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STIフードHD Research Memo(8):新商品投入と価格改定の定着によって下期は業績回復へ


■業績動向

3. 2022年12月期の業績見通し
STIフードホールディングス<2932>は2022年12月期の業績を、売上高28,000百万円(前期比6.6%増)、営業利益1,500百万円(同13.0%減)、経常利益1,500百万円(同14.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益950百万円(同14.5%減)と見込んでいる。外出増加による中食への負のインパクトや円安・原価高の継続などを一定程度考慮しているため、前述したように保守的な前提となっているといえよう。なお、2022年12月期の期首より収益認識に関する会計基準等を適用しているため、前期比増減は参考数値として記載している。

保守的とはいえ、下期へ向けて、新型コロナ感染症の収束時期を依然見通せないこと、原材料価格の高騰が続いていること、円安修正への道筋が見えないことなど、日本経済は引き続き不透明な状況が続くと予測されている。同社にとっても、中食を押し上げる行楽需要に不透明感が残るうえ、円安・原価高への対策や海外研修生の確保といった課題の解消が不可欠となっている。しかし2022年12月期下期には、チルド惣菜に対する引き合いが引き続き強いこと、行動規制の緩和やワクチン接種の広がりにより外出需要の拡大が期待できること、生産体制の整備が進んでいること、新商品の投入と円安・原価高対策の価格改定が本格化することから、業績の回復を見込んでいる。そのなかで、本格化する新商品の投入と価格改定の浸透が大きなポイントとなりそうだ。

上期に、定番商品の価格改定はできたものの、円安・原価高に対応した新商品の投入が遅れた理由は、新商品の開発には相当の時間がかかるうえ、円安や原材料費高騰を織り込んで原価設定しても、それ以上の動きになると原価設定が間に合わなくなるからである。このため、たことブロッコリーバジルサラダや焼魚3品(鯖、銀鮭、ほっけ)など、一定の売上が期待できる定番商品のリニューアルを優先した。しかし定番商品も3%~11%の価格引き上げになっており、そうした価格改定を消費者に受け入れてもらうためには、価格改定に見合った品質の向上が必要であり、定番商品のリニューアルでも一定の時間が必要となる。しかも消費者に受け入れてもらうまでにタイムラグが生じる。

しかしながら下期は、上期から開発してきた新商品10品目程度を順次投入する計画である。定番商品と違って原価設定さえできれば値上げ効果もフルに働く。問題は売れるかどうかだが、7月に投入した「いかときゅうりの葱塩サラダ」は好スタートを切った模様である。また、「さばの塩焼」や「たことブロッコリ—バジルサラダ」など定番商品も、8月のTVCMや番組内紹介をきっかけに数量を伸ばしているようだ。なかでも「さばの塩焼き」は、セブン-イレブンが例年秋シーズンに向けて投入するTVCMのメイン商材として露出を高めており、下期は水産系惣菜の販売に弾みがつきそうだ。当初の想定より事業環境は厳しいが、上期の業績が保守的な計画に救われたのに対し、下期は新商品の市場投入や価格改定の効果など諸施策によって復調が見込まれる。特に価格改定の受け入れ次第では、業績が上振れる可能性もあると思われる。


2023年12月期以降は2ケタ成長回帰を目指す
4. 成長イメージ
2022年12月期は収益力を取り戻す期となる予定で、円安・原価高への対応も進展し、再成長へ向けた体制作りも整いつつある。2022年12月期を乗り越え、新製品の投入を継続しつつ、技術力や一貫生産といった強みを深掘りし進化させることで、2023年12月期以降、10%以上の成長に回帰することも可能になると弊社は考えている。その根拠として、魚の調理離れや健康志向などを背景に世界的にも魚食ニーズが拡大していることに対し、足もとで新工場投資や能力増強投資が進んでおり、中期的に国内の生産能力を2021年12月期の1.5倍60万食以上に引き上げる計画がある。また、北米への進出は前倒しの予定で、アジアでは台湾セブン-イレブンに出荷するなど、海外進出も加速し始めた。さらに、カルディなど良品を理解するセブン-イレブン以外の小売との連携を強める方針である。また、自社やアマゾンなどECサイトでは、調理に手間の掛かる魚料理を、電子レンジや湯せんで簡単に食べられる商品を、魚好きな人に向けて販売することも始めている。国内セブン-イレブンとの取引拡大に加えて、海外セブン-イレブンの成長を取り込み、新規販売チャネルを開拓することで、同社は2ケタ成長トレンドに回帰するだけでなく、中長期的にさらに成長力を高めていくことも想定される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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