した。不動産の売却件数が大幅に増加したことに加え、物件の大型化も進んだ。子会社化したアイディグループも業績に貢献した。セールスプロモーション事業では、子会社化したDLX-HDが保険業界顧客企業のニーズを捉え、派遣先が多様化・拡大した。
2023年9月期通期の業績目標は、経常利益で6,000百万円(前期比5.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で4,100百万円(同2.4%減)としており、過去最高益を達成した前期並みの利益を予想する。リアルエステート事業では、住居系不動産を中心に東京圏への積極投資を継続する。セールスプロモーション事業においては、従来通りの成長戦略に加えて、DLX-HD傘下各社の管理部門の共通化によるコスト削減や相互人材の活用など、グループ企業としてシナジーを最大限に発揮し収益の最大化を推進する方針だ。2022年9月期の先行投資の成果も出始めるため、セグメント利益ベースでも黒字化が期待できる。
3. 成長戦略
2023年9月期を初年度、2025年9月期を最終年度とする新中期経営計画「突破2025」では、経常利益目標を100億円としている。これは、2022年9月期実績の1.76倍となる高い水準である。またROE18%以上、ROA15%水準を維持し、効率性・収益性を維持することも重視している。基本方針では、改めて同社のコアコンピタンスとして「スピード」「人材活用」「開発力」が定義された。これらの強みを生かして、ステークホルダーの多種多様なニーズに応えられる商品やサービスを開発・提供し、同社グループのブランド確立と価値向上を図る。主力のリアルエステート事業では、1) 都市型レジデンスの事業量及び事業規模の拡大、2) ニーズに沿った商品・サービスの開発・提供、をテーマとしている。東京圏を中心とした住居系不動産への特化はそのままに、強固な財務基盤をテコに1件当たりの事業規模や開発量を拡大させる考えだ。将来的にはファンド組成を視野に入れているため、収益不動産への投資も拡大する。
4. 株主還元策
同社は株主還元策として配当を実施している。配当の基本方針としては、財務体質強化と内部留保の確保を図る一方、株主への利益還元を重要な経営課題としているため、配当性向40%を目指している。また、自己株式の取得に関しても、株価の推移や財務状況などを勘案し、機動的に行う方針である。2022年9月期は、過去最高益を反映し、配当金は年44円(前期比14円増配、過去最高益記念配当2円を含む)、配当性向は42.4%となった。負ののれん発生益という特別利益の発生も影響し、当初の予想よりも大幅に増加した。2023年9月期は堅調な利益計画(親会社株主に帰属する当期純利益41億円目標)を背景に、配当性向40%、配当金年38円を目標とする。
■Key Points
・2022年9月期は東京都心の住宅系不動産市場の活況を背景に売却が進み、過去最高益を更新。子会社化したアイディグループ等も業績に貢献
・2023年9月期通期は経常利益6,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益4,100百万円を目標に掲げる。セールスプロモーション事業の黒字化にも期待
・経常利益100億円を目指す新中期経営計画「突破2025」がスタート
・2023年9月期は配当金年38円、配当性向40%が目標
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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